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感想・レビュー・書評
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そないに嫌いちゃうで。
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両親とは、もっと年齢を重ねるこの先、どうやってお互いに関わっていきたいかは、予め話し合っておきたいなと。
介護、被介護の関係になった時、遠慮なく、変に強気にならず「対等に」「ストレスなく」付き合い続けられるにはどうしたらいいのか。今の時点では、正直何も思い浮かばない。
祖父、母、本人の3人で暮らす家。
祖父への、母と本人からの(心の中と声に出しての)歯に衣着せぬ物言いにドキッとする。私も同じ状況ならそう思ってしまうかもしれず、なんだか怖いと感じた。「ありがとうすんません」繰り返す、祖父の言葉が心に刺さる。 -
「手をさしのべず根気強く見守る介護は、手をさしのべる介護よりよほど消耗する。」
介護や政治に対する見方が面白い。 -
超長寿社会に入った日本において、長生きするとはどういうことなのだろうかという疑問とこれから長い人生を送る若者の持つ諦念のようなものを感じた。表題のごとくスクラップ・アンド・ビルトのように日本において老人と若者へのバトンタッチはうまくいくのだろうか。芥川賞の割には面白く読めた。
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うーん、芥川賞ということで読んでみたが、普段文学を読まないので分からない。
祖父は死を望むだけはなく、たまに生への執着を見せる。
その機微を感じ取る建斗の戸惑いを通して人間のエゴについて考えさせられる作品かなぁ。 -
【ストイックな戦い。】
この本では、おじいちゃんと孫。
現実的には、親と子で一般的に繰り広げられる戦いなのではないでしょうか。
ケント目線の想像が、自分の中でも簡単に再現できる錯覚が起きます。電車の席のくだりとか、特に。
自分の経験からすると、本人がいくら否定しようと「死にたい」と発せられる言葉は「生きたい」にそっくり置き換わります。死にたい人は、そんなこと言うまでもなく死を行動に移します。 -
筆者のイメージ通り
読みながら羽田さんの顔がすごく浮かぶ
過剰介護は本人の為ならずということ、わかっていたけど再認識。
今後他人事じゃなくなるんだろうなと思うと
苦しい気持ちになる -
うちにも90になる祖母がいますが、介護は一切親任せ。
自分らのときはどうなんのかな。 -
「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…。閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!第153回芥川賞受賞作。
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じいちゃんと健斗、お母さん、亜美、大輔と登場人物は少なく、静かにストーリーが展開される。結局じいちゃんの気持ちはどうだったのか、健斗が就職した後どうなったのか想像できなかった。
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おじいちゃんの為に、厳しいようでも自立を促すのか、甘やかして結局老化が進んだ方が良いのか、がストーリーの中心。
物事って見方を変えると、違って見える。どちらが良いのか、考えてみて。という風な作品。
文藝春秋の選者評を読んだら、結構多作な作者らしく、何かテーマを見つけたら、上手にに肉盛りして、一編仕立ててしまうのではと感じた。
父が、数年前に癌で入院した時のことを思い出した。 -
芥川賞受賞作が掲載された文藝春秋が両親のところになったので手に取った。二作のうち、私はこちらの方が読みやすかったし素直に楽しめた。着眼点はとてもいいし、祖父の心情に関する健斗の思い込みに、ときどきちらっと、疑問をなげかけるエピソードが挿入されてくる塩梅もうまいのに、それがつみあがって結末にいたるのではなく、なんとなく消化不良のまま唐突におわってしまった印象なのが残念な気がする。あんなに狂信的にビルドしてきた筋肉や精神力が「三流大学出身では決して就職できないような企業」に中途採用されるために役立った、そこでの新しい生活への不安にたちむかうのにも役立つだろう、、、でおわっちゃうんかい。いいのか、それで。
健斗にとっては「15分もたえられない」無為な状況を日々延々繰り返しているだけのはずの祖父が、なぜ、生きることへの執着を捨てられないのか、そのあたりにしっかり斬り込んでいたら、もっとちがった結末がみえてきたんじゃないのかな。難しいところだけど。
私も猫とごろごろしながら小説や漫画読むばかりじゃなくて、語学学習も日々のストレッチもさぼらずにやらないとな、とは思いました。 -
じいちゃん思いが伝わる
