あん DVD スタンダード・エディション

監督 : 河瀨直美 
出演 : 樹木希林  永瀬正敏  内田伽羅  市原悦子  水野美紀  太賀  兼松若人  浅田美代子 
  • ポニーキャニオン
4.09
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  • (5)
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本棚登録 : 579
感想 : 131
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013509788

感想・レビュー・書評

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  • 『あんこ』って作るのに大変時間と手間がかかるのを知った。

    前の日から水につけておいたり、コトコト煮たり、あくを出したりして柔らかく炊いた小豆は、徳江さんに「おもてなし」され「待つ」ことを繰り返され、砂糖と「お見合い」をして、最後にはつやつやした水飴を混ぜられて完成する。
    出来上がったつぶあんは粒がしっかりと立っていて、なめらかで、甘さが控えめ。

    彼女が50年間炊いてきた『あんこ』は、彼女の中の『芯』や『誇り』のようなとても大事なものの象徴に見えた。
    『皮』は『世間』から『芯』を守り、繋げる役目をするクッションかな。

    店長さんが不在の時、初めて焼いた『皮』は不格好でも『あんこ』を優しく挟んで、立派などら焼きになった。
    それを売ることで、ひとときでも『世間』と繋がり、交流を持てたのだ。
    後に施設で言う「幸せだったのよ」の言葉は一片の曇りもない真実だろうと思う。

    ワカナが徳江さんに会いに、施設に向かう道すがら言う言葉「これからもそういう人たちが生まれるんだよね」は重い。
    きっといつの時代にも誤解され、排除される人は現れるのだ。

    それでも自分の『あんこ』を守り続ける人もいる。




    ものすごく美味しい上質のどらやきが食べたくなって仕方なくなる映画です(笑)そんじょそこらの甘ったるいだけのどらやきじゃ納得できない(笑)

    • hiroさん
      5552さん、またまた『ディープインパクト』にコメントを有難うございます♪
      アマゾンプライム のウォッチリストに入れていたので 即観てみまし...
      5552さん、またまた『ディープインパクト』にコメントを有難うございます♪
      アマゾンプライム のウォッチリストに入れていたので 即観てみました!
      『ER』の監督さんと同じとは知りませんでした。この映画を観て 私は他人にも優しくなれるのかと自問自答してしまいます。

      話は変わりますが 『あん』もとても感動しました。樹木希林さんが亡くなってから観たので 淋しさが倍増です...

      それから、ブクログのコメント機能はもらったコメントの下に直接返信しても 相手の方には通知がいかないんですよね?
      いつもどこにコメントをしようか迷ってしまいます。

      『アルマゲドン』、アマプラで無料になった時に観てみようと思います。
      これからもおススメあったら 教えてくださいね!
      2020/05/05
  • 内容(「BOOK」データベースより)
    町の小さなどら焼き店に働き口を求めてやってきたのは、徳江という名の高齢の女性だった。徳江のつくる「あん」は評判になり、店は繁盛するのだが…。壮絶な人生を経てきた徳江が、未来ある者たちに伝えようとした「生きる意味」とはなにか。深い余韻が残る、現代の名作。


    「私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。この世は、ただそれだけを望んでいた。…だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。」

    この樹木希林さんのセリフ、前を向いて生きていこう!ととても強く心に響きました。
    徳江さんは隔離されやりたい事も出来ず 子供さえもあきらめさせられ 辛い日々の連続だったのかもしれませんが 「どら春」で働いていた時はとても幸せだったのだろうなぁ...と樹木希林さんの演技からも滲み出ていました。
    樹木希林さんの自然な演技がとても素晴らしくて感動しました。
    ワカナ役の子は樹木希林さんのお孫さんですね。
    千太郎は徳江を守れなかったと後悔しているようでしたが 徳江にとっては働いていた日々が幸せだったのだからこそ あん作りを伝授し遺品を残したのだろうと思います。
    レビューを書きながらも思い出して涙が出ます。
    樹木希林さんの新しい演技が見れないと思うとなおさらです。
    ラストは千太郎もワカナも前向きにとてもいい感じに描かれていて これも徳江さんとの出逢いがあったからこそなのかもしれないなぁ...としみじみ思いました。
    人は知らず知らずのうちに役に立っている事もあるのでしょうね...

