【全15巻合本版】角川インターネット講座 (角川学芸出版全集) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 15冊分で1冊分の2700円というのは破格だったので購入。

    内容は全体的に技術の詳細な説明は極力省かれており(一部プログラムのコードは書かれているが)、技術そのものへの理解を深めるというよりは、その周辺や歴史、関わってきた人、考え方等々を理解し、インターネットそのもの及びそれが社会にもたらした影響等を理解できるようにすることが目的といった感じ。

    以下、各章の感想。
    1章:技術やアルゴリズム等は知っていることばかりだが、その意味や設計上の考え方等が興味深い。

    2章:Netscapeがいつの間にかなくなってFirefox(Mozilla)に推移していた経緯についてほとんど知らなかったので、内部にいた人だからこそ書ける内容(企業体質の変化等)は非常に面白かった。

    3章:著作権の話は聞きかじっていたが、デジタルアーカイブの話はほとんど知らなかったので、思いの他広くかつ深い話題があるなと勉強になった。

    4章:3章までに比べて比較的軽い話。
    多少分け方は乱暴だとは思ったが、ネット民を原住民と新住民に分けてその行動を論じている部分は面白かった。
    また、所属が明らかにされることが屈辱だという事実も、ネットで行われていることを見聞きして来た身としては納得であった。
    ネットの文化の捉え方の視点等が新鮮だった。

    5章:はてなの近藤さんの話は、ネットコミュニティのあり様や構築方法を理解する上で興味深かったが、それ以外の話は正直ネットと関係ない文化人類学的な話で、別に”インターネット講座”と名の付く書物で読む内容ではなないかなと感じた。

    6章:知識の話ということで、インターネットに全く関係ない哲学の話が多くなり、全15章の中で一番面白くなかった。
    また、ゲーム脳ならぬネット脳という科学的根拠のない妄想が垂れ流される節もあり、もうちょっとちゃんと著者を選ぶべきではないかと感じた。

    7章:ビッグデータの話であるが、それを実現する技術的な話(も多少はあるがそれ)よりは、どのように利用するか、あるいは従来のデータマイニングと何が違うのかといった話が多く、理解できた気にはなる(実際はデータと格闘しないとすんなりとはいかないと思うが。)。
    あとプライバシーや個人情報の話は法律や制度の話ではあるが、これは実例を交えてわかりやすく、何が問題であるかが理解しやすかった。

    8章:検索の話。狭い検索キーワードに囚われないようにするための連想検索の仕組みは面白いと思ったが、実際使いたいと思うような内容ではなかった。

    9章:オンラインでの経済というか大部分楽天市場の話。楽天がどういう意図で買収を行ったか等の事情は理解できたが、正直へーという感じ。日本のみでの話なのか世界にも当てはまる話なのか、そこら辺が整理されていないと読んで意味があるかどうかが判断付かない。

    10章:第三の産業革命というお題で、ネットがもたらす世の中に対する変化について論じられているが、正直難しくてよく理解できなかった。現実の体験や場の価値が高くなるという話が出ているが、別にそれらはネットがある以前から高かったわけで、別にネットが出てきてからの変化ではないと思う。

    11章:プラットホームの話。最初のプラットホームの理屈の話はさっぱり理解できなかったが、Apple、Google、Amazon、中国等のネットに関する歴史の話は具体的でわかりやすかった。

    12章:法と政治の話だが、正直明後日の方向に行きすぎていてよく理解できないものが多かった。
    個人的には3章の、左の主張は絶対正義だけど、極右の主張は民主主義の根幹を脅かすから、言論の自由は制限されてよいという考えは非常に怖いと感じた。
    何が正義であるとか、人間として共通に保持する価値観であるとかについて、安直に前提として置き、それに反する人間を肉体的でない暴力を使って嫌がらせして弾圧しようとする考え方は本当に危険。ファシズムそのもの。
    あとtax heavenの話は、これがインターネットと何の関係があるの?という疑問はさておき、国としてそういう取り組みだということは知らなかったのでへーと感じた。

    13章:セキュリティの話。
    制御システムのセキュリティや日米の暗号解読史の話は全く聞いたことがなかったので、新鮮だった。

    14章:IoTの話。
    旬の話なので、いいことにしても悪いことにしても、驚くような内容があるかと期待したが、よく言えば地に足が付いた感じで、悪く言えば平凡な感じの内容であった。

