彼は秘密の女ともだち [DVD]

監督 : フランソワ・オゾン 
出演 : ロマン・デュリス  アナイス・ドゥムースティエ  ラファエル・ペルソナ 
  • ポニーキャニオン
3.43
  • (8)
  • (19)
  • (26)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 145
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013473089

感想・レビュー・書評

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  • 前情報だけを知っていたのですが、予想よりもずっとずっと良い映画でした。オゾン監督でハズレないのかと思うくらいに、彼の映画はいつも、とても映画らしい。

    冒頭、背景を説明するのにほとんどのセリフを介さないやり方がとにかく粋。言葉ですべてを説明するのが小説なら、言葉で余白を説明するのが詩なら、映画は、映像だけで心情と歴史を説明してくれる。素晴らしかったです。

    性自認がテーマの映画ですが、そもそも、性別とはなんなのだろうと何度も考えさせられました。メインの二人は共に「女性」ですが、クレールは髪も巻かないし(おめかしの時は別)お化粧もほとんどせず、普段はパンツスタイルが首元までボタンを閉めたブラウス姿。対してヴァージニアは、スカートにガーターベルト付きのストッキング。ほとんどの場合はブロンド(クレールは赤毛)で、アクセサリーも大ぶりなものを好み(クレールは小ぶりなパールでピアス類はほとんどしない)、パンプスを好んで履いています。
    でも、クレールは服を脱いだときの体の曲線はヴァージニアよりもあって、二人で立つと、骨格的に柔らかく小さくできているのがよく分かる。歩き方はヴァージニアの方が柔らかいにも関わらず。

    「普通」の概念は、時代と共に変化するため、この映画の中で「普通ではない」と認識されている人たちが肩身の狭い思いをしないですむ時代へと変化していっていることを願います。

    オネエだとかオカマだとかゲイだとかホモだとかレズだとか、そんな名前はどうでもよくて、人間(個人)として何が心地よいかが大事なのかな、とか色々考えていました。

    オゾン監督作品は、毎回、エンディングが楽しみなのですが、今回も大いに含んだ終わり方でたくさん想像の余地を残してくれています。クレールの子って?とか、あの二人は今はもしや?とか。
    リュシーには「女性」が必要だから、僕が両方やると言ったダヴィッドは、あのエンディングを見る限り、きっと本当にどちらもまっとうしてきたのだろうなと思います。

    ロマン・デュリスが良い演技をしてくれています。冒頭、チェックのシャツを着ながら踊っている彼を見て吹き出しましたが、どうして彼はあんなに格好良いのに、世界一ダサい男性を演じるのがあんなに上手なのでしょうか。大好きです。
    ダヴィッドが私服でソファに腰掛けるときの座る姿勢が好きでした。テニス場でカーディガンを肩からかけて立つ姿も。ここ数年で、彼はめっきり色っぽくなった気がします。男性らしい色気と女性らしい色気を同じ体に内包して、しかもそれを自由に出し入れできるなんて。まだまだ彼のこれからが楽しみです。

  • 『彼は秘密の女ともだち』 フランソワ・オゾン
    原題は、“新しい女友達”を意味する
    『Une Nouvelle Amie』 Francois Ozon 2014年

    この映画が作られた背景
    2013年5月フランスで同性同士の結婚を認める法律が成立、5月29日この制度を使う最初のカップルの結婚式が行われる。
    しかし保守派やカトリック教会を中心に反対も多く、フランス各地でデモが起き、結婚式の3日前にパリであった反対デモには約15万人が参加し、一部は暴徒化した。

    原作 ルース・レンデルの短編『女ともだち』

    Francois Ozon interview
    「このストーリーを政治的なメッセージを込めて描くべきだと思った。つまり、ハッピーエンドとして主人公に生きるチャンスを与えること。原作は、クレールがダヴィッドことヴィルジニアを殺すところで終わる。でも僕は、ふたりがひかれあい、カップルとして生きられるようにしたかった」

    「ダヴィッドはローラを懐かしむあまり、自身がローラの服を着て女性に変化し、子どもの母親となることで悲しみを克服する。それがきっかけで彼は新しい人生を踏み出す。これは喪失と再生、そして自由についての普遍的なテーマを描いている。社会や家族の枠組みから逃れて、自由に生きることへの希求を」

    Une femme avec toi あなたとともに
    https://youtu.be/piFQ4AZHosI


    過去の男はみんな変わり者 葉巻の灰より軽い連中ばかり ヴェルサイユ宮殿で夜会をしても
    中身のない軽薄な男たち 黄金の砂漠で時を無駄にした 孤独な私はあなたと出会った
    死の世界であなたは生命に輝き 子供のように歌っていた 陽気なイタリア人のよう
    人生には愛とワインがあればいい 生まれて初めてー 身も心も感じたの
    私は女よ ひとりの女 あなたとなら
    あなたは遠い昔の騎士かしら 白馬が大地を駆けめっぐていた 威厳のある顔 曇りのない笑み
    あなたの光に私は導かれた いつまでも愛を交わそう あなたといると時が一瞬で過ぎ去る
    あなたは男 優しさに満ち ふたりの日々を花咲かせる 陽気なイタリア人のよう
    人生には愛とワインがあればいい いつだって初めてと同じ 今の私は身も心も
    女よ 私は女 ひとりの女 あなたとなら

    ダヴィッドは女性としてクレールを愛するようになります。クレールもヴィルジニアに影響され、女らしくお洒落になっていきます、そして自由に生きることを選んだダヴィッド、ヴィルジニアにひかれていきます。

    ラストシーンは解釈が分かれますが、監督の言葉から考えると・・・・・かな。

    この映画を観てよかったと思いました。

  • レンタルで観賞。

    フランス映画だからこそ表現できている良さがある。

    親友の旦那さんが女装する人だったら……。
    当然、初めはショックで受け入れられないと思っていたけれど、亡くなってしまった親友も彼の女装を認めていたと知り、また彼の女装が彼の本心からくる本気のものであり、様になっている様子から、次第に彼女も受け入れていく。

    アイデンティティ。
    己とはいったい、どのような存在であるのか。
    どのようにあれば、己が満足し幸福を得るのか。

    なかなか重いテーマを軽やかに、それでいて楽天的には取り扱わず、ヒトの持つ矛盾やそれを寛容する強さを描き出すヒューマンドラマだった。

  • 心がポキっていった時、何かを代償に人は生きる。
    生きるしかなくてね。
    人によってすがるものはさまざまだ。

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