    この間、永瀬正敏さんがゲストで来られていた吾郎ちゃん(稲垣吾郎さん)のラジオを聴いたばかりだったので 永瀬さんが出ていてビックリしました。

    • 5552さん
      smaphiroさん、お返事ありがとうございます!
      そうなんです。頂いたコメントの下にお返事を書いても、相手の方に届かないんですよ。
      不...
      smaphiroさん、お返事ありがとうございます!
      そうなんです。頂いたコメントの下にお返事を書いても、相手の方に届かないんですよ。
      不便ですよね。
      でも、コメントの下に書く方も、相手の方のレビューにお返事を書く方も、両方いらっしゃいますよ。
      コメントにもメッセージが相手の方に届く返信欄とかあったら便利そうですね。

      『あん』はいい映画でした。
      映画内の空気がそのまま伝わって来るような、、、。
      樹木希林さんはもっともっとおばあちゃんになった時のお芝居も観たかったです。
      唯一無二の存在ですよね。

      私は最近映画をあまり観なくなってきているのですが、過去レビューで良かったら参考にしてください。

      smaphiroさんのレビュー楽しみにしています♪
      これからもよろしくお願いします。
      2020/05/05
  • 淡々とした映画の中に深い感覚が…満開の桜の陽射しと悲しみが満ちてくる。樹木希林さんは何をやっても深みがあり過ぎて 本当に泣けてしまう 永瀬正敏さんも殆どセリフない中で すごく感情が伝わってきた
    ハンセン病の事なんて忘れてた「砂の器」で衝撃を受けたものの、もうとっくに受け入れられてるものと感じてた
    昔、隔離された施設に入れられたまま、やはり外の世界では風評被害とか 今も変わらなくあるんだろうなぁ…店長さんはお母さんを亡くした時も会えず 徳江さんに会えなかったのも悲しすぎた。でも、ラストいいね〜桜になって見守ってくれる中 自分の生き方見つけたみたい
    生きるという事を改めて 考えさせられました。
    「あん」って どら焼きの あん だったんだ とても 美味しそうだった。

  • 独特の影を背負うどら焼き屋の店長にもとに
    ある日、老婆が働かせて欲しいとやって来る。

    とても静かに流れる作品。
    BGMではなく、足音や呼吸、風、雨などの生活音が聞こえる。
    台詞も少なく、人がただボソボソと呟く。

    意思があっても陽に当たれなかった徳江さん、
    意思を殺して陽に当たらずに生きてきた店長さん。
    一緒にあんを作りながら、何らかの交歓が繰り広げられるが、
    店のオーナー夫人に店長さんが負けたであろう場面がじくじく痛む。

    河瀬直美監督作品は「殯の森」以来、2作品目の鑑賞。
    言語的説明を排して、極力、音と光だけをフィルムに焼き付けて、
    芸術的な作品を作る印象だが、本作もそのベースは変わらない。

    何というか、本作を観たからといって何かが出来るわけではないが、
    けど、この作品でハンセン病の実情を知れて良かった。

  • 「こちらに非はないつもりで生きていても、世間の無理解に押し潰されてしまう事はあります。知恵を働かさなければいけない時もあります。そうした事も伝えるべきでした。」

    昨日、どら焼きを貰って食べた。DMCの根岸くんの住んでるようなド田舎に和菓子屋さんがあって、おばあちゃんが北海道から小豆を取り寄せて餡を作ってるらしい。栗が入ってて200円と若干お高いんだが、すごく美味しかった。
    たまたま『あん』を観たのだけど、ハンセン病の話というのは知ってたのに、どら焼きの餡の話だとは知らなかったので、すごくタイムリーでした。

    この映画は『ブレードランナー』にすごく近い。私が好きな、カフカの『変身』、『ジョニーは戦場へ行った』、同じくダルトントランボの『パピヨン』、『潜水服は蝶の夢を見る』、『ブレードランナー』とそれに影響を受けたフランクダラボンの『ショーシャンクの空に』、『サウルの息子』…。
    ブレランのロイが樹木希林演じる徳江さん、デッカードが永瀬正敏演じる千太郎と考えるとわかりやすい。いやブレランが難解なのに対して、『あん』は同じテーマを非常にわかりやすく描いている。

    河瀬直美監督を初めて知ったのは、数年前のユニクロのCM。有名らしいけどそれまで全然知らなかった。今考えたら、そのCMは丁度『あん』の撮影前後だと思う。
    その時に、元々はドキュメンタリーから出発したということを知ったのだけど、この映画もドキュメンタリータッチで撮られている。たぶんだけど、かなりの部分で俳優に自由に演技をさせていると思う。餡を作るシーン含め、「自由に演じる」というのはその役がちゃんと体に入ってないとできないからすごい。樹木希林のラストシーンは本人のアイデアだったらしい。
    樹木希林の孫の内田伽羅が素人同然なのがさらにその効果を増す。セリフがカブる部分があったりして良い。女子中学生たちも良い。太賀くんもちょい役ながら素晴らしかった。
    北野武や松田優作も言ってるけど、映画は演技が下手でも別によくて、下手糞が「演技しようとする」のが一番よくない。

