未来に先回りする思考法 [Kindle]

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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感想・レビュー・書評

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  • 本書は、早い段階(2010年)でグローバルなスマホアプリ市場の成長を確信し、(シリコンバレーではなく敢えて)シンガポールに拠点をつくり、当時「ガラクタ」同然だった Android に特化したアプリの収益支援ビジネスを立ち上げて見事成功させた著者が、テクノロジーや社会の未来の読み方を語った書。2015年発行。

    著者は、テクノロジー進化やテクノロジーによる社会システムの変革には一定のパターンがあり、それを見抜いていれば、状況が変わっても未来を見通すことができる、という。

    そもそも、「人は未来を見誤る」生き物なのであり、著者もこれまで新規事業を立ち上げてきた中で「自分も他人もうまくいくと考えていた事業は失敗し、自分も含め全員が半信半疑である事業は成功した」のだという。

    多くの人が未来を見誤る中で、変化に先回りしてビジネスで成功している少数の人達は、テクノロジーを「点」ではなく「線」で捉えている。テクノロジーによって人間の営みは無限に拡張していくのであり、テクノロジーの進化に伴って社会は時間をかけて徐々に効率化していく(今はハブ型社会から分散型社会への移行期))。この大きなトレンドに沿って物事を「線」で考える(原理から考える)ことがビジネスの成功の(というか変化の激しいこれからの時代を生き抜くための)秘訣ということらしい。

    また、著者は、こうしたテクノロジーや社会システム変革の大きな流れを踏まえた上で、人の予測は外れる前提で自分の合理的な判断を疑い、「将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行う」べきとも言っている。

    興味深かったのは、「インターネットの発達は「ガイア理論」の延長であるという、興味深い説」。「俯瞰して眺めれば、それはまるで、人間やコンピュータも含めたひとつの巨大な生命体が生まれているかのように見え」、「テクノロジーが人間の機能を拡張し続けていくさまは、人類全体が、互いに共鳴しあうひとつの生命体に近づいていく過程だと捉えることもできる」という見方があるのだという、なかなか面白いと思った。

    また、企業と行政のあり方について、「「貨幣」を中心とした資本主義から「価値」を中心とした社会に移行しつつあ」るため「社会的に価値のある取り組みは利益が出しやすくなって」おり、「今や、社会全体の利益(公益)と企業の利益が一致しないと、企業として成長できない時代」で、「経済的な活動には「公益性」が求められるようになり、政治的な活動にはビジネスとしての「持続可能性」が求められる」ため「経済と政治の境界線はどんどん曖昧になって」いるという。確かに、最近公益的で立派な営利企業が結構目立ってきているような気がする。今後、政治家や行政の役割はどんどん縮小していくのかもしれないな。

    我々人間自身の変化についても著者は、「人間の機能を拡張するテクノロジーが最終的に行き着く先は、「どこにでも自律的に考えて行動する自分の分身」です」、「コンピュータの進化は人間そのものの再定義を進めていきます」、「テクノロジーによって、私たち人間自身もまた次の進化のプロセスに向かって動かされている」と言っている。これって人類という種にとって果たして望ましいことなのだろうか?

    5年前の、ボリュームの薄い本だったが、結構考えさせられた。

  • 「もしも社会が進化するパターンを見抜いていれば状況が変わっても未来を見通すことが可能になります。」
    「社会の進化はいつの時代もテクノロジーが牽引してきた。」
    僕は息子に
    三手先を読むのは難しい
    でも半歩先は読める
    半歩先は今の延長線上にある
    だから有用な情報を出来るだけ選別して
    仮説検証する
    そう考えるように言ってます。
    ただ本書はさらにその先を読む技術が書かれています。
    そのポイントがテクノロジーなんやなあと思います。


    「社会の変化を一本の線として考えるための原理原則」
    「変化に『先回り』した者のみが生き残ることができる」
    10年前と今のネット社会を比較すると別に変化に流されながら生活するのは難しいことではないと思います。
    今の日本に住んでたらなんとかなるんやろなあとも思います。
    ただテクノロジーは
    「人間を拡張するものであること」
    「いずれは人間を教育し始めること」
    「手のひらから始まり宇宙へと広がっていく」
    ということを考えると現状維持は取り残されることになるので少しでも先を読む技術を身につけておかないといけないと思います。


