教団X (集英社文芸単行本) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 複数のトピックが入り混じった混沌としたストーリーでありながらも、終盤に向けて本筋に全て巻き付いていくのがおもしろい。
    巻き付いていくサブトピックも決して類似したものではなく、宇宙・宗教・性・飢餓など独立したように思われるもので、それらをまとめ上げているところが特におもしろいと感じた。
    教団の統制の取り方は、直前に読んだジョージ・オーウェルの「1984年」と対比できるところもあってなおさら深く興味深く読むことができた。(本質的にリンクするものではないけれど)

    1つ残念なのが性描写。他の描写に比べて極端に俗っぽいというか男性主観過ぎると感じた。この俗っぽさに限れば文学的意味を見出すことができなかった。

  • 圧巻のページ数にしては読みやすい印象を受ける。淡々とした文章の中に突如として現れる暴力描写が教団Xの狂気的な世界観を表現していて脳内再生待った無しなわけで、そこに中毒性を感じます。読書好きでオカルト好きには堪んない一冊でした。

  • 立花が高原を諭す場面で一瞬白けた。
    「教祖」の言葉と、幹部とはいえ「信者」の言葉は重みが違う。
    教祖になろうと思っていたわけではないにしろ、松尾や沢渡の、人を惹き付ける力や言葉が本当に強力なものなんだと思います。
    面白いけど人にはすすめづらい描写が多いです。

  • ノッてくるまでけっこう苦しくて、何度か中断しながら、第二部からラストまでの300ページくらいは一気に読んだ、ものすごい熱量で展開していくストーリーに、振り落とされそうになりながら。

    闇と光の物語だと、あとがきに著者は書いていた。
    1984の世界が頭をよぎり、なぜ、平和で戦争が無く、貧困も飢餓もなく、差別もない世界は実現不可能なのか、そう思うのかを改めて考えた。
    なぜ、光の方へ向くことが困難なのかと。

    本を読む行為は、自分の内面を常に揺さぶり、考えさせる。
    「硬化した人々」にならない為に、私は本を読むのかもしれないと思った。

    女性性の扱いについては、嫌悪感も無くは無かった。ああ書かざるを得ない、という諦め?では無いけど、何かステレオタイプな気がして、そこだけ気になり星4つです。

  • 色々な目線で物語が進んでいくというのに、飽きていましたが、今回は面白かったです。
    よっちゃんの言った世界を肯定する。この言葉が好きでした。世界を肯定するってワールドイズマインでも言っていた気がする。それぞれの肯定の仕方があるけど、僕はまず半径の人たちの事を肯定したい。5年後くらいにもう一度読み直したい。

  • 様々な本を読み慣れた方向けだと感じます。
    一言で表すと「思想家の物語」
    人の原罪について考えさせられ、重厚で先が読めず非常に面白い。
    人の思考って興味深いなぁ、と。そして孤独と恐怖は人を狂わせるのだなぁ、と。

  • 【短評】
    「宗教」の本質に迫ろうとした作品。神や世界の在り方を解体し、よくよく噛み砕いて物語に落とし込んでいる。作中に登場する二つの対象的な「宗教」の教義は、非常に読み応えがあり、一気に読み進めてしまった。今、深夜1時半。
    科学と悟りの親和性を分かりやすく解いた松尾のお話が良かった。作者の熱量が伝わった気がする。他方、異なる二つの主張(教え?)を併存させる構成上どうしても手放しで称賛し難い部分がある。加えて、エンタメ的な物語としては少々粗が目立つ。この二点において、評価は星4とした。

    【気に入ったところ】
    ●「名もなき宗教」における松尾の教えが非常に分かりやすく、興味深かった。宗教をテーマにした物語はいくつか読んできたが、中でも本作は特によく咀嚼されていてスーッと落ちてくる感覚があった。これは、作者の伝える努力の賜物だと思う。
    ●沢渡という超越者の人物造形が素敵。卑近な表現をすれば悪のカリスマ的な。数多の信者は彼の前に跪く様にも納得の行くものがあった
    ●終盤の混沌とした展開は手に汗握るものがあった。底の知れない沢渡という人物。暗躍する謎の男達。暴発の危険性を孕んだ信者。物語はどこへ転がっていくのか、本を捲る手が止まらない。

    【気になったところ】
    ●「教団X」が人を惹き付ける理由がイマイチ腑に落ちない。沢渡という逸脱者のカリスマに帰結してしまった印象。性愛と悟りを結びつける宗教は、現実世界にもあれこれとある訳だが、本作を読んでもその真意に辿り着けなかった。辿り着くことを期待したのに。松尾の主張が明瞭だったがゆえに、こちらもストンと落としてほしかった
    ●上にも関連するが、エロシーン(と言って良いのか)がやや滑稽に映ってしまう。私の理解力が不足しているのだろうが、淫祠邪教的な印象が先行してしまった
    ●松尾・沢渡を除く主要人物の存在意義が希薄。特に主人公(っぽく見える)・楢崎は何がしたかったのかよく分からない。終始物語の辺縁に居た気がする。松尾や沢渡の教えが、主要人物の中に生かされていないように思えてならない。超越者とはそんなものだと言われれば、それまでだが
    ●松尾の最後の教えに「国粋主義に走る我国への憂慮」みたいな主張を混ぜるべきではなかった気がする。上手く言えないが、ちょっと俗っぽく感じた

    気になったところ、が多い気もするが、本質はそこではない。感想がついつい長くなる。多くを語りたくなる一冊であることに価値がある。

  • 途中まで読んで一回挫折。宗教モノ読みたいなと思って最挑戦。

    苦手な感じが続いて目が滑る滑る。でもこれは確かに傑作。
    思想でぶん殴られ続けるのを耐えたから後半のめり込めたんだと思うけど、もうちょっと読みやすくしてくれればお勧めしやすいのに。
    映像化...は無理かぁ

  • R帝国と内容的には同じだった。
    こちらから読めば良かったかな。

  • 宗教とセックスと政治とが絡み合った話。とても分厚いけど、思ったほど長くて辛いとは思わなかった。まず二つの新興宗教が出てくる。一つは自分たちを宗教ではないと言い、教祖の哲学的な話を聞くだけの集団。もう一つは完全なカルト集団。後半でもう一つ原始的な宗教も登場するのだけれど、宗教のあり方というか、宗教って何という問いかけがある。信仰が誰かの利益や、政治的に利用されてしまうことで新興宗教のいかがわしさも描かれている。オウム真理教がモデルになっている部分もあるかもしれないが、この小説ではオウム真理教の事件が起こった後の設定になっている。私は面白いと思ったけど、長いし、宗教論やセックスの場面など好みのわかれる小説だと思う。(私は、苦手なところは斜めに読み飛ばしてしまった。)

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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