    この映画は「音」も重要なポイントで、どら焼きや天ぷらを食べるシーンの咀嚼音をしっかり入れてる。だからめちゃくちゃ美味そうに感じる。飯テロ!食べることは生きることに通じるから大事な点。
    もうひとつ、徳江さんのセリフにもあったが、森羅万象の「音」=言葉、詩を聴くこと。「国語の先生になって、詩の朗読をやりたかった」。これはドリアン助川本人が入っている部分。

    河瀬監督作品は初めて観たけど、たぶんこれまでの作風とは全然違うと思う。『あん』が特異で、これは商業的な成功を同時に達成している。(北野作品や是枝作品なんかの方向性やキャストを考えるとわかりやすい)
    つまり、そうまでして伝えたいことがあったということで、これはドリアン助川に河瀬監督が共鳴したからだと思う。

    ドリアン助川、昔はテレビでよく見ていたが、ぱったり出なくなった。その頃のいきさつがインタビューにあって面白かった。昔は胡散臭いなあって感じだったけど、けっこう苦労されてたみたいですね。

    すごいと思ったのは、序盤に徳江さんがさくらんぼの話をするのだけど…ソメイヨシノってクローンだから、自家受粉だとさくらんぼってできない。他の品種と交配するとできるそうです。
    ハンセン病患者は断種されたりして、子どもが持てないという本当に酷いことをされていた。子どもが持てなかった徳江さんの象徴がソメイヨシノ。
    だけども彼女は、擬似親子関係で息子のような存在の千太郎に、餡の作り方を伝授する。バトンを渡す。この点が、子どもを作れないレプリカントのロイとデッカードの関係と全く同じ。
    もうひとつ、『潜水服は蝶の夢を見る』なんかでの芸術は、『あん』ではさっき書いた餡作りや詩に相当する。
    「100点満点の映画」なんかではけしてないけれど、非常に深いテーマをわかりやすく描いてるからほんとにすごいです。

    千太郎のラストはてっきり、塩漬けにした桜をどら焼きに入れるんだと思ってたけど違った。原作本も読みたくなる。

    樹木希林さんが亡くなって放映されたのを録画してたのだけど、先日市原悦子さんも亡くなってしまって…とてもショックでした。レジェンドふたりが共演してるシーンも素晴らしい。
    市原さんの「逆転の発想だ。」のセリフが可笑しくて、そこだけ何度も観て爆笑しました。市原さんは天才だな。

  • 映像も言葉も物語も、
    河瀬節!
    そして何作観ても、
    河瀬監督が切り取る永瀬正敏という役者の生き方が好きだ。



    風の音、豆の炊ける音、
    風の匂い、豆の匂い。
    光があって、影がある。
    時の流れと自然の流れが、
    出会いと命を包括する。

    驚くべき瞬間が積み重なるのだ。
    樹木希林が手紙を読む声は、
    他の誰にも真似できない。
    永瀬正敏がタバコを吸って、
    酔って、迷い、
    涙する姿は誰にも真似できない。



    白飛びする画面が気になったけれども、
    それは自然の音を強調するのと同様で、
    そこに人の心同士が描く歴史と空想を、
    可視化する役割があったのかなと振り返ることができる。

  • ↑☆は6つでもいいくらい。

    河瀨直美監督、2015年作。樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅出演。
    何の予備知識もなく、DVDの映画予告でキャストがよかったから選んだ映画。
    見始めてようやく、タイトルの「あん」が、どら焼きの「餡」だと知る。
    ところが最後まで見ると、ハンセン病への差別を起点に、生きることの意味を問う映画だった。

    <あらすじ(ネタバレ)>
    犯した罪で背負った借金の肩代わりに、不本意ながらどら焼き店の雇われ店長として働く千太郎(永瀬正敏)、ハンセン病患者として人生の大半を施設に隔離されて生きてきた徳江(樹木希林)、シングルマザーの母(水野美紀)にネグレクトされているJCのワカナ(内田伽羅)。それぞれに世間に知られたくない訳ありの孤独を抱えて生きる三人の交錯を描く。

