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- / ISBN・EAN: 4910077010955
感想・レビュー・書評
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芥川賞受賞作が掲載されているので借りて読んだ。「火花」は途中で読むのをやめようかと思うくらい、私が苦手なタイプの私小説(「僕」のモデルは作者本人ではないそうですが)ではあったが、好き嫌いはおいといてちゃんと最後まで読んだら後半けっこうおもしろかった。特に解散ライブのネタ。
芸人さんの世界の話で、漫才についての芸論はたくさんでてくるんだけれど、肝心の漫才そのものの中身は、ネタあわせとか状況としては描かれても、どんなやりとりで笑いをとるのかごく断片的に散見するばかりで、終盤の解散ライブの描写になるまで「僕」の漫才のスタイルはほとんど見えない。冒頭ですべってる短い描写のあと、延々と観念的に語られるばかりで、なぜ先輩の神谷さんが「おもろい」というのか、どういうところが「お前の好きなようにやったらもっといい」といわせる所以なのかが、「僕」の普段の言動からはよくわからなかった。
解散ライブの一部始終でやっと、あぁこういうことを目指してたんだ、というのがわかるのだけれど、そこに至るまでの出発点と過程のところが一人称の観念的な悩みとしてしか描かれないので、なぜこんなに陰鬱なひとが漫才師になりたいと、ここまで切実に思うんだろうというのがなんともしっくりこない。だから破天荒な師匠と我が身を比べての焦燥感とか、この小説の大事なところ(そして選考で評価されていたところでもある)が、うわすべりしているように私は感じた。あと、相方との関係性も、前半の描写では、相手にいらついているところやうまくかみあわない描写はあっても、そもそもなんでこの人とコンビ組んでいるのかほとんど描かれていないので、後半「信じてついてきてくれてありがとう」的な感動シーンがでてきても浮いちゃってる気がした。
そういえば、帰国時にちらりとみたテレビ番組で、女優さんが作者本人の前で本のタイトルを「花火」とまちがえてつっこまれていたが、花火にはじまり花火におわるので、それはあながちまちがいというよりはちゃんと読んでいる証拠ではないかとも思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芥川賞2作。あまり面白くなかった。
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単行本より,今ある雑誌の方が直ぐ読める。カワセミの表紙の文藝春秋9月号で,よく売れる~長崎から埼玉を経由して東京南西部に来た祖父の口癖は,死にたい・死んだ方がいい・早くお迎えが来て欲しいだが,母は冷淡だ。87歳の祖父が早く死んだ方が,子孫のためになるのは間違いがない。カーディーラーを7ヶ月前に退職した健斗は,筋力を弱めて寝たきりになって,薬漬け病院に入院して死期を早めるのが良いと思って,要求された用を足した方が良い。中高とスキー部の冬以外の訓練を思い出して走ったり,彼女との3度目の性交ができるように鍛え,痛みに耐えながら筋肉を鍛え,行政書士の受験勉強をし,三流大学でも中途採用してくれる会社の面接を受ける~「火花」の方が,直木賞っぽいって思うんだけど,これが直木賞かと思ったら,両方とも芥川龍之介賞でした。第153回です。介護小説ですって!
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86 『火花』又吉直樹のみ