緋色の研究 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]

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  • 世界でいちばん有名な探偵であり、「探偵」という職業を世に定着させたパイオニア、シャーロック・ホームズ。1887年発表の本書でデビュー。

    ホームズが手掛ける事件は空き家で見つかった毒殺死体の犯人探し。ホームズはあらゆる証拠を一瞬で探し出し、選択し、推理する。その圧倒的な判断力で事件はあっさりと解決。あぜんとする警官たち。ミステリーとしては実にあっけないものだが、本作品で味わうべきは、シャーロック・ホームズというキャラクターだ。

    ホームシェア仲間のワトソン博士いわく、ホームズは医学や物理学、科学など現実に応用できる知識は豊富だが、逆に文学や哲学、天文学などの知識は皆無。もちろん宗教なんて興味がない。この点は著者コナン・ドイルも同じ意見なのだろうか。本作品の途中で、長々とモルモン教をこき下ろす。

    むしろ著者は宗教が有害で、無駄だということを言いたくて、宗教を超越する徹底したリアリストのシャーロック・ホームズを作り出したんじゃないだろうか。

  • 物語は、イギリス兵としてアフガニスタンに駐留していたジョン・ワトソン博士が兵役からロンドンに帰還するところから始まります。ロンドンで退役後の生活を送るにあたり、乏しい年金のワトソンは一緒に家賃を分かち合える人を探すのですが、ここで友人がワトソンと相性が良さそうな科学者で探偵業を営む人物を提案してきました。ワトソンは水に含まれる血液の性質を研究しているというその人物と大学の研究室で出会います。その人物こそご存知、名探偵シャーロック・ホームズその人です。

    出会って早々にホームズはワトソンを一緒に暮らしやすい人だと判断し、すぐにベーカー街221Bでのパートナーシップが始まりました。とはいえ目下のところ、ホームズが探偵業と科学実験に明け暮れる間、二人は別々の時間を過ごしていたため、ワトソンとホームズは同居生活を始めた当初、ほとんど連絡を取ることがありません。故にワトソンはホームズが探偵であることすらほとんど知る事もなかったのですが、ある日スコットランド・ヤードの警部からホームズの元に殺人事件の相談が持ち込まれます。この事件においてホームズはワトソンに同行するよう主張。この瞬間に探偵小説史上もっとも有名なコンビが誕生することになります。

    私が本作で印象に残ったところは、やはり、スコットランドヤード警部を差し置いてあっさり謎を解き明かした、ホームズの力量と観察眼です。例えば、殺人事件の現場の死体の上の壁に血で書かれた「Rache」という文字。警部達はこれを見て、「“レイチェ”という文字を書こうとして血が尽きてしまったからだ!」と考え、「レイチェル」という容疑者の名前を推理します。しかしこれはホームズに言われせば、まったくの予測違いであり、事実、警部達はほどなくして手掛かりを失ってしまいます。

    さて本作は大きく第1部と第2部の2つに分かれているのですが、ホームズは捜査が行き詰ってしまった警部達を尻目に、血文字の真意を見極め、第1部の最後に犯人を突き止めます。続く第2部は時系列がガラリと変わって、ゴールドラッシュ時代のアメリカはユタ州が舞台。ここでは血文字の因縁の発端となった話に関連しているので詳しくは述べませんので、詳細は本書をご覧ください。

    物語の途中で時系列がいきなる変わるというのは、章立てになっているロールプレイングゲームのシナリオで時々見かけますが、こういった作りが130年も前に作られていたりするところも驚きだったりします。

  • まだ車がなくて馬車の時代ならではの推理が描かれてる。今と全く異なる時代の話でも、すごく楽しめた。

  •  4作あるシャーロック・ホームズの長編のうち、なぜかこれだけはまだ読んでいなかった。デビュー作だというのに不思議である。正確に言うと途中までは読んでいて、ホームズの初登場シーンなどはなかなか楽しかった思い出がある。ただ、肝心の事件になると何となくぱっとせず、事件の背景を描く挿入部分はまったく肌が合わず、投げ出してしまったのだ。

     改めて読んでみると、以前は読む気になれなかった挿入部分もそれなりに楽しく(それなりに、だけど)、まあまあ満足して読み終えた。「まあまあ」というのは、ミステリとしての魅力はあまり感じなくて、ホームズ物の良い香りだけは十二分に楽しんだ、という印象が強いからだ。そもそもホームズの推理の方向性というのは、厳密に言うとパズルではなく、観察と解釈と実証の積み重ねという感じで、その3つのどこかにサプライズがあると気持ちが良いって、たぐいだと思う。この物語の解決も、特別興味深いものでもなく、その解決を導く過程も、ドキドキするような知的興奮という感じではなかったと思う。黎明期の作品、という印象が強い。

     ただ、黄金期のミステリにも、日本の新本格にもない独特の香りがホームズものにはある。辻馬車とバイオリンとコカインの世界である。その魅力をじっくり感じられるという意味では、他のどの長編よりもうっとりできた。なまじミステリの味が淡泊なだけに。ホームズものは、それでいいのだ。

  • 何度も読んだけどミステリーの決定版ですね

  • 現代版すぎるのは雰囲気が壊れて嫌だなと思ったので、すごく調べて創元推理文庫の深町さん訳を選びました。

    シャーロックホームズは初めて読んだのですが、すごく軽快かつ爽快!
    必ずどういう経緯でその答えに導き出したのかを教えてくれるのでスッキリします。
    ワトスン博士とシャーロックの出会い、シャーロックの知識・観察力はすごい。どうして窓を背に座るのかなどの理由付きワトスン博士の記録取りも考えてみればすごいことですよね

  • シャーロック・ホームズとワトスンが初めて出会う記念すべき第1作目。

    確かにストーリーとしては充分に読み応えがあり、ホームズの鋭い観察眼のカラクリやグレグスンとレストレードの喧嘩(?笑)なども楽しめましたが、なぜ星2かというと、ただ文体が自分に会わなかっただけです(笑)

    次は新潮文庫の本を読んでみようかな。

  • ホームズとワトソンの初顔合わせが面白い
    気怠げなワトソン投げやりだけど褒められると頬を染めるホームズ
    なんだか新鮮

    事件の全容は、なかなかモルモン教が呑み込めなくて恐ろしい

  • 短編集(シャーロック・ホームズの冒険)で物足りなかったから長編を手に取ったのだけれど、ホームズとワトスンの出会い、犯人や加害者の過去編が長く、肝心の事件は短編並な印象で拍子抜け。特に過去編はそれはそれで面白いんだけどさすがに長すぎる…。
    有名なシリーズだし一度は読もうと手に取ったけど自分にはちょっと合わなかったかも。

  • 20年ぶりくらいに読んだ。ほとんど忘れていたので新鮮。ホームズとワトソンの出会いが良い。ツッコミどころがあり、破綻している部分もあるけどご愛嬌と言って捨てられるほどキャラクターが魅力的。キャラの掛け合いとホームズのドヤった推理だけで十分楽しい。解説が充実していた。

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2023年 『コナン・ドイル① ボヘミアの醜聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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