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この若者、なかなかやるじゃん…というのが読後すぐの感想。「この若者」はもちろん主人公。
我が家も姑亡き後7年、いまだ元気に暮らす舅。そして私にも同居する独身の息子が一人。シチュエーションは似通っているのに、これまで考えたこともなかった現代の介護サービスへの鋭い視点が新鮮だったし、自身を極限まで鍛えることに納得できる意味をつけ、結果を出すことのすごさ…
こんな主人公あまりお目にかかったことない気がする。 -
サラリ ーマンをやめて転職活動中の29才の健斗と 、三年前から同居している87才の祖父との関係を 、介護を軸に描いた芥川賞受賞作。
結論から言うと非常に面白い小説。
まず、キャラクター設定が良い。
健斗は、司法書士の資格のため猛勉強し、精子の生産機能向上のためオナニーを欠かさず、身体を鍛え続けるフリーター。祖父は、365日のうち330日以上、「死にたい」と漏らし、娘と孫に対して卑屈な態度を取り続ける元特攻隊員。母は、父の老化防止のため、服のたたみや食器の片付けとか簡単な作業を口煩く命令する。
ある日、健斗はヘルパーの過剰な介護を見て、彼らのしていることは「要介護三を五にするための介護」と考える。そして、死への願望を持つ祖父に対して、過剰な介護を行う方が祖父のためと思うようになる。
「本当の孝行孫たる自分は今後 、祖父が社会復帰するための訓練機会を 、しらみ潰しに奪ってゆかなければならない」と真面目に考える。
介護という重く、身近なテーマを、キャラの立った人物を配し、娯楽度の高い小説に仕立て上げた筆者の手腕は凄いと思う。また、祖父の異常な行動を時々見せ、本書にミステリーの味を持たせたのも憎い。
まぁ、お勧めの★4つ -
第153回芥川龍之介賞受賞作、羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」を読みました。
受賞の又吉さんの「火花」を注目されていますが、こちらはずいぶんと趣が違いますね。
> 本気で死にたがっている被介護者を見極め、車いすに乗せ、漫然と一律提供している食事から
> ありとあらゆるたんぱく質を排除し歩行能力を完全に奪い、第二の心臓とされる脚の筋肉を弱
> める徹底ぶりが感じられない。Read more at location 6727
> それに一〇代後半で気づければ良かった。悟りを開いた健斗は現在無職だが死にたいと思うような
> ときなど一瞬もおとずれず、生を謳歌したい気持ちでいっぱいだ。Read more at location 6830
非常に黒いですが、主人公は少し天然ボケ気味で笑いを誘います。
初期認知症の祖父を主人公とする作品ということで、重いテーマを背負ってしまいそうな
作品ですが、小気味よいブラックユーモアで楽しく読むことでできました。
祖父の未来と健斗の思いがどこかで交差することを期待しながら読みましたが、
そちらは読み手に委ねられたと考えるべきでしょうか。大変おもしろく読みました。 -
老人介護と安楽死(尊厳死)という身近なテーマを題材に、まさに"スクラップ・アンド・ビルド"な分解と構築を繰り返したような独特の文体で綴る、実に文学的な作品だった。
単語と単語、文章と文章が不協和音を奏でながら構築される感覚。決して読みやすい文章ではないけれど、その不協和音が楽しい一冊。
文章が「ただ情景を描写するもの」として使われるのではなく、文章そのもので遊んでいる感じが芥川賞的で面白かった。 -
現代の世の中の縮図なのでしょうか。
違和感しか残らない。
身勝手な20代男子と弱っていく祖父のお話。まぁ、それ以外に出てくる人たち皆が身勝手なんですけどね。
共生とか助けあいとかそんな言葉はなくなってしまうのでしょうか、、、
物語の終わりは、え?なんでここ?というところでした。 -
“もう一つの芥川賞。” 介護を受け生きながらえる祖父と、再起に向けて鍛錬する主人公の意外な共通点。 生に対する執着心。 短くも残る作品だった。
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80代の祖父の心の動きがとてもリアル。亡き父の最晩年の状況を彷彿とさせた。高齢者を描いた小説は少なくないけれど、本作のリアルさは群を抜いているのではないかと思う。
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羽田圭介の面白さに惹かれて。
暗くなりがちなテーマがどことなくポップにまとめられているのは、彼の天性の明るさ故か?
しっかりした文体、構成で安心して読める。 -
第153回(2015年7月)芥川賞、ピース又吉「じゃない方」の受賞作品。
「介護」と「尊厳死」についてテーマに、祖父と孫の関係をユーモラスでコミカルに描いている。「死にたい」と言いながら生に執着している祖父と、その祖父を自宅で介護しながら苦しまずに死ねるよう過剰介護をして身体機能低下を狙う孫。肉体表現の比較をはじめ、様々な対比が物語に強い印象を与えている。
筋トレにストイックな主人公は、著者・羽田さんのキャラに通じるところがありそう。