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- / ISBN・EAN: 4988013511583
感想・レビュー・書評
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GOOD KILL
2015年 アメリカ 102分
監督:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク/ブルース・グリーンウッド/ゾーイ・クラヴィッツ
https://web.archive.org/web/20160611072559/http://www.drone-of-war.com/
空軍の戦闘機パイロットだったトーマス・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は、今はラスベガス近郊の米軍基地で、無人戦闘機の操縦士に配置されている。ここではいくつものコンテナのような操縦室で、各チームがアフガニスタン上空の無人戦闘機からタリバンたちを掃討している。実際の戦闘機と違い、パイロットは安全、トミーも仕事が終われば車で自宅に帰り、妻モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)と子供たちに会える。しかし彼はこの仕事と生活に次第に鬱屈を抱え始め…。
9.11以降の、アメリカ軍のありかたが問われている。ゲームのように、安全な場所から操作するだけで敵を撃破してしまえる装置。本来なら、そのほうが兵士は肉体的のみならず精神的にも安全そうなものだけれど、実際には実戦に出ている人間以上に病んでしまう人間が多いという。実感なく人を殺せてしまう異常事態に、まだまだ人間はきちんと傷つくことができるのだ。
トミーの所属するチームは、上官ジョンズ中佐(ブルース・グリーンウッド)も理解があり、トミーを気遣ってくれるが、上(政府、そしてCIA)には絶対服従、自分でスイッチを押さない人間は平気で殺戮を要求してくるが、現場の人間は機械ではない以上、そのことに葛藤し当然ストレスがかかる。民間人を巻き込まないよう配慮されつつも、実際にどうしても、という場合はやむを得ない犠牲を要求され、逆にレイプ犯をカメラが捉えても、それは米軍の標的ではない、という理由で放置するしかない。
映画の原題は「GOOD KILL」トミーたち軍人が作戦を完遂した(つまり敵を殺し終えた)ときに言う言葉で、字幕では「掃討完了」となっていたが、「GOOD KILL(良い殺し)」とは…なんとも嫌な言葉だ。これをタイトルにした皮肉を思えば、当時のドローンブームに乗っかった邦題はちょっとマヌケすぎる。
戦争とはいえ人を殺すことに抵抗のない人間は少ないだろうが、そこでなんというか一種の「命のかけひき」、自分自身の身も危険に晒し、殺すか殺されるか、という対等な立場であることで、戦場ではその殺人を正当化する心理が働くのではないかと思う。殺さなければ殺される、という切羽詰まった状況であれば、それは殺戮ではなく正当防衛みたいなものだ。まやかしかもしれないけど、そこが実戦と、この映画で描かれているドローンを使った一方的な殺戮が兵士たちにかける心理的負担の違いだろう。ボタンを押すだけで相手は死ぬ。なんかこう、フェアじゃない、という感じ。しかもそのボタンを押すことを決めるのは、自分自身ではなく、どこかにいるエライ人。
トミーはどんどんやさぐれていく。正義感の強い新入りの女性兵士スアレス(ゾーイ・クラヴィッツ)は、上のやり方に批判的で上官とぶつかり、トミーも内心彼女に共感しているが、どうすることもできない。鬱屈を抱えた彼は家庭内でもそれを隠せず、妻は子供たちをつれて出て行ってしまう。追い込まれたトミーが、ついにとった行動は…。
ネタバレだけど、レイプ犯をトミーが撃ち殺す場面は、ちょっとスカっとすると同時に、それで「ようやく正しいことをした」と満足するトミーの心理にちょっとしたモヤモヤも感じてしまう。確かに「あんなやつ殺しちゃえ!」と思いながら私自身も見ていたが、それで本当に神のように手を下すとしたら、それはそれでなんか怖いな、というか。とはいえ、映画は、戦争について斬新な切り口の良作でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016/4/25 本当に現実味を帯びた怖い映画だ!
