日経サイエンス2016年5月号

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  • 日本経済新聞出版社 (2016年3月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910071150565

日経サイエンス2016年5月号の感想・レビュー・書評

  • 特集は「重力波」。1世紀を経て、アインシュタインの予言が当たったと大きなニュースになった重力波の観測。
    カリフォルニア工科大学とマサチューセッツ工科大学が中心となって勧めてきた「レーザー干渉型重力波天文台(LIGO)」が、運用開始まもなく、重力波と見られるシグナルを観測した。
    重力波とは、アインシュタインが予言していた時空の歪みである。一般相対性理論によれば、質量やエネルギーが集中している場所では、「しわ」のような歪みが生じる。歪みの近くで質量の大きなものが揺れ動くと、この歪みが波となって宇宙を伝わっていく。今回観測されたデータはブラックホール連星が合体した際に生じたものと考えられる。
    観測された波の形は、アインシュタインの理論に忠実に沿ったものとなっており、一般相対性理論の正しさが改めて証明された形だ。
    今回発表されたものの他にも、LIGOは、重力波と考えられるシグナルを複数観測しているようだ。
    重力波観測には、今後、欧州のVIRGO、日本のKAGRAも参入する予定である。
    ブラックホール合体等の解析のほか、期待されるのは、原始宇宙で生じた重力波の観察である。宇宙誕生直後、インフレーションにより大きな原始重力波が生じたと考えられる。これが観測できれば、宇宙誕生の秘密に迫る事実が判明するかもしれない。
    5つの記事に加え、インフレーション理論の提唱者・佐藤勝彦自然科学研究機構長のインタビュー形式での解説付き。明晰でわかりやすい。
    ときに「雲を掴む」心地にさせる宇宙物理の話題だが、壮大なロマンを感じさせるのはこの分野ならではだ。

    健康の話題から「身体を守る苦味受容体」。
    ヒトには複数種の味覚受容体があり、苦味受容体もその中に含まれる。
    味覚受容体はもちろん、舌に多く存在するが、食物とまったく接触しない器官や組織にも存在することが知られ、味覚以外の役割も果たしていることが強く示唆される。
    甘味や塩味、酸味、うま味を感じる受容体はそれぞれ1種だが、苦味受容体は少なくとも25種ある。苦いものというのは、得てして「毒」である。というより、人体に毒性があるものを「苦い」と感じるように発展してきたといってもよいだろう。多くの毒素を判別するために多数の苦味受容体ができてきたと考えるとつじつまがあう。
    近年、苦味受容体は、侵入細菌に対する防御反応を誘発していることがわかってきた。気道に存在する線毛細胞は、苦味受容体で細菌が放出する化学物質を捉えると、一酸化窒素を放出して細菌を殺す。また、孤立化学感覚細胞と呼ばれる細胞は苦味受容体と甘味受容体の両方を持つ。細菌が放出する苦味物質を苦味受容体が感知して、細菌を殺す物質を生じさせるスイッチを入れる。細菌が死んでブドウ糖が消費されなくなり、糖濃度が上がると、今度は甘味受容体がこれを感知して、苦味受容体が入れたスイッチを切る。過剰反応を抑える巧妙なしくみである。
    苦味受容体の感度が低いと、防御作用が低くなると予測される。苦味を強く感じる人の方が、副鼻腔炎に罹りにくく、副鼻腔炎患者では感度が低い苦味受容体を持つ人の割合が健康な人より高かったという臨床研究もある。
    苦味受容体を適度に活性化することができれば、副鼻腔炎や感染症の治療・予防に役立てることも可能かもしれない。

    ヘルストピックスの話題から「過剰反応」。
    子供の食物アレルギーは近年増えていると言われ、対処が難しい問題でもある。
    だが、過剰に気にするあまりに、アレルギーでないのにアレルギーと診断される子供は潜在的にかなりの数に上るようだ。実はアレルギーの診断検査は旧態依然なのだという。「皮膚プリックテスト」と呼ばれるテストでは、原因と考えられる食物に含まれるタンパク質が着いた針で皮膚を引っ掻き、反応を見る。この検査は偽陽性率が5... 続きを読む

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