    ①学習
    ②パターン認識
    ③予測
    ④実行
    人間の行動をAIがディープラーニングで自己学習して真似できるようになってきています。
    「計算だけではなく意思決定までする機械」が現実のものになりつつあります。
    ただその時に人間が変化に取り残されないようにしないといけません。


    「あらゆる物体に知性が宿る世界」
    モノのインターネット化の先の世界だそうです。
    今でもネットは便利やなと思います。
    これがさらに進むとなくてはならない世界が来るんやと思います。


    「テクノロジーは天才を量産する」
    まさに理想の世界ですね
    世の中には「勝ちパターン」があります。
    ただアクセスできる人がごく一部に限られてました。
    一部の持てるモノだけが享受していた「勝ちパターンへのアクセス」という効率化がテクノロジーを使うことで得ることができます。
    こうなると学生でも起業できるしアントレプレナーになるチャンスが大幅に増大します。


    「差し迫った必要性」
    危機感といっても良いかもしれません。
    日本にはそれがないというのも頷けます。


    「どのようなシステムであれば民意をスムーズに汲み取れるか、社会の課題を効率的に解決できるか」
    プライバシーが侵害されることを極度に恐れる人がいます。
    LINEやネットバンキングを最後までやらないという人もいると思います。
    ただみんななんらかのプライバシーを犠牲にして利便性を享受してきました。
    その許容範囲が社会変化に従って広がっていくんやろなと思います。


    「価値主義」
    貨幣価値に換算できない資産「情報」を持つモノが勝者になる時代が来ています。
    個人レベルでも感じます。
    例えばこれまで法律知識は弁護士さんのものって感じでした。
    それが今やネットでググればそれなりの答えが返ってきます。
    それを判例や書籍で調べたら基本的なところは押さえれます。
    ただそこに付加価値を生み出す情報はやはり専門家にしかないと思います。
    これからは資格云々ではなくいかに価値の高い情報を持っているか、価値の高い情報を生み出せるかが勝負になるんやなと思います。


    「ハイパーコネクティビティ」
    すべての人とモノがネットを通して完全に繋がった状態
    ここまで行けば効率が大幅に上がって生活の継続に必要な社会的コストが不要になって社会を良くするための労働だけが残るのかなと思います。


    「未来を先回りするために」
    1 常に原理から考える
    2 テクノロジーの現在地を知る
    3 タイミングを見極める
    僕が息子に半歩先を読むように言ってることに通じます。
    差のつく能力ではなく努力でカバーできることです。
    そこで大事なのは
    点ではなく線で考えること
    過去の情報を把握して現在の地点を考えて少し先に思いを致す。
    あとはタイミングを逸しないことです。
    ここで行動する条件つまりリソースが揃っているかですが僕は子供たちに必要な資源は渡したいと思います。
    勉強に必要なコストはかけますしスキルアップに必要な費用は出します。
    何が足りてて何が足りないか
    備えよ常に
    ということです。
    あとは失敗を重ねる度胸ですね。

    より良い社会がいち早く訪れるように自分にも振り返ってもう一度考えようと思います。

  • 社会の変化を一本の線として考えるための原理原則をまとめたもの

    既存のシステムが今後どうなるかは、そのシステムが生まれた原理原則に立ち返り、今、今後もそれが最適解なのかを検証する思考法が有効

    大きな成果を上げるために考えるべきは、今行なっていることはそもそも本当に進むべき道、やるべきことなのかを考える。今やっていることに対して懐疑的な目を持つ。
    └現状を効率化し続けることは目的への近道を探すことを放棄した思考停止状態
    └物事は惰性で進みがち。現状の効率化を考える前に、今も本当にやるべき価値があるのかを優先して考える癖をつける

    物事がうまく行かない場合は、パターンを認識するために必要な試行回数が足りていない場合がほとんど。サンプルが必要だと頭では分かりながらも感情的な理由から十分な数が集まる前に諦めてしまう。目的達成を阻んでいるのは人間の感情というフィルタの場合が多い。

    未来を先回りするための近道:
    将来的に新しい情報が得られるだろうことを考慮に入れた上で一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行う

    環境の選び方
    自分の能力が発揮しやすく、かつ将来的に拡大しやすい可能性が高い穴場を選ぶ

    人間や社会を対象とする領域(人類学、経済学、政治学、法学、言語学)の実験を重視してこなかった
    └だから狙い目?

