魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? Wシリーズ (講談社タイガ) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 再読 Wシリーズ2

  • p107
    「ラジオって何?」
    「長波と短波の受信機です」

    p228
    「赤」
    「黒」
    「緑」
    「白」


    色は『四季』のタイトルを彷彿した人も多いように、本作も四季の影響は濃厚。でも話自体は地味に感じました。前作のキャラや新キャラも。ウィルスの考え方。現在が異常なのだということ。ほぼ攻殻機動隊とかの世界だからするりと読めてしまう。本作は子どもが生まれない原因を決定づけるためだけに作られたようなもの、と想像。どうしても世界観から作ろうとするとそのような説明的な進行が目立つ。でもこれが、S&M、V、G、百年の同一線上に存在するのが良い。むしろギアがあがるのはW2くらいからじゃないの、とも。

    引用はウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』。サイバーパンク。前作の引用もそうでしたが、明らかにシリーズの持つリズムのようなものはそこなのかなと。あってるか否かは別として。

    シリーズを読んでいて意外なのが、1人ひとつのAIを持つようになる、と言っていた作家が書く近未来SF系の小説におけるAIの扱いがおぼろげな点。つまりはそれを必要としない、しなくなるディケイドが来るという証左か。あと、先生と呼ばれるキャラ結構好きよね、と。

    それからときどき国に関する話も出てきて、あくまで作家の想像圏内ではあるものの、未来における各国のスタンスが滲み出ていて面白い。遺伝子に関しての規制は欧州とりわけドイツが厳しそう(現実世界での規制もそこそこあった気が)とか、義体化、電脳化は中東は抵抗しそうだなとか、そういう想像をするのも楽しい。

  • 2023.04.21.audible

    アネバネ登場。



    Amazon 本紹介
    チベット、ナクチュ。外界から隔離された特別居住区。ハギリは「人工生体技術に関するシンポジウム」に出席するため、警護のウグイとアネバネと共にチベットを訪れ、その地では今も人間の子供が生まれていることを知る。生殖による人口増加が、限りなくゼロになった今、何故彼らは人を産むことができるのか?圧倒的な未来ヴィジョンに高揚する、知性が紡ぐ生命の物語。

  • 再読。
    ムラサキ、痺れる。

  • アネバネ登場。やっぱりいいね。「彼、女性なの?」というおかしな質問がとてもいい。本当に早くこの世界になって欲しい。ようやくなぜ子供が生まれないのかがわかってきた段階。それでも問題は解決されるだろうとハギリは考えているところが、こちらの安心にもなる。世襲制というのは子供が生まれないとできない制度だよね。

  • ウォーカロンとはなんぞや。「最初の培養から始まって、二年半ほどで、人間の五歳児になるという。その後は、ほとんと人間と同じように自律で育てられる。もともとは、この「自律」という意味で、ウォーカロンと呼ばれるようになったのだ。」一作目に掲載されてた。なぜここにメモしているかというと、間違って二作目のこちらから読んでしまったから。でも違和感がなかった。

  • 'そして、まさにその技術に不可欠な人工細胞が、あらゆる疾患を排除したように、生殖をも排除してしまった。生殖は、人類にとって、一種の疾患だったと言っても良い'

    '死ぬことがなければ、生まれなくても良いのか。
    あるいは、生まれないから、死ねないのか'


    この世界は完全に調和しているようだ。
    ただ、ぼくたち人間を除いては。

    その人間は、そんな調和に憧れている。そんな完全をずっと、目指し続けている。

    不完全なものを取り除いていくことで、いつか完全に辿り着けると。その状態を追い求めることが、起源としての部分にインストールされている。

    でも、そのことが必ずしも幸せなことではないということを、意識の裏側ではいつだって気づいているのかもしれない。

    悲しいんだとすれば、その気づきが、ただの裏側という立場しか与えられないことを、それを超えていくことができないことを、自分で分かってしまっていることなんだ。

    基盤となる本能というプログラム、それはリライト不可能な絶対的コード。

    順調に、約束されたように、不具合が、消されていく。
    余分なものが、削られていく。
    全てが明らかになるように、ピュアな姿に近づいていく。

    人間の存在する時間をかけて、ゆっくりと確実に、間違いなく、進んでいくしかないこと。

    ところが、綺麗になればなるほど、持ち続けたいと思っていたものが、求めていたものも、いつの間にか、姿が見えなくなっていった。

    そうか、そうやって、分かるということなのか。
    綺麗というものだけが、存在しえないことを。
    綺麗という概念が土台としているものを。
    ほしかったものが、結びついていたものを。
    見えていなかった、反対側として存在していたものを。

    でも、その気づきがこの目に映るようになるのは、いつだってもう取り返せなくなってからなんだ。

    賢くはないが決して馬鹿でもない僕たちは、それを知っていながら、いつまでたっても同じことを繰り返して、そのときが来るまで見えなかった振りしかできない。

    そう作られてしまっているってことなんだ、きっと。


    '世襲なんて、もう世界中のどこでも、消えてしまったシステムですよ。そう聞いています。そうか・・・、ここでは、まだそれが可能なのですね'

    'もちろん、別の仕事に就きたければ、それも自由です。しかし、子供はたいてい親を見て育ちます。手伝いもします。自然に、同じ仕事をするようになるのです'

    'そう考えてみると、人類は、どうも本来のあり方からだいぶ遠くへ来てしまったようですね'

  • 少しずつ発展していくヒトの思考と、それをものともしない神。
    百年シリーズの再読が必要になりそう。

  • 2019/10/25 Amazonより講談社タイガ4周年フェア&タイムサービスにて508円でDL購入。

  • 『女王の百年密室』を読んでおくと世界観がつながる。終盤にミステリー要素がありつつ、答えの解説はないので、考えないといけない。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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