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- / ISBN・EAN: 4589921402620
感想・レビュー・書評
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サイモン・カーティス監督。「グッバイ・クリストファー・ロビン」の。
ナチスによって強奪された、クリムト作「黄金のアデーレ」をめぐる実話にもとづく物語。
ロサンゼルスで洋服店を営むマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、ナチスのユダヤ人迫害をのがれてオーストリアから亡命した過去をもつ。
じつは「黄金のアデーレ」のモデルは彼女の叔母、アデーレ・ブロッホ=バウアーであり、その絵は、奪い取られたまま、オーストリアの美術館に展示されていた、いまや国の象徴のような絵画とみなされていた。
一方、オーストリアでは、そのような盗まれた美術作品の返還請求を審議のうえで認める法律があり、彼女は期日までにどうにか絵を取り戻したいと考え始めた。
そこでマリアが白羽の矢を立てたのが、知り合いの息子である若手弁護士ランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ。途中までわからなかった!)。
ラストネームにあるとおり彼は作曲家シェーンベルクの孫だ(ちなみに父親は判事。12音技法の発明と法律!この類縁、とても興味ぶかい)祖父もアメリカに亡命したが、彼の曾祖父母は収容所で死んだ。
さてそんな2人がオーストリアを相手に返還訴訟を起こし、紆余曲折の末に勝利するまでを描いたのが本作。
とくに裁判が見どころ(そういえば「ダウントン・アビー」でお母さん役してたエリザベス・マクガヴァーンが判事役で出てて嬉しかった)。マリアとランディそれぞれのスピーチが感動的な山場。
それから、マリアがアメリカに亡命する直前、両親に別れを告げる場面で、父親が母語であるドイツ語からあえて英語に切り替えて娘に話しかけるシーン、あそこは辛かった。
オーストリア政府は、十分な物証があるにもかかわらずなかなか絵の返還を認めない。この国家のやり口というのは、ナチスからより穏健な近代国家の政府に首がすげかえられたとはいえ、本質的には何も変わらないのだということがよくわかる。もっとも、最終的に返還を認めたのだから偉いものだが。
(このへんのプロセスや駆け引きもより詳しく調べたら面白そう。正義によって認められた、みたいな結論になってるけど、オーストリア国内にもナチスの元協力者がまだいたはずだし、そもそも国家というのはもっとしたたかなはずだから、ほかにいろんな事情が絡んでいそう)。
今も、返還請求がなされないことをいいことに、奪われたままの美術品はいまだ元の所有者たちのもとへ戻っていないそうだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
有名な肖像画、こういうものは最終的には美術館にあった方がいいのでは?と思っていた。しかし映画をみて、訴えをした名画アデーレの姪は、あの戦争、ナチスにより追われた生まれ故郷、故国に対する愛ゆえ、取り戻したいと思ったのでは?と感じた。最後の「あの絵を取り戻せたら幸せになると思ったのにそうじゃない」という言葉は、取り戻せない戦争によるつらい経験は決して消えない、ということなのだろうと思った。
戦時のオーストリア政府はドイツを受け入れた、なので強奪した非も認めないということか。
シェーンベルクの孫が出てきたのには驚いた。
2019.1追記ダニエル・ブリュールが好意的なジャーナリスト役で出ていた。これを見た時ははまってなかったので気づかなかった。
2015.イギリス・アメリカ
2018.11.4BSTBS -
とにかく感動しました
今日本が平和であることに感謝です -
オーストリアが好きな国なので最初はどうしてもうざったいおばあさんだなとしか思えなかったけど、弁護士が積極的になっていく辺りから主人公側を応援していた。クリムトも好きなので面白かった。
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面白かった。
出演者も素晴らしく(アデーレさんは絵画から抜け出したようにそっくり!)飽きのこない丁寧な作りで最後まで楽しめました。
ただこの作品はアメリカサイドに美談として読み取らせるように作られています。
実際にはオーストラリアサイドにも色々な理由があったのでしょうが、こちらがあくまで「強欲」として一方的に描かれていいたのはどうかと思います。
(一部の市民には「絵画の所有権を譲るべきだ」という人がいたことも表現されていましたが...)
個人的にはこれは主人公が故国に対する意趣返しを行った話で美談的要素は最後の「絵画の売り上げは寄付等によって使われて自身は店を続けながら質素に暮らした」というところだけだと思います。
(まぁ、あれだけのことをされたら仕返しもしたくなりますよね。わかります。)
あとこれまた邦題...絵画の所有権をめぐる作品なのに副題が「名画の帰還」って...
クライマックスの最高裁の結末が最初からバラされているなんて.... -
シェーンベルクの孫に驚いた。当時の迫害のシーンや返還請求で皆が訴えるシーンが印象に残る。ウィーンに戻りたくないってどういうことかわからなかった自分が恥ずかしい。
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面白い。
史実がどうだったであれ、またオーストリア側の意見があるのも踏まえた上で、映画作品としてはとても良くできていた作品でした。
名画について歴史を超えた裁判だなんていかにも素人には分かりづらそうなテーマで観たかったけど悩んでいました私でしたが、
よくもまぁ第一次世界大戦の時代と現代の法廷のシーンを交えながらこの2時間の間に非常にまとまりよく仕上げたなというのが一番の感想でした。
黄金の女の名画の存在はもちろん知っていたものの、その名画がオーストリア、ドイツ、そして海を渡りアメリカに辿り着いたことは全く知らないし、美術史に詳しいわけでもない私でもナチスがオーストリアを支配した史実さえ知っていれば中学生でも楽しめるくらい分かりやすい作品になっています。
この映画はあくまでもアメリカよりに描かれているので、オーストリアのことを思いながら観てしまうと、全てがハッピーエンドとはいかないのかもしれません。
そしてこの主人公が生粋のオーストリア人であれば、たとえ戦中からアメリカに逃げていたとしてもこのようなオーストリアを対しての裁判はなかったのかもしれません。
けれどユダヤ人ような民族の存在意義すら侵食され続けてきた人々にとって、母国のように思っていた国に裏切られ、家族や友人を失った彼女にとっては、ユダヤ人としての存在意義を復権するかたちにほかならなかったのかなと思いました。
作品としても面白かったのはもちろんの事、
私たち日本人が知る由もないほどの深い民族としてのプライドと怒りが垣間見れた作品でした。