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- / ISBN・EAN: 4562227883638
感想・レビュー・書評
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舞台は地平線が見渡せる何もない草原。
若くて美しい聡明な娘。
老いて醜い愚かなオヤジ。
全編セリフのない映画で、淡々と物語は進む。
どんな環境でも生まれた限りは生きるしかない。
そこで手に入れられるものが少なくても、選択肢がほとんどなくても、日々は過ぎ、人は成長し、老いて死へと向かっていく。
そのなかで少女が女性として花開こうとしているとき、地平線の先に破滅のきのこ雲が現れる。
このような草原ですらこのような形であるならば、広島や長崎はどうだったのだろう…と日本に住む者としては考えてしまった。
この物語は観た人がそのときの自分が持っているもので、受け取り方や受け止め方は違うと思う。
そういった意味では、誰もが何かを感じられる作品だと感じました。 -
台詞無しでもまったく飽きさせない映画だった。
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大草原の中の小さな家。静かに、ひっそりと暮らす父と娘。娘は少しずつ成長し、やがてささやかな恋という感情を知るようになる。
台詞が一切なく、ひたすらに続く映像美。風景も美しければ、時折り顔をのぞかせる影もまた美しい。撮影アングルにも凝っていて、大きな起伏の無い物語なのに飽きさせない。そして何より主人公の少女が美しく、魅入られてしまった。
あまりにも衝撃的なラスト。半ば予感はしていてもなお、その見せ方に大きな衝撃を受ける。
光が明るければ明るいほど、その影は濃くなる。少女が美しければ美しいほど、醜さは際立つ。心根が優しければ優しいほど、それを奪う残酷さの罪を知る。
対比の技術論はたぶん大成功だ。 -
☆☆☆
言葉がなくとも、人のつくる表情というものは、その人を語り出すものだ。
娘とふたりで暮らす父、この父の顔は“一切の理屈や甘え、許容というものを受けつけない”頑固さや、頑な世界観を感じさせる。
そう私の父の表情はまさにこんなだった。
考えてみればもうしばらく、こんな顔を見ていないことに思い当たる。「世の中が優しくなったのか」「物分かりが良くなったのか」とも考えるが、…
今を生きていてそんな感じは全くしない。人の表情は優しくなったのに、社会の環境はむしろ、「息苦しさ」が増し、「人を信じる力は弱められている」といったのが実感だ。
あの大草原美しさのなかで暮らすあの父と娘の関係。被爆する父。この地を捨て新しい土地を目指そうとした娘の姿。それらは核の実験によって、人命が失われ、美しい自然が破壊されことを対比して訴えているのか?
ラストシーンに至るまで、意識はすべて視覚からの美しい映像と素朴な日常に釘付けになっていた。それは伏線だった。
2017/05/05 -
「ブレスト要塞」は普通の戦争映画だったのに、台詞無しでこんな珠玉の作品を送り出したアレクサンドル・コットって一体?!
通りがかりで少女に恋する若者役の子、「スーツ」に出演していたサーシャみたい。この作品中でも曲芸披露してくれるが、そういうの得意みたい。現地の若者役の人、少女のお父さんも素敵。 -
そこに意味はない。
だから妄想をする。
綺麗な世界。
だから、人はそれを汚さずにはいられないのか。