- Amazon.co.jp ・電子書籍 (370ページ)
感想・レビュー・書評
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70年代のSFだけど、今読んでもそん色ない。異生命体に地球を奪われた人間は太陽系に広がり、医療工学による体の交換、クローン再生、などの新しい文化を広める。八世界の物語。
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がっつり系のSF短編集。1970年代に書かれたものであるが、古くさくはない。むしろ、今につながる技術や発想などを鑑みると、現代の作品の発想の質が悪いように思えてくる。舞台は未来の太陽系。想像上の技術が当たり前の世界であり、情景を映像として頭の中に浮かべるのは苦労するが、それを楽しく感じるし、楽しめたら他のSF作品も楽しく読めるだろう。個人的に好きな作品は、「カンザスの風景」、表題作の「汝、コンピューターの夢」、「汝、コンピューターの夢」だ。
◎ピクニック・オン・ニアサイド
月面での生活。男から女に、女から男に自由になれる世界。地球からの移民の生き残りの老人との邂逅。そして老人の死。親子の関係。すべての前提を覆す物語だ。
◎逆行の夏
クローンの姉弟。ネタバレだが、母親が父親。頭が混乱する物語。水星での不思議なお話。
◎ブラックホール通過
分かりやすい物語。男が宇宙ステーションでブラックホール通過で絶体絶命の危機に陥る。遠く離れた女とは通信だけでしか触れあっていなかったが、女がなりふり構わず助けにいく。面白かった。
◎鉢の底
いろいろありながら、最後はほっこりとさせる。
◎カンザスの風景
これはラブロマンスと言っていいのだろうか。違うような気がするが、それでもいいように思える。CC(セントラル・コンピューター)もやるじゃないか。後半の展開が面白い。
◎汝、コンピューターの夢
コンピューター内のメモリー空間に自分が存在させられたらどうなるかを写実的に語る。多少の古くささを感じるところもあるが、マトリックスなどのベースになっている感もあり、面白く読めた。
◎歌えや踊れ
異形のペアが登場する物語。異形の姿を想像すると、セックスシーンなどはどうなっているのか、映像で見てみたい気もするが、文字だからこそ美しいと思えるのかもしれない。がっつりとしたSFでありながら、世界観には浸れた。 -
イーガンの後だとさっさと読んだ。
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初ヴァーリィ。『へびつかい座ホットライン』もまだ未読。これを機に復刊されないかな―。
解説で山岸さんも言っているように、まったく古びた感じがしない。サイバーパンクのパンク部分が抜けた感じの作品群。
「ピクニック・オン・ニアサイド」
世界観説明パート的な。月の裏側に住む少年少女が表側へと小旅行する。冒頭の食事のシーンで「変身」(性転換を含む人体改変)がさらりと語られていて、上手い。あと爺さんの生き様のカッコよさ。アニメ映えしそう。
「逆行の夏」
舞台は水星。平均温度180度にもなんなんとするその地表をマッパで歩くビジュアルが強烈。水銀の池で泳ぐ(滑る)のもインパクトあるなー。<服>の概念は『ドラえもん』のひみつ道具「テキオー灯」を真っ先に連想した。
「ブラックホール通過」
「へびつかい座ホットライン」という単語がはじめて登場した作品…なのかな?ヒロインが大活躍するヴァーリィらしい作品。
「鉢の底」
金星の奥地を探検する中年男性と少女の話。二昔前のSFだったらジャングルの中なんだろうけど、こちらは厚い金星の雲の下を行く。赤外線アイがないと真っ暗というのがリアル。
「カンザスの幽霊」
「ピクニック・オン・ニアサイド」のフォックス少年が女性になって再登場。自分のバックアップが続けざまに殺されるというミステリー仕立てもさることながら、バックアップから目覚めるという意識の連続性についての解釈が抜群に面白い。あと自分とセックスする話もなかなかないんじゃないかな。
「汝、コンピューターの夢」
ケニヤ・ディズニーランドの業務用コンピューターに囚われてしまった男の話。時間感覚が異なるコンピュータ内部の意識と外部からのコミュニケーションの方法が超常現象の形をとって現れるというのが面白い。こちらもまた意識の連続性に絡んだお話。
「歌えや踊れ」
土星の衛星ヤヌスを舞台に「環」の無重力空間に住むアーティストが音楽を売りこみにくる話。リングに住むために植物形の宇宙人が生体宇宙服となっているアイデアが秀逸。三角関係ものでもある。あと、動きを音楽に変換するデバイスが出てくるけど、Wiiとかで出来そうだなと思ったり。