月刊群雛 (GunSu) 2016年 01月号 ~ インディーズ作家を応援するマガジン ~ [Kindle]

  • NPO法人日本独立作家同盟
2.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 4
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (251ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 率直な話、あまり質の良い号とは言い難かった。もう一度頭を冷やして読み直したものの、その印象は残念ながら変わらなかった。2月号の成果を見て今回のレビューをしようとも考えたが、やはり早い段階で記した方が今後のためだと思ったのでレビューしたいと思う(2月号発売まであと数日しか無いけど)。

    ・夕凪なくも『望まれぬ隣人』
    1行目で躓いた。というのも、70年後という舞台設定なのに、描写されている世界はアンドロイドが出てくることを除けば、明らかに現代なのである。単純に今と70年前は大きく異なる訳で、今と70年後ならもっと別次元の世界観になるのではないだろうか。キラキラネームのくだりもスベってしまっている。舞台は現代に寄せた方が良かったかもしれない。
    そこで引っかかってしまったが故に、物語の粗さにも気になってしまう。特に登場人物像が以前読んだ作品と類似していると感じた。「屈折した人間が○○を経て心情変化する」という型で作品を生みだし続けたいのであれば、やはり細部を煮詰めたストーリーで挑む必要がある。

    ・晴海まどか『一小路真実は興味がない』
    物語の中間部分は評価が難しい。こちらは2月号を踏まえて評価したいところである。一読目は安定感があるなー、と思ったのだが、その後群雛文庫版を読んだ際に「むむっ?」と気がついた点がある。それはいずれ文庫版のレビューでお話できれば。

    ・竹島八百富『男は死ぬまでヒーローさ!』
    折り合いを欠いてしまった印象。読後感も良くなかった。虚実で言えば本作は5:5の割合なのだけれども、もっと「実」のシーンは減らして良かったのでは。9:1くらいの方がもっと怖さを引き立てられたかもしれない。同じ構成の「日本」が凄く折り合いのついた物語だっただけに、今回は非常に残念。

    ・神楽坂らせん『らせんの本棚出張篇』
    標準枠で書評2本は構成的に少しダレてしまったかなー…という印象。1本に絞るべきか、以前ハル吉氏が「現代音楽いかがですか」で行ったように、文章量を抑えて何本も撃つかにするとキャッチーだっただろう。
    ただ、僕がこの書評を読んで最もがっかりしたことは中身ではなく、「こんなに熱意を持って書評できるのであれば、もっと身内のセルフパブリッシングものに対しても語って欲しい!」ということである。らせんさんは影響力もあるし、メッセージを伝えられるだけの力量もある。それがセルフパブリッシングという枠組みに対して、かつぐぐたすの外で見られないのは何故なのだろうか? そこが気になってしまった。

    ・芦火屋与太郎『我が国王』
    世界史履修者としては大変懐かしい人物名や事件名が沢山出てきた(笑)。非常に難しいテーマと設定に挑んでいると感じる。初回の段階では設定の整理に注力されているので、芦火屋さんなりの力強い描写は次月に期待…と思ったら2月号には掲載されないでやんす。

    ・コユキキミ『週末夫婦、猫を飼う』
    今号における良心的存在。全体的に穏やかな雰囲気で貫いているのが好印象。猫に夫婦が心惹かれる様を丹念に描写している。SFチックな箇所には賛否あると思うが、猫に対する愛情だと捉えることとしたい(?)

    ・Sohma makoto『和み』
    意外と正統派の表紙。ザ・和服美人である。インタビューや宣伝などからも群雛に対するモチベーションが伝わっていますよ。

    最後に総括めいたものを。
    ぶっちゃけ米田さんのレビューを見たあとだと「うわー、読みにくいし語りにくいわー!」と(笑)。とは言うものの、結局のところ米田さんの評価と僕の評価は大きく変わらないものでした。ただ、ゲストコラムに関しては文章を読む限りだと、誠実かつ真摯な取り組みだと思っています。

    スタジアムでよく見られる「ブーイング」という現象は、一見すると個人が暴走しているように見えて、実は各々が空気を凄く読んでいるんです。「今日の試合おかしいよな、なっ!?」という空気を応援団席近辺から醸し出されてきて、それを読んだ周囲の皆で一気に「ぶー!」っていう流れなんです(笑)
    故に、今号の厳しい評価も単発的なものではなくて、15年下半期から続く苦戦の先に辿り着いてしまったものだと思っています。コールリーダー役の米田さんの声量は想像以上で驚きましたし、余計な争いを生まないかハラハラしましたが、その一方で氏が怒ったのも非常に理解できるところです。
    常連、中堅、新人とそれぞれに課題はあります。そこから改めて考えるべきは、群雛という場所は「与えられるもの」ではなく「掴み取る」ものだということです。自発的に掴み取るからこそ、その貴重な場を有意義に過ごし、様々な気づきを得て作家として成長できるのです。
    群雛文庫の創刊、そして2月号からのレギュレーション変更は群雛という場が「掴み取る」ものであると再度示したのではないでしょうか。それを認識した上で、様々な読者に伝わる良いものを提供していきませう(僕も頑張るで…)

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

フリーライター。『INTERNET Watch』『ITmedia』『マガジン航』『DOTPLACE』などのウェブ媒体を中心に、出版業界関連の記事を数多く執筆。セルフパブリッシングについての情報交換や作家同士の交流などを目的とする団体、NPO法人日本独立作家同盟の理事長で、同団体が発行する雑誌『月刊群雛』の編集長(※2016年8月で休刊)。著書は『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(インプレス)など。

「2016年 『ライター志望者が知っておくべきおカネのはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鷹野凌の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×