日経サイエンス2015年12月号

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  • 日本経済新聞出版社 (2015年10月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910071151258

日経サイエンス2015年12月号の感想・レビュー・書評

  • 物理学上の大事件と言えば、ガリレオの「地球は回っている」発言、ニュートンの万有引力の発見といくつか挙げられるが、これらと合わせて外すことができないのが、アインシュタインの「相対性理論」だろう。大きく特殊相対性理論と一般相対性理論に分けられるが、前者は重力のない場合の理論、後者はより広く、加速度運動と重力を組み込んだ理論である。さらに電磁場も組み込んだ統一理論の提唱を目指していたが、道半ばで逝去している。
    今年は一般相対性理論の発表から100年の区切りの年である。今号はその特集となる。

    一般相対性理論はそれまでのニュートン物理学から見た世界がひっくり返るような理論だった。アインシュタインがこの理論を思いついたきっかけは、自由落下する人は自らの重みを感じないはずだという気づきであったという。
    時間や光といったある種、絶対的とも思える存在も、相対性理論に掛かれば確固としたものではないように思えてくる。光速に近づけば時間の進み方が遅れるといった論理的帰結は、タイムマシンへの夢を産んだ。
    一般相対性理論の方程式から存在の可能性が強まったのがブラックホールである。
    アインシュタインは当初、宇宙が膨張しているとは考えていなかった。しかし、彼の方程式では宇宙が静的であることを示すことはできなかった。そこで彼は、自らの方程式の整合性を保つために、「宇宙項」の導入というつじつま合わせを行う。後に誤りを認めて撤回するが、こうしたずれが生じた陰には、現在、「ダークエネルギー」と呼ばれる未知のエネルギーが働いていると考えられている。
    相対性理論は100年を経てもなお、歴史的遺物ではなく、関連分野に強い影響力を保ち続ける理論でもある。もちろん、この理論なくしては生まれなかったSF作品も、数多くあるだろう。

    アインシュタインという人は、理論物理畑の人だけでなく、広く一般の人々にもよく知られる、物理学界のスーパースターのような存在である。顔写真を見ただけで大多数の人が名前を言い当てられるような物理学者はそう多くはない。
    提唱した理論が難解であるにも関わらず、これほど人々に親しまれているのは、1つには彼が「思考実験」の名手であったことにもよるだろう。わかりにくい理論を例え話で説明することで、高度な数式を理解できない人にも彼の考えが想像できるようにしたのである。
    但し、これには弊害もあった。思考実験は実際に行われる実験とはかけ離れた状況を想定する。検証ができないわけだから、仮定や論理の組み立てが誤っていれば、大きな過ちを犯す可能性もある。また、いかにも科学的と見せかけた「相対性理論もどき」のこじつけを生む可能性も低くはない。

    アインシュタインの有名な発言に「神はサイコロを振らない」というものがある。一般的には量子力学の非決定性(量子の振る舞いが確率論的であるというもの)を否定したものと受け取られるが、どうやらそう単純なものではないらしく、彼はランダムであるかどうかは、観測する「階層」によると考えていたらしい。つまりあるレベルでは決定論で支配されているが、さらに上の階層では非決定論的である。量子の振る舞いが決まっていたとしても、例えば人がどの選択肢を選ぶかで結果は変わりうる。世界はそうした決定論と非決定論の支配する世界が層のように重なって出来ているのではないかというのだ。このあたりまで来ると凡才にはよくわからないが、宇宙論にもつながっていきそうな壮大な話である。

    さて、アインシュタインの頭脳は、持ち主の死後も数奇な運命を辿ったことをご存じだろうか。
    天才の脳には何か秘密があるはずだと考えた病理学者が、アインシュタインの遺志に反して脳を取り出してしまったのである。少し変人であったこの病理学者は、のちに、ホルマリン漬けのアインシュタインの脳とと... 続きを読む

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