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感想・レビュー・書評
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主人公 は45歳 フリーター。名前はトリコ。未婚。時は2019年。人生に絶望し自殺を図る…。意識を取り戻した先は現代ではなく、バブル真っ最中の1989年の渋谷。そう、トリコは30年前にタイムスリップしてしまった。過去の自分…、女子高時代にイナズマに打たれたような衝撃を受けたミュージシャン「ドルフィン・ソング」(実モデルはフリッパーズ・ギター)に接近する。それは憧れだけでなく彼らの解散に至った非業の死を阻止するために。まさしく徒手空拳で。
あ〜あ、タイムスリップものね…で、片付けるのは早計。著者は写眼カメラが備わっているのではないかと訝る程の恐るべき記憶力と巧みな引用に支えられた情報小説の旗手。例えば「ロッキング・オン」がまだまだ音楽出版社然としていた頃の編集部スタッフの実名を挙げたり、フリッパーズ・ギターのインタビューや歌詞を随所に登場させるあたりは著者の独壇場。当時のことをよく知る人なら「あ〜、この人はあの人のことね!」と元ネタ探しも楽しめる。読者の想定を遥かに超えたストーリー展開。暴走ぶりを見せつけられ、はたして著者はどこまで確信犯であったのだろうなとマジで思う。バブル期の空気は当時既に社会人ペーペーだったので皮膚感覚で分かる。ただただ残念なのは、僕自身が音楽の知識を所有しておれば、この小説の巧緻がもっと深く理解できるのになぁ〜と思う。アイドルやアーティストに肩入れした経験をお持ちの人は、若き日の自分をオーバーラップさせ、甘酸っぱい想いを抱きながらページをめくるのは必至の偏愛小説。詳細をみるコメント0件をすべて表示