友罪 (集英社文庫) [Kindle]

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  • 「益田くんはぼくのことを救ってくれた。ぼくを救ってくれた唯一の親友だから」

    「自分のことを必要としてくれる友達に初めて出会えて、本当に嬉しかったんだ」

    こんな言葉を自分にかけてくれる職場の同僚が、過去に殺人を犯していたとしたら。

    それも、日本中を震撼させた幼児連続殺害の犯人の「元少年A」だったとしたら。

    かつて「正体」(染井為人著)のレビューを投稿した際に、友人から「薬丸岳の『有罪』を思い出した」とコメントをもらい手に取った。


    ジャーナリスト志望の益田純一は、埼玉県川口市のステンレス加工会社に就職。
    夢破れ、アパートも出なければならなかった彼が、とりあえず就職した社員寮つきの会社だ。

    同日に、同じ27歳の鈴木秀人と入社した。
    尋常ではない雰囲気で、周囲との交流を避けていた彼とも益田は打ち解けていく。

    事務員の藤沢美代子には消してしまいたい過去があった。
    「別に悪いことなんかしてないじゃないか。人を殺したわけでもないし、罪を犯したわけでもない。逃げ回ることなんかないよ」

    親しくなった鈴木は、美代子にこう言葉をかける。
    元交際相手に執拗に追いかけ回され、人生をめちゃくちゃにされてきた美代子の心にほんの少しの明かりが差す。

    人の過去を詮索してみたいと思うのも、人間。

    かつての凶悪犯を許せず、安全地帯からの正義感でつるし上げてしまうのも、人間。

    そして、目の前の人を何よりも大切にしたいと思うのも、人間。

    天国も地獄も。
    菩薩も畜生も。
    穏やかな心も怒りの心も。
    すべて同じ人間の生命。

    それは縁によって呼び出されてくる。

    人間の尊さも醜さも、徹底して描ききられている。

    だからこそ、人を殺してはいけない。自分で生命を絶ってもいけない。

    絶望的な人生に散々苦悩し抜いた先に、見えてくる本当のもの。

    どんなことがあっても、人間は生きて生きて、生き抜いていかなければならない。

  • 全体的に重い内容ですが、非常に繊細な内容でもあります。
    重い。
    辛い。
    悲しい、悲しい、悲しい……。
    だけど、ラストは温かかったです。
    犯罪者と友達でいられますか?
    凶悪犯が見せる優しさなどを信じられますか?
    など、色々と問いかけられてる感じです。
    泣きそうなのを堪えて読みましたが、結構勇気のいる本だと思います。

  • 親友が、少年時代に残忍に人を殺した過去のある殺人犯だったら。それでも友達でいれるのかという重いテーマ。人を殺した罪を償うことなどできるのか。成長し校正した青年と過去の過ちを後悔し苦しみ泣き叫び懺悔の中で生きている。それを知ったら許せるだろうか。そう問われる

  • テンポのいい、すーっと読んでいける文の流れはいつも通りで、心地よくどんどん読んでいけてしまう。
    少年犯罪、特に残虐な殺人を犯した過去がある人間に、それとは知らずに出会った人が、過去を知って悩み、苦しむ行動の様子がよく書かれている。誰でもこのような対応をとってしまうだろう。かつての少年の更生に関わった人間も、母親のように心配してしまう気持ちはよくわかる。
    ただし、この更生に関わった人間の、ある意味ではまっすぐな思いが、結局少年本人を過去に縛り付けてしまう結果になったのは、皮肉だなと思う。

  • 自分が同じ境遇だったらと強く考えさせられるテーマ。どんなに改心がみられて良い人に感じても、会って数日で親友と呼ばれ過去を打ち明けられそうになったら私なら受け止めきれないだろうな。その点、この主人公は非常識で愛想のない鈴木を気に掛けたり、自分の過去の過ちを後悔し続けたり、ジャーナリスト志望の現状受け入れられない系にしては出来た人格だった。弥生(?)のヌードデッサンの経緯は謎。場面転換の描写がなく戸惑う事が何度かあったが、それを込みにしても引き込まれる作品。

  • 最後の9頁に収斂させるために、それまでの全てが書かれてる。SNSとか、マスコミとか、自粛警察とか、関係ない第三者の興味が、凄く残酷な武器になるなと改めて感じた。

  • なんとも重いテーマ。話の続きは知りたいけど、怖くて一気に読み進めるわけにはいかなかった。益田がどうするのだろうと思ったけど、結局とても納得できる終わりになっている。作者の緻密な想像力に敬服する。実際に自分の身に起こったらどうするだろうか。私は想像力がなくて鈍感力があるから意外と平気かもしれない。弥生がチョーかわいそうだと思ったけれど、最後に救われたようでよかった。やっぱり誠意は通じるんだなぁ。私はそこまで本気で生きてないかも。

  • 映画の予告を偶然見て、これは活字で入らないと勿体ないと、 直感的に購入。出張時はいい時間潰しで読むのだが、日本にいるとなかなか開けず、読了までにえらい時間を要した。けしつまらなくてはないんだけどね、、、汗

    メインテーマ青柳よりも、なぜか僕は元AV女優の同僚方に惹かれてしまった。普通に僕も見てるけど、皆さんその過去をバレないように、ひた隠しにして生きているんだろうね。世の中にはたくさんそういう方がいるわけで、もし自分の周りにいたらとか、もし自分の身内がそうなったら、、、とか、何故かそういう視点で読んでいた。新聞の一面載る猟奇的な事件よりも、リアルを感じた。

  • 映画を先に観てしまい
    原作から読めばよかったと後悔。

    過去に殺人を犯した人が
    友達としていて
    自分だけそれを知っていたら?

    平然といられるだろうか?

    重たい作品ではあるが
    とても考えさせられる作品。

    薬丸岳さんの作品、気になりだしました。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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