2015年 日本 87分
監督:樋口真嗣
原作:諫山創『進撃の巨人』
出演:三浦春馬/長谷川博己/水原希子/本郷奏多/石原さとみ/三浦貴大/ピエール瀧/桜庭ななみ/草彅剛/緒川たまき
巨人に食われて死んだと思われたエレンが、なぜか自ら巨人となり、巨人の弱点であるうなじの中から胎児のような状態で現れたところで「続く」となった前作。こちらの完結編ではいきなりマッドサイエンティストの父(草彅剛)に変な注射をされ実験台にされている幼いエレンの回想。そこをクバル、シキシマらに踏み込まれ、こんなに本を集めやがってと華氏451度よろしく焚書され、連行されていく父と優しい母(緒川たまき)。おじさん(ピエール瀧)と机の下に隠れていたエレンは命拾いをする(この程度で?)ここでどうやらエレンに兄がいるらしきことが匂わされる。
回想から覚めるとエレンは魔女裁判よろしく拘束され軍法会議にかけられている。司令官のクバル(國村隼)はエレンを巨人の仲間として処刑するよう指示、しかしそこに鎧の皮膚をもつ新種の巨人が現れエレンを連れ去る。エレンが目覚めると、そこはジュークボックスから謎の70年代風ポップスが流れる白い部屋。シャンパンを持ったシキシマが現れ、巨人誕生の真相をエレンに語り…。
相変わらずツッコミどころ満載の完結編。正直このくだりまでで、エレンを連れ去った巨人の正体はシキシマで、実はエレンの兄、兄弟は父親の実験材料にされたので巨人への変身能力があるんだなと誰でもわかってしまう。しかし最後まで見ても、両親や兄弟の件について二人は一切話さない。なんでや。まあ最後の場面で「実は俺はお前のお兄ちゃんだ!」「兄さーん!!」ってお涙ちょうだい展開にされても泣けたかどうかわからないけどさ。
それにしても開始5分は「前回までのあらすじ」最後にも5分近くたっぷりエンドロール、それを入れても87分のこの作品、前後編に分ける意味あったのかな…。前作も98分(うち5分はエンドロール)だったので、これ1作にまとめたほうがまだしも見応えあったんじゃなかろうか。前後編にわざわざ分けるなら、シキシマの過去等もっと掘り下げる時間はたっぷりとれたはず。役者の演技力に依存しすぎだ。
白い部屋で目覚めたエレンに、シキシマは巨人を生み出したのは人類自身だと明かす(想定内)それはいいんだけど、ドロドロに汚れてたエレンがその話の間に新品の白シャツに着替えている謎。そしてなぜか腐女子へのサービスとしか思えない場面へと続く。意味不明。その頃生き残ったミカサ、アルミンらは、任務を続行すべく壁修復に使えそうな不発弾を回収しにむかう。無事エレン、シキシマらと合流するが、ここで突如シキシマが巨人じゃなくて政府と戦う!と反乱軍宣言。前作で爆薬トラック盗んだのは彼の一味だったらしい。
反抗したエレンをシキシマがボコボコにするくだり、しつこすぎてこれいつまで見てなあかんの?とうんざり。さらにエレンの前でミカサにチューするなど、結局このおじさんは誰と何と戦いたいの?とどんどんわからなくなる。案の定、巨人化するシキシマ、おなじく巨人化してエレンと肉弾戦。もはやウルトラマンを見ている気分。しまいには生きていたクバルがやってきて巨人化、迫力はあったけど、もはやなにがなにやら…。
その過程でどんどん仲間の兵士たちが犠牲になって死んでいくんだけど、気は優しくて力持ちキャラのサンナギ(松尾諭)はまだしも気の毒だったが、最初から最後までうざかったジャン(三浦貴大)についてはやっと静かになったとしか…(酷い人間でごめんなさい)シキシマについては自分の巨人化能力を知っていてコントロールできているなら、とっとと変身して政府に殴り込みに行けば良かったのに。
とりあえず、壁の穴を塞ぐというミッションだけは遂行されるものの、それ以外は何も解決しないまま終わる。エンドロールの後に、とってつけたようなオチがあるのだけど、正直なんの目新しさもない、この手のSFでは使い古されたネタで、既視感しかなかった。
キャストはそれぞれ頑張っていたと思う。石原さとみのハンジ、原作ファンからは再現度高いと唯一褒められてた記憶がありましたが、かなりハジけてました。それ以外の人たちは、納得いかない脚本で演技するのすごいストレスだっただろうな…と勝手に想像してしまった。こんなことなら、いっそ原作の巨人が出てくる設定だけを生かして、日本人の生き残りのコミュニティの話で全員オリキャラとかにしておけばよかったのにね。