異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 [Kindle]

  • 英治出版
4.26
  • (57)
  • (33)
  • (18)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 561
感想 : 50
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (329ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 異文化マネジメントの専門家が、国毎のビジネス敢行の違いを8つの指標を用いて分かりやすく解説した書。海外駐在者や国際ビジネス担当者に必須であるのはもちろんのこと、ドメスティックな仕事人にも、日本人のクセや常識を見つめ直すきっかけを与えてくれる良書。

    8つの指標は、
    ①コミュニケーション…ローコンテクスト vsハイコンテクスト
    ②評価…直接的なネガティブ・フィードバック vs間接的なネガティブ・フィードバック
    ③説得…原理優先 vs応用優先
    ④リード…平等主義 vs階層主義
    ⑤決断…合意志向 vsトップダウン式
    ⑥信頼…タスクベース vs関係ベース
    ⑦見解の相違…対立型 vs対立回避型
    ⑧スケジューリング…直線的な時間 vs柔軟な時間

    本書でなんといっても興味深いのは、それぞれの国の過去の歴史が現代の人々の行動に色濃く影響を残している点。例えば、

    ロシア人に「行間に意味を込め行間に耳を傾けると同時にネガティブ・フィードバックはキッパリと直接的に行う」傾向があるのは、「共産主義下では、よそ者は敵でした。誰を信頼できるか、誰から当局に突き出されるか、誰に裏切られるかわからなかったのです。だから私たちはよそ者には強い調子を保って距離を置きました」という歴史的背景がある。

    ローマ人は広大な帝国を支配するため強力な中央集権体制を敷いたため、「ローマ帝国の影響下にあった国々(スペイン、イタリア、そして、度合いは低いもののフランス)は残りの西欧諸国に比べて階層主義的な傾向にある」

    世界で最も初期に民主主義社会を築いた「ヴァイキングに大きく影響を受けている国々は、現在でも常に世界で最も平等主義的で合意志向を持つ文化のひとつに数えられる」

    「おそらく孔子の遺産によるものだが、中国から韓国や日本を含め東アジアの社会では、リーダーシップに対して家父長的な見方を持っていて、それが西洋人たちを困惑させている」

    アメリカ人が即断即決を好む(そして軌道修正を厭わない)のは、西部開拓時代の人々にとって成功は、「誰よりも早く着いて懸命に働くことが何より重要で、その上で大切なスピードを追求する過程でのある程度の失敗はやむを得ないと考えられるかどうかにかかっていた」ため。

    実に面白い!

  • 時間を守るかルーズか、空気を読むか読まないか、平等主義か階層主義かなど、グローバル時代に様々な文化的背景を持つ人々と協働する際、普段は気づかない文化的差異を適切に把握し、対処するための要諦をまとめた一冊。

    著者は、ビジネスにおいて特に文化的差異の影響を受けやすい8つの要素、すなわち①コミュニケーション(文脈重視or言語中心)、②ネガティブな評価(直接的or間接的)、③主張や説得(根拠や原理を先に示すor結論や応用を重視)、④リーダーシップ(平等主義or階層主義)、⑤意思決定(トップダウンor合意志向)、⑥信頼関係(タスクベースor人間関係ベース)、⑦見解の相違への対処(対立関係を許容or回避)、⑧時間の感覚(規律的or柔軟)を整理し、それぞれのディメンジョンに主要国をプロットしたものを「カルチャーマップ」と名付け、マップ上のギャップによってグローバルチームが陥りやすいトラブルを実例に基づいて解説する。

    複数の要素に跨って各国の傾向をみえる化することで、例えば米国人はローコンテクストだがネガティブフィードバックは間接的に行う傾向があるとか、中国人と日本人は共に階層的だが、意思決定に関しては中国がトップダウンであるのに対し日本はボトムアップ型であるというように、単一の観点からしか見ない場合に起こりがちな誤解を回避できる。また、同じ傾向を持つ国同士でもその位置関係によって相手を見る目が変わる。例えばドイツ人はフランス人は時間にルーズだと感じる一方、ケニア人はフランス人は時間に厳しすぎると感じるかもしれない。このように自身の文化的特徴を自覚し、かつ相対的に評価することは、単一文化で暮らしている限り困難であり、ここで示されたマップの評価の科学的根拠は必ずしも明らかでないものの、著者らの豊富な経験談は、グローバル時代のチームビルディングにおいてリーダーが考慮すべき示唆に溢れている。

