- Amazon.co.jp ・電子書籍 (264ページ)
感想・レビュー・書評
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会社の上司から紹介されて読んでみた。昨今、ビジネス書界隈では有名な本らしい。現代社会に取っては必要不可欠な専門化と、専門領域が異なる人々の間のコミュニケーション断絶について豊富な実例と人類学的な思考・調査手法を組み合わせて論じている。
いくつかの事例は、必ずしもサイロ・エフェクト(イフェクト、だよな、どうでもいいけど)だけが原因とは言えないものもあって、半ばこじつけに近い印象も受けるが、しかし、ストリンガー本人に取材したソニーの事例は圧巻。訳者あとがきにもある通り、この事例を読むだけでもこの本を読む価値がある。
ビジネスの世界でも、学問の世界でも、二つの専門領域にまたがった個所が金鉱なのは誰もが知っている話で、「学際領域」などという言葉が流行り始めたのはもう 20年以上昔だろう。一般的な理解では、そのような境界線上の金鉱を掘り進むには 2領域以上の専門知識が必要だと考えられている。この本では、人類学的な観察手法を用いれば、一般人の2倍勉強しなくても、異なる専門領域間の「翻訳者」あるいは「インサイド・アウトサイダー」たることが可能だと主張しているのだが、果たしてどうだろうか。少なくとも、IT 業界の華々しい成功を捨てて、警察官としてゼロから経験を積み直したマイク・フラワーズの事例は一般人が真似できるものではない。 -
サイロ自体は、組織運営においては効率的である。が、タコツボ化した組織はそれぞれに硬直したセクショナリズムに陥る。優秀な人材である程に傾向は強い(サイロエリート)。 故に非効率な全体俯瞰も時に必要である。 文化人類学からのアプローチもあり、難解な箇所もあるが、ソニーでの失敗事例や、Facebookの『ハッカソン』によるサイロ破壊へのチャレンジは読み応えがあった。 しかしながら、納得感を得ない処も少なからずあったのは、既に私もサイロ思考に蝕まれているのだろう。