日経サイエンス2016年6月号

  • 12人登録
  • 3.50評価
    • (0)
    • (2)
    • (2)
    • (0)
    • (0)
  • 1レビュー
  • 日本経済新聞出版社 (2016年4月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910071150664

日経サイエンス2016年6月号の感想・レビュー・書評

  • 特集は「生物のGPS」。
    2014年、グリッド細胞・場所細胞の研究がノーベル賞を受賞した(日経サイエンス2014年12月号)が、その受賞者による解説記事。生物はどのように外界から情報を得て、脳内に地図を作っていくのか、ラットを使った研究が進行している。空間認知・地図作製システムの解明も興味深く、将来的にはアルツハイマー病などの空間見当識障害の原因解明、治療にも役立てられる可能性がある。
    脳が認識するのは、外界に対しての自己の位置だが、生物が発生する際、個々の細胞も個体の中での自らの位置や方向を知る必要がある。それぞれがてんでんばらばらに好きな方向を向いていたのでは、1つの個体は維持できない。秩序だって共同作業が出来るように並ばないと、複雑なシステムは作り上げられない。
    細胞には磁石のN極とS極にも似た「極性」が存在し、これを担うタンパク質があることがわかってきた。毛並みから神経発生まで、つつがなく整うのはこれらのおかげである。
    この分野、大きな発展がありそうで今後も楽しみである。

    CRISPERは、非常に強力なゲノム編集ツールで、各方面に大きく広がりつつあるが、混合で取り上げているのは農業分野。
    CRISPERは「失敗」が少ない(狙ったとおりの操作がほぼ間違いなく行える)手法だが、特に植物では、CRISPERのミスが少ないことが知られており、農業品種に関してもさまざま編集が試みられているという。
    従来の「遺伝子組換え作物(GMO)」に対しては、反対の声も多く、規制がかかっている国も多い。こうした作物は、「除草剤耐性」といった、本来その植物が持っていない形質を組み込んでいるものがほとんどである。
    ところがCRISPERでの編集の場合、外来遺伝子を入れるのではなく、植物自体が持っている(しかし、「望ましくない」働きをする)遺伝子が発現しないようにするといった、今までになかった手法が可能になる。その結果、例えば病気に罹りにくくなったり、変色が遅くなったりするものが作り出せる。こうした操作で出来た作物は、実のところ、米農務省の規定ではGMOとは見なされない。また、近縁のよく似た植物が持っている「少し」優れた遺伝子を、元あった遺伝子と「置き換える」といったことも可能である。これは判断はケースバイケースになるようだが、グレーゾーンともいえる。
    実際のところ、伝統的な品種改良であっても、望ましい形質を選び取る際、遺伝子に何らかの改変が起こったものを選び取っていることになる。この際、他の遺伝子にも改変がある場合もあり、それに比べれば、CRISPERは「きれい」な形で「望ましい」形質だけを「迅速」に操作できると主張する研究者もいる。
    だが、このあたり、「迅速」に出来ることで、思わぬ「瑕疵」を見逃すことも危惧され、当局の規制が追いつかないまま、便利な手法が先走ることのないようにすべきではないかと思われる。消費者・栽培農家・開発者のそれぞれの目から、慎重な検討が必要だろう。
    現在のところ、商業ベースに乗ったものはまだないようだ。

    公衆衛生の話題から「死をもたらす地下水」。
    インドを初めとするアジアでは、細菌に汚染された地表水を避けるため、1960年代以降、活発に井戸が掘られ、地下水の飲用が進められてきた。だが、これが近年思わぬ問題を引き起こしているという。ヒ素である。
    ヒマラヤ山脈付近は、地球上でも最も多くのヒ素を含む場所の1つだという。井戸を掘ることで、ヒ素を含む黄鉄鉱に到達してしまい、ヒ素が周囲の地下水層に流れ出してしまったのだ。さらには、多くの井戸が掘られたことで、地下水脈の流れが変わり、きれいであった井戸まで汚染されてしまった。
    ヒ素は無味・無臭で気付きにくい。細菌に汚染された水を飲むよりましだと思う現地... 続きを読む

全1件中 1 - 1件を表示

日経サイエンス2016年6月号を本棚に登録しているひと

日経サイエンス2016年6月号を本棚に「読みたい」で登録しているひと

日経サイエンス2016年6月号はこんな雑誌です

ツイートする