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- / ISBN・EAN: 4548967231441
感想・レビュー・書評
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実在のネイビーシールズのスナイパー、クリス・カイルの伝記を映画化した内容。
映画としてはさすがの出来だった。けど事実の重みになにをどう書いていいか迷う。
観た人ならわかると思う。これはイラク戦争を賛美し英雄を描いたものでも、‘戦争は嫌だ’といった生ぬるい反戦映画でもない。戦争によって心を蝕まれた一人の男が苦悩するストーリー。戦いによって人生を書き換えられた人間の話だ。で、あるがゆえに結果として究極の反戦映画に仕上がっている。
ただ、米国では物議を醸している。イラク戦争を賛美した、いや、クリスは戦争の英雄。的外れな批評だろう。
これまでイーストウッドは「父親たちの星条旗」や「グラン・トリノ」で戦争によって心に傷を負った男たちを描いている。戦争映画と違うが「ミスティック・リバー」もその系譜に連なる。過去に暴力から受けた心の傷が、その後の人生に大きな影響を与えるストーリー。本作もやってることやテーマは同じ。だから読み間違えることはないと思うんだが。
映画の出来としては申し分ない。一瞬たりともスクリーンから目が離せない戦場は緊迫のショットの連続だった。不安感を増幅させるような戦車の音響から物語が始まる冒頭。クリス・カイルが爆弾を抱えたイラク少年に照準を合わせたシーンから彼の生い立ちへと続く構成の妙。戦地から戻るたび心の傷が深くなるクリス。その過程を丁寧に描く演出が巧い。
主演を演じだブラッドリー・クーパーは光っている。虚ろな目。平常でも高い心拍数が傷の深さへの伏線となっている。怒りをコントロールできない荒々しい態度。些細な物音に過剰反応してしまう姿。妻の話を聞いてそうで聞いていない、一点を見つめる心ここに在らずの表情。フラッシュバックする記憶と銃声と叫び声。狙撃手としてよりもイラクから帰還する度にPTSD(外傷後ストレス障害)に苦しむ度合いが深くなる様子が(観ていると胸苦しくなるが)演技によって伝わってくる。
ひとつ注文を付けるとすれば、イラクのスナイパーと対決するシーン。終盤クリスがイラク側のスナイパーと対決する。クリスが放った銃弾が弾道とともにスローモーションで表現される。どうしてもこのシーンで安っぽい印象を受けてしまった。マトリックスじゃあるまいし。どうしてこんな演出をしたか、監督。と。
戦場のシーンは緊迫感があった。でもそれ以上に不安感と恐怖を覚えたのが銃後の日常。戦場から妻・タヤに電話するクリス。運悪く銃撃戦が始まる。タヤの電話口から聞こえる銃声。本国にいるタヤは病院から出てきたところ。妻は動揺する。が、タヤの周囲の人々は、日常は、平穏そのもの。まるで戦争など無関心かのよう。戦場と銃後のパラレルワールドのような演出。だが、演出を超えて、世界中で戦争をしているのに本国は平和そのもの。そんなアメリカの現実を映しているようでゾっとした。
最も怖かったのがラスト近くにクリスがおもちゃの拳銃を妻に向けるシーン。ふざけ合っているだけ。でもどこか不穏で不安感を掻き立てる。心を病んだイラクの帰還兵が起こす無差別殺人は今までに100件以上にのぼるという。一番多い犠牲者は兵士の妻だ。もしかしたらこのシーンはその比喩だろうか。
映画の内容と関係ないことはレビューに書くべきではないかもしれない。でも、あえて。
物語で描かれなかったがクリス・カイルを射殺したのは元海軍兵のエディー・レイ・ルース。本作が日本公開された3日後にテキサスの裁判所が判決を言い渡した。
仮釈放なしの終身刑。 映画が陪審員にどういう心象を与えたかは分からない。
ルースの半生を追った記事を最近読んだ。テキサス生まれ。クリスと同じ高校を卒業し海軍に入隊。イラクに派遣される。人間扱いされない捕虜に心を痛め、銃を発砲する子供に動揺した。テキサスに戻ると頻繁にパニックに襲われ、深夜に些細な物音で飛び起きる。薬物と酒に頼り自殺未遂を繰り返した。
ルースも戦争によって心に傷を負い、PTSDに苦しんだ(スナイパーではないがクリス・カイルと同じ)兵士だった。
事実の重みの前では、本作のレビューを書くのはどこか虚しい。これがすべてフィクションならどんなにいいだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日常(家族)と非日常(戦場)を往復する「伝説」のスナイパーの苦悩と葛藤を真正面から正確に脚色することなく描いた間違いない傑作。イーストウッドとブラッドリー・クーパーの組合せで駄作なんて有り得ない。メイキング映像も必ず観てほしい作品。
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なんで殺されたんだろう
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イーストウッドの作品は、必ず見ます。重いなあと言う印象。もちろん肯定的な意味です。
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エンドロールを眺めながらすごい作品を観てしまったと震えました。イーストウッドなんだから、そう単純じゃないのは考えれば分かるのですが、戦争ヒーロー映画だと思ってました、ごめんなさい。
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イラク戦争で活躍した名狙撃手のお話。実話。
文字どおり、主人公はアメリカン・スナイパー、敵国兵士を何人も殺し自国兵を救った、米国の英雄。軍人として兵士としてするべき仕事をしたのだと思います。彼の生きた世界で、持ち場での役割を果たした。誰もそれを責められるはずがないと思います。彼はそう思っていないのでしょうけれど、世間の少なくない人が、彼もまたイラク戦争の犠牲者の1人なのだと思っているでしょう。