ドローンでのゲーム感覚的な爆発 テロを排除する為の 隠れた衛星的な空爆 ドローンによる攻撃も もはや テロにしか見えない。
テロの怖さとは 人間の矛盾した洗脳によるもののような気がするし、物や形を変えても やってる事は同じだと思う。そういう指令を受けた人間も可哀想だし、違う ダメだと思う気持ちも 洗脳されてだけではない断れない状況も恐ろしい…戦争自体 誰が始めてもやってはいけない事 それはテロでしかない。攻撃のない戦わない世界へと導くもの それも人間の知恵でしかないのに虚しいですね。ドローンも闘い以外に使えば とても助かる事もあるのに…兵器に使う人間の浅はかさを感じ悲しくなります。-
現代の戦争の空恐ろしさを鮮明にあぶり出していましたね。だんだん心を病んでいくイーガンの姿に胸を揺さぶられました。観て良かったと思いました。現代の戦争の空恐ろしさを鮮明にあぶり出していましたね。だんだん心を病んでいくイーガンの姿に胸を揺さぶられました。観て良かったと思いました。2016/04/27
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☆☆☆☆ドローンによる空爆で、アフガニスタン、パキスタンのアルカイダへの攻撃が、実際にF-16戦闘機に乗って現地上空で空爆する姿に取って代わっていった。
これはまさに、今、アメリカが展開している戦争だ。
かつて『フルメタルジャケット』にみた人間を洗脳によって殺戮兵器に仕立て上げて戦争に送り込んでいたアメリカの戦争がまったく変わってしまった。
あれはあれで、殺戮兵器になりきれなかった人間や、戦場で実際に人を殺した人間たちを精神的に異常にさせて、自殺に追い込んだりもしていた。
そして、かつてのF-16のパイロットとして名を馳せていた主人公が、テキサスのトレーラーハウスのようなドローンの操作基地で、ゲーム感覚でドローンから空爆を続けることへ適応できなくなっていく。彼の表情は『ディア・ハンター』を思い出させる。幾多のムラの住民を殺害し、“死”という感覚に麻痺して、ロシアンルーレットに明け暮れる兵士のあの表情だ。
これは、社会の速い変化に適応しようと必死にもがくわたしにも少し共感の隙間を与えてくれる。
変化のスピードに半永久的に適応できていると思っている人も多いことと思うが、実際には、人生の半分の期間、人によっては人生の1/5程度の期間しか時代の主流のテクノロジーを活用することができていないといった感覚がある。
一般人の我々はそれでも、自分の適応能力の無さに、老化に辟易するのに、人に命を狙われることと背中合わせに、人を殺すことを仕事としてきた兵士が、ゲーム感覚で人を簡単に殺せることに適応できるわけがない。
かつて、自分の全財産を失って自殺する確率よりも、偶然に手に入れた大金のために人生を見失い自殺する人の方が多いと聞いたことがある。
それは、死に至らしめるには「生きることの辛さ」よりも『生きることの矛盾』の力のほうが大きいということなのだろう。
軍事に反映される国家の姿勢は、時代の進行の最先端を映し出すというのは間違いではない。
一方で、それを受け入れる市民、あるあは関わらざるおえない市民が兵士となっていくわけだけど、“同じ人類を殺しあう”という心の闇を解消することは永遠にできない。
このことが、「自分は生き、他者を殺す」理由を見つけられない『生きることの矛盾』に向かわせる。この映画を観たあとそんなことを考えた。
2016/04/17 -
戦地に行かずに攻撃するのはともかく、自宅から通勤て…。何かおかしい。
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chairforceと蔑まれ、命令によって被人道的とも思える任務に従事し、高性能カメラで一部始終を見ることもできてしまう、無人遠隔操縦機パイロットの苦悩。
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こういう事実もあるんだろうなぁ
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ドローン(無人航空機)を使った対テロ戦争を描いたイギリス映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』がメチャメチャ面白かったので、同じ題材を扱った先行作品(2014年)を観てみた。
こちらの監督は、『ガタカ』で知られるアンドリュー・ニコル。
『ガタカ』は、遺伝子操作技術が極限まで進歩した未来社会を舞台に、自然妊娠で生まれた若者の孤独な闘いを描いた名作であった。
アンドリュー・ニコルの作品は、『ガタカ』に限らず、着想・着眼点とその巧みな展開のさせ方が抜群だと思う。
「ヴァーチャル女優」が実際に人気女優となってしまう『シモーヌ』も、現代の武器商人をブラック・コメディ仕立てで描いた『ロード・オブ・ウォー』も、脚本のみを担当した『トゥルーマン・ショー』も傑作だった。
ただ、自分の持ち時間(=寿命)が通貨のようにやりとりされる未来社会を描いた『TIME/タイム』(2011年)だけはアイデア倒れの駄作で、「アンドリュー、初めて外したな。枯れちゃったかな」と思ったものだ。
以来、なんとなく遠ざかっていたため、彼の作品を観るのは久々である。
『アイ・イン・ザ・スカイ』よりも一歩早くドローン戦争に材を取った映画を作るあたり、時代の先端を鋭く切り取るアンドリュー・ニコルの嗅覚はまだ衰えていない、と思わせる。
エンタメとしての完成度は『アイ・イン・ザ・スカイ』のほうが上だと思うが、この『ドローン・オブ・ウォー』も十分に面白い。
『ロード・オブ・ウォー』の監督が作った映画だからということで安直にこの邦題がつけられたのだと思うが、原題は「Good Kill」。殺人を伴う任務が完了した際、「グッジョブ」みたいな感覚で用いられる、「一掃した」を意味する軍隊用語だ。
そして同時に、米空軍の兵士たちがエアコンが効いたコンテナの中で、1万キロ彼方にドローンを飛ばして人を殺す行為を、苦い皮肉を込めて表現する言葉でもある。
時に民間人をも巻き込み、ドローン爆撃による対テロ攻撃をくり返すうち、主人公は少しずつ精神の平衡を失っていく。そのプロセスが、サスペンスとアイロニーの中に描き出される。
「21世紀の戦争」の闇を暴く佳作。 -
戦争が戦争でない。ウォーと付いていてもこれは単純に暗殺と思っていいと思う。主演はイーサン・ホーク!最近の彼はだんだんといい作品に出ているような気がします。今回も主人公の心をどんどん闇に覆われていく姿を描いている。
「ドローン・オブ・ウォー」
https://www.youtube.com/watch?v=kWYxKn7ju_4
疑わしきは罰せずという言葉はこの戦争にはない。疑わしきはすべて殺すという酷いもののように感じる。しかも手あたり次第……ドローンパイロットの中で5年間軍に従軍して1626回の暗殺…あえて暗殺と言うのが正しいと思う。これは攻撃とは言えないだろう。そしてその後精神崩壊の後に自殺…わかるような気がします。
近い将来軍人が軍人でなくなり、気が付いたら戦争はゲーマーがしているんじゃないかと思う。この作品はそれほどまでにそんな感じにさせられます