    桜並木がきれいな通りに面したどら焼き屋の店長、千太郎のもとに、バイト募集を見た老婆(徳江)が採用を懇請、再度懇請時に徳江は自作の餡を持参する。限られた自由の中で人とのかかわりを模索する徳江。味見した餡の美味しさに千太郎は驚く。徳江は施設であんを50年も煮込み続けていた。
    徳江のあんのおかげで店は繁盛。ところが借金を肩代わりした店のオーナー(浅田美代子)が、徳江の過去を知り解雇を迫る。一旦は保留した千太郎だったが、じきに客足が全く途絶え、徳江は店を辞めた。
    どら焼き屋の常連だったワカナは千太郎を誘い、徳江が暮らす施設を訪れる。
    ハンセン病という言われなきレッテルを貼られ、施設に拘束され、自由を奪われてきた半生を振り返りながら、徳江は最期にこう言う。

    「こちらに非はないつもりで生きていても、世間の無理解に押しつぶされてしまうことはあります。知恵を働かさなければいけないときもあります。そうしたことも伝えるべきでした。」

    「初めてどら焼き屋を見たときにあなたのお顔がありました。その目がとても悲しそうだった。それはかつてのあたしの目です。垣根の外に出られないと覚悟したときのあたしの目でした。だからあたしは吸い寄せられるように店の前に立っていたのだと思います。ああ、あのときの子供が私にいたら、あなたくらいの年齢になっているだろうなと。」

    「ねえ店長さん、わたしたちはこの世を見るために、きくために生まれてきた。だとすれば、何かになれなくてもわたしたちは、私たちには生きる意味があるのよ。」

    千太郎とワカナは、彼らの抱えていた孤独から解放されていくのだった(完)。


    <コメント>
    ハンセン病が感染しないことは現代ではある程度浸透している。だから、ハンセン病の罹患歴が知れたことで客足が全く止まるとは思えない。この点を不自然とするレビューもある。
    しかし、鯛焼き屋や大福屋のような菓子店は、オープン当初こそ長蛇の列ができるが、しばらくすると列ができなくなり、1年も経つと閉店するのは街でよく見かける。どの菓子店でも起こりうるこういう経緯で客足が止まったとしても、元ハンセン病であることの負い目から、仕事を続けることができなくなる。そういうことをいいたかったのだろう。

    個人の尊厳というと、尊厳ある個人であるためには自由でいること、自分の個性を生かした何かになるように周囲からせき立てられる。
    では、自由でなければ、そして「何か」になれなければ、尊厳ある個人ではないのか?そうではないというのが、徳江の遺した言葉である。限られた環境で、見れるだけのものを見、聴けるだけのものを聞く、それでも人生に意味がある。「意味がある」というより、一度きりの人生である以上、それが意味だというほかはない。誰かのせいにするのではなく、そこに意味を見つけるほかない。
    それは問題の解決ではないのだけど、安息ではあり、千太郎とワカナはそこに助けられたのかもしれない。

    色々な要素が入っていて、単純ではないけど、オススメの良い映画。

    桜の花を中心にした四季もきれいに撮れていた。
    にこやかに辛い半生を語る樹木希林の演技は秀逸だし、徳江を守れなかった千太郎の嗚咽も迫真。

  • 日陰で生きる二人の人間、一人は借金を背負ったどら焼き店長、もう一人はらい病患者で塀の外にでれなかった老婆。
    その二人に、しっかり者の中学生が交わり、心にしみるストーリーが展開される。
    樹木希林と市原悦子の2大女優の共演もさることながら、永瀬と内田伽羅の存在感も素晴らしい。
    邦画らしい味わいのある傑作です。

    どら焼き食べたくなった。

  • 永瀬正敏さん、内田伽羅さん、好演です。永瀬さんと内田さんを並列するのは失礼かもしれませんが。もちろん樹木希林さんは別格です。特に市原悦子さんとの共演シーンは、凄いです。お二人の存在感に、痺れます。ハンセン病に対する世間の偏見が、数十年前に見た「砂の器」て描かれているままなことに、愕然とします。救いは重いものを背負った主人公の目つきが変わったことでしょうか。良い映画でした。

  • ハンセン病の老女、どら焼き屋の店主、カナリアを飼う少女がどら焼きを通して交流する。樹木希林さんの熱演が光る。「小豆には小豆の歩んできた道がある、その小豆の声を聞くのよ」「ねえ、店長さん、私たちはこの世をを見るために、聞くために生まれてきた。だとすれば何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ」。最初に観た時には、たくさんのものを見落としていたことに気が付いた。

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