言い触らし団右衛門

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  • ラジオ大阪 (2015年10月29日発売)
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    「小説を書くようになっても、わたしは【日本とは何か】ということばかりを書き続けてきたように思います」司馬遼太郎さんが残した言葉です。

    「言い触らし団右衛門」は関ケ原戦後の子康状態を時代背景に、主人公の団右衛門が戦争祈願をするところから物語は始まります。戦で武功を吹聴して自分の名を世に売ることばかりを考えた男の生き様が描かれています
    銀河万丈さんの臨場感あふれる朗読でお聞きください。 (全23巻)ラジオ大阪(作品紹介より)

    昼食から、食器洗ってお掃除しつつ。楽しくなって聴いてしまった。司馬遼太郎の作品には、かわいらしい男たちがよく登場する。可愛いったって、ショタだ弟キャラだのの可愛いではない。立派な壮士。もののふ。だけれど人好きがして、純な稚気がある。そんな可愛さを持つ男である。この作品の主人公も、そういう男の一人。

    戦国の世を豪放さと勢い、自らをたのむ思いで支え、駆け抜けた男の物語。名前と評判を喧伝してもらうことで世を渡っていく団右衛門の、痛快な生き方が面白い。この男はどうなっていくのだろう。小さな個人には収まりきらぬような気宇を、どう形にしていくのだろう。そんな興味を持たせて、読んだり聴いたりしていると、結末までが止まらない。『言い触らし』なんて言いながら、最期の大働きと辞世の、何と格好いいことよ。銀河万丈さんの見事な朗読とあいまって、本当に楽しかった。

    武張った場面だけでなく、男女の愛の場面も、表現が美しく、深い歓びが響いてくるようだ。すなおでひたむきな女との出会いが、団右衛門にどう関わってくるのか。最後まで聴くと、その情の細やかさ、思いの深さに、はっとなる。男の仕合せ、というものの、ひとつのかたち。理想を描いたロマンであろう。

    Audibleになっている司馬作品は、短編で聴きやすいものが多く、演者も実力派で本当に素晴らしい。有名な長編もいいが、書名だけ知っていて読了していない作品を聴くのも、良いものである。

  • 戦国時代にも立身出世のため自分を売り込もうとした者が多くいた。伴団右衛門もその一人。もともと上に立つ才能はない人物であったが、大名に召し抱えてもらおうとしてその機会を常にうかがっていた。大坂夏の陣の前に戦いで死ぬまで数奇な人生を歩んだ。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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