  • 思いの外夢中になって読んだ。実用的なだけの本でなく単純に面白かった。

  • いくつか発見があった。
    まず日本人ほど極端な文化をもつ集団はほぼいないという点。海外にいるとよく「○○人ってこうだよね」など分析した気になることがあるが、それがあくまで対日本人比較の相対的評価であり、日本側が極端に振り切れていることは多いのだろう。
    もう1つは、なんだかんだ言ってアジアの文化は馴染みやすいということ。全く別の文化圏に行ってみたいと思った。
    最後に、自分はまったく典型的な日本人ではない点。たぶんもっと生きやすい国があるんだろうと気づけたことは収穫だった。

  • ビジネス上の文化の違いをこれほど分かりやすく示した本は無いでしょう。
    カルチャーマップの概念は日本人内のコミュニケーション、世代間のコミュニケーションであっても使えると思います。

    収穫の多い本でした。

  • 【岸本賢太】
    様々な国や文化によって違う価値観やコミュニケーション方法が具体例と一緒に紹介されています。個人的にアメリカ人が他人と接する時のメタファーとして「桃」が使われていたのが印象的でした。(外は柔らかいので気さくに話せる、でも芯の部分は硬く深いところまでは立ち入らせない)逆はココナッツでした。

  • 文化的背景の違う人々とコミュニケーションを取る際に理解しておくポイントが記載されている。例えば「日本人はハイコンテキスト、アメリカ人はローコンテキスト」など。人種ごとの一般的な解釈が、下記の軸で解説されてる。
     ・コミュニケーション(ハイコンテキスト、ローコンテキスト)
     ・評価(ネガティブフィードバックは直接か間接か)
     ・説得(原理か応用化か)
     ・リード(平等、階層)
     ・決断(合意志向、トップダウン)
     ・信頼(タスクベース、関係ベース)
     ・見解の相違(対立型、対立回避型)
     ・スケジューリング(直線的な時間、柔軟な時間)

    この本は、人種の違いについて書かれているが、同じ人種(例えば日本人だけ)のチームでもその「性格の違い」にフォーカスすれば応用が可能。管理職となる人は一度は読んでみる価値がある。

  • 自分たちの文化では、当たり前だと思っていることは当たり前じゃないことがある。別の見方があることを認識して、オープンに・明文化して議論することが大事であることを改めて学んだ。相手の文化をポジティブな言葉で表すことも意識したい

  • 自分は現状、海外の方と仕事をする機会は無いが、それでも様々な国の文化や考え方の特徴を知ることができて興味深かった。項目別に分析されている点が分かりやすい。
    また、自分が自然に育ってきた日本文化の特徴を客観的に読むことができ、「たしかに」「あー、そういえばそうだな」と改め感じて面白かった。

  • 世界中のクライアントや、取引先や、同僚たちと効果的に働くためには、人間の性質や性格の違いを理解し、文化の違いを読み解く力が必要になっている。

    ビジネスコミュニケーションにおいて、相手からの批判を人格攻撃と受け取らず、世界の未知の文化についてのみならず、自分自身の文化も知る機会としよう、ということを促す良書。

    1. コミュニケーション:ローコンテクスト(明快)vsハイコンテクスト(婉曲)
    2. 評価(ネガティブフィードバック):単刀直入vs間接的
    3. 説得:原理優先vs応用優先、シビル・ロー(大陸法)vsコモン・ロー(判例法)
    4. リーダーシップ:平等主義vs階層主義
    5. 決断:合意志向vsトップダウン式
    6. 信頼:タスクベース(cognitive trust)vs関係ベース(affective trust)
    7. 見解の相違:対立型vs対立回避型
    8. スケジューリング:直線的な時間vs柔軟な時間

    「人間の文化は多岐にわたり、尽きることのない驚きと発見の源となり得る。それは、決して涸れることのない、素晴らしい経験と不断の学習の源泉なのだ。」

    —-memo—-
    2. 衝突を取り除くには、気付きと、オープンなコミュニケーションが役立つ。

    6. 司法制度が安定していない国では、契約書にサインはできるが、支払いが行われなくても、それを強制する手立てはない。相手との関係が、先進国における司法制度がわりのセーフティネットとして機能している。

    6. 信頼とは保険のようなものだ。実際の必要が生じる前に、あらかじめ投資をしておく必要がある。

    7. 相手の文化的背景から、思考や行動の特徴を決めつけてはならない。

    7. 病気が認識できれば、半分は治ったようなものである。

全50件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

エリン・メイヤー(Erin Meyer)
INSEAD教授。ハーバード・ビジネス・レビュー誌やニューヨーク・タイムズ紙などにも紹介された『異文化理解力』著者。2004年INSEADにてMBA取得。1994年から95年にかけて平和部隊の一員としてスワジランドに滞在。現在はパリ在住。

「2020年 『NO RULES(ノー・ルールズ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エリン・メイヤーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジェームス W....
クリス・アンダー...
ベン・ホロウィッ...
デールカーネギ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×