    15章:これからのインターネットの話というか、インターネットを経た後の人類の話か。
    3Dプリンターの所は好きな人が書いているなとわかる内容で面白かった。

  • この文章を書いている時点(2022年)では、評価が難しい。

    どの巻も、もっと細かく言えばどの章も、内容が濃く、読み応えがある。もし「インターネット学会」なるものがあったとするなら、その学会誌の特集はこうなったであろう、と、想像される。

    ただし、刊行されたのが2015年であり、当然のことながらそれ以降の技術の進歩、社会状況の変化は反映されていない。また、現時点では、独立して購入できるのは第1巻のみで、それ以外の巻は合本でしか入手できなさそうである。

    記述がやや古めであることを前提で、それでも興味のある巻もしくは章のみを読むのであれば、今でも充分に価値はある。しかし、そうでないのであれば、価格に見合う価値があるかは少々微妙である。

    刊行当時であれば、間違いなく高評価をつけただろう。

  • Kindle

  • 企業にとって、オープンソースにすることは実はそれほど簡単ではない。ソースコードを公開すればいいという話ではないのだ。オープンソースにするには社内だけで使われるコードよりも読みやすいコードにしたり、きちんとドキュメントを書いたりする必要がある

    購入してから2年半、ついに読破しました。先日読破した同じように長編の宮本武蔵と同じく、未読フォルダにあるのが見てられない、ということで、途中まで読んでいた本書を今月根気よく読み進めての読破です。

    業務効率ように自分でコード書いています。全員に展開できればいいなと思いながらも、二の足を踏んでいます。それは、誰でも使えるようにするには、膨大な作業量になりそうだから。あと、展開した後に来るであろうバグ取りにも膨大な時間がかかりそうだから。

    チームでやればいいのですかね。多分いるはずの自分よりコード書くのが上手な人が纏めてくれないかな、と心から期待しています。これだけやっていいということであれば、自分でやってみたいです。「あなたパテントエンジニアじゃないの?」とか言われると辛いですけど。

  • 2017/7/26読了。
    インターネットの本ではなく、これは社会科の本と言うべきだ。インターネットに関する15の切り口で現代社会を解説する本である。切り口を15も提供できるほど、インターネットが今の社会の基盤になっていることもよく分かる。
    それぞれの切り口の第一人者が監修と執筆を務めて実に15冊。Kindleで読んだのだが、一章読むごとにどこまで読んだかのパーセンテージが1%進むという大部の合本版だった。
    正直、興味のない章もあった。自慢話に終始する著者もいた。が、それを含めて全章を通読することをお勧めする。それがインターネットや社会というものを上のレイヤーから見下ろす視野の獲得に役立つからだ。興味のある章だけの飛ばし読み、それはインターネットや社会の単なるユーザー、消費者のレイヤーにどっぷり浸かり続けることを意味する。ということが本書を通読すると分かるようになる。
    読み終えて、大学の教養課程の授業を一単位取得した気分になった。実際、これは現代の教養と言って良い内容だと思う。日々のニュースや雑談も含めて、本書のテーマに関連する話を聞かない日はない。比喩ではなく本当にない。あるニュースを聞けば、ああ本書のあのテーマの件か。雑談で聞いた話は、ああ本書のあのテーマは今そんなことになってるのか。そういうことが一日に何度もある。
    つまりこれはどんな話を聞いても、それが少しでもインターネットと社会の関係に触れるものであれば、その話が収まるコンテクストが僕の中に出来たということだ。何を聞いても何の話か分かる。分かるから自分で考えたり意見を持ったりすることもできる。教養とはその基礎になるもののことを言う。
    本書のような内容を文系学部の教養課程の必修講座にするべきではないか(もうなってる?)。役に立つかどうかは関係ない。教育を受けた一般市民がそれに相応しいコンテクストを身につけて社会に出て行くこと自体が社会の役に立つのだし、それが全入時代の大学の役目だし学生の務めのはずだ。そういう意味では高校の必修科目にしてもいい。高校生ならこれくらい読めるだろう。

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部長、同教授。
工学博士。1984年国内のインターネットの祖となった日本の大学間ネットワーク「JUNET」を設立。1988年インターネットに関する研究プロジェクト「WIDEプロジェクト」を設立し、今日までその代表として指導にあたる。内閣官房情報セキュリティセンター 情報セキュリティ政策会議委員、社団法人情報処理学会フェロー、日本学術会議第20期会員、現在は連携会員。2000年~2009年7月まで内閣高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)有識者本部員。その他、各省庁委員会の主査や委員などを多数務め、国際学会などでも活動する。著書に『インターネット』(岩波書店、1995年)、『インターネット新世代』(岩波書店、2010年)など多数。

「2016年 『価値創造の健康情報プラットフォーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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