  • 変化に合わせて対応していくリーンスタートアップもプレイヤーが増えれば競争が激化する。そこより一歩進んだ、先回りする思考が大事。点ではなくて線で考える。

    テクノロジーは人類の拡張として発展する流れがある。血縁型からハブ型、さらには分散型へ。テクノロジーによって境界は溶けていく。納得感よりパターンで判断しろ。

    ビットコインがはやり始めた頃の本だったか。本質的にはそこに向いている本。今だと会社もアプリも著者もあまり聞かなくなってしまった。

    ・テクノロジーの進化には一本の「流れ」がある
    ・すべてを「原理」から考えよ
    ・テクノロジーは人類の敵なのか
    ・未来に先回りする意思決定法

  • ・IOTの先には、モノに知性が宿る世界がくることが予想される。
    ・インターネットは、近代に引かれた様々な境界線を「溶かす」。

    ・経済は、一人ひとりの生活を向上させる役割を担っている。
    ・政治は、全員の生活を向上させる役割を担っている。
    ・経済的な活動には「公益性」が求められるようになり、政治的な活動にはビジネスとしての「持続可能性」が求められる。
     →経済と政治の境界線は曖昧になってきている。
     →政治は経済化し、経済は政治化してきている。

    ・変化のスピードは速い順に、消費者、法人、行政・司法

    ・テクノロジーによる効率化は労働者にとっての収入を減らす可能性がある。
     しかしそれと同時に消費者に対してコスト削減としうメリットももたらす。

    ・今の時代に当然とされているものを疑うことができるという能力は、未来を見通すうえで重要な資質。
    ・今の自分が進んでいる道は「そもそも本当に進むべき道なのかどうか」自転車をどれだけ改造して整備しても、宇宙に出ることはできない。
    ・「どうすれば現状のやり方を効率化できるか」と考える前に、「今も本当にそれをやる価値があるのか」を優先して考える。

    ・未来に先回りするために重要なこと。
     1.常に原理から考える(そのシステムがそもそもどんな「必要性」を満たすために生まれたか)
     2.テクノロジーの現在地を知る
     3.タイミングを見極める

    ・取り組んでいくうちにその人の知識や能力はアップデートされ新しい能力が身についたりする。
     つまり、現在の認識できそうに見えることは、将来の自分にとっては楽勝でできる可能性が高い。

    ・物事がうまくいかない場合、パターンを認識と確率が認識できるまえ「実験」だと割り切って量をこなす。

    ・ロジカルシンキングは、他人を説得する際には絶大な力を発揮する一方、物事の成否を見極めるには、実はそれほど役に立たない。

    ・評論家になるな、実践者たれ

  • 過去から現在の流れについてはとても共感できる。未来を先回りする思考法という観点では、細切れ時間で読んだこともあってか自分にはあまり響かなかった。
    テクノロジーを線で捉えてる人は、その道は個々人で異なるが最終的な目的地は同じ。
    原理原則で考えた時、必要なものはいずれ実現する。ただその時期を見誤らないことは重要だ。

  • 本書では、テクノロジーを軸に、 ・テクノロジーの進化にはどんな「パターン」が隠されているか(1章) ・インターネットを中心とする新しいテクノロジーはこれから社会のシステムをどう塗り替えていくのか(2章) ・テクノロジーの進化は私たちにどんな問題をもたらすのか(3章) ・未来を予測したうえで、個人はどう意思決定すべきなのか(4章)

  • 学びの多い本だった。子供にも読ませたい

  • オーディオブックにて。
    ちょっと今の自分にはスッと入ってこなかったので、また時期を変えて再読を検討。

  • 本書から感じる内容・自分の中に残るポイントが幾つか有る点承知しているが、読んでみて個人的に特に目を引いたのは最終章かな。

    今の自分の能力に基づいて意思決定をしてはいけない=自分の能力を過小評価している、問題に取り組み、時間の経過とともに自分の能力上がりうる点も考慮に入れる、行動を起こす時点と結果がわかる時点の時間差がある、その差が長いほど自分の認識はあてにならない、変化を察し、誰よりも早く新しい世の中のパターンを認識して、現実への最適化を繰り返す等、頭の片隅に入れてアクションを起こしていきたい。

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著者プロフィール

福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2015年に東証マザーズに上場。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」などに選出。2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務。
『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(幻冬舎)で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2018」リベラルアーツ部門賞を受賞。

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