D坂の殺人事件 [Kindle]

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  • 2016年3月15日発売
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感想・レビュー・書評

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  • エモい!「感情が動かされた状態」をいうが、ピッタリの単語。私と明智小五郎が向かいの古本屋を見ながらコーヒーを飲むが、何だかおかしい。古本屋の奥さんが不在なのか?確認しに行くと、身体中痣だらけで死んでいた。限りなく密室に近い状態であった。古本屋に出入りしていた者を調べるが決定打がない。容疑者は夫、向かいの蕎麦屋の旦那。蕎麦屋の奥さんもDVの跡がみられる。私と明智の推理により犯人は分かったが、最後にはこれまでで初めて経験した動機、殺人。江戸川乱歩の底なしのグロテスクな雰囲気のミステリー作品に脱帽しかない。⑤↑

  • LINEノベルにて読了。掌編クラスのごく短いものから中編級まで、バラエティに富んだチョイスで様々な大乱歩を楽しめるが、ミステリ乱歩を求めるならやはり「石榴」か。「防空壕」は戦時の緊迫した雰囲気が息苦しくさえあるが、おかげで予想のつかないラストに仕上がっている。

  • 短いのでサラッと読めた。まさかのオチで驚く。明智小五郎初登場作品らしい。

  • スマートなオチに脱帽。
    ヒントも出ていたのに、全く気づかず。
    サドとマゾのマッチングが近所で上手いこといったもんだなぁ、というツッコミはさておき。
    どんでん返し的なミスリードがあるのも面白い。
    古い作品と思わず、ぜひ読んでみてほしい。

    目撃証言に対する信頼性の問題は、認知心理学で展開されてきた。
    例えば自動車事故の動画を見せ、車のスピードについて尋ねるとき、質問の仕方を変えるだけで証言は全く異なってくる。
    ストライプが障子の格子と重なり合って一方の学生には白、他方には黒に見えたという説もなかなか面白かったが(現実的に無理があるのは置いておいて)、それをあっさりひっくり返して、しかしそこにも今作の重要なテーマが隠れていることを強調した。
    ネタを惜しまずふんだんに使い切る、江戸川乱歩の筆力にあっぱれ!

  • 客観的証拠に基づく推理を重ねていくタイプの賢い人と、人の心理に踏み込んでいくタイプの賢い人っているよなあ。探偵(?)明智小五郎は、後者のタイプ。 自分がthe・推理小説を読むのはこれが初めてで、推理とは客観的証拠を積み上げることだと思っていたが、「証拠なんて解釈でどうとでもなる」と乱歩先生に見事に一蹴されてしまった…

  • 明智より「私」の推理の方が探偵感があった。でも、散々事件を解決してきた明智が「物質」よりも「心理」を捉えようとしてるのが新鮮。心理と探偵って相性悪いんだなぁと思った。やっぱり推理ってどこか数学的な緻密さと絶対的な正しさがないとカタルシスがあんまりない。

    ただ、明智のキャラの描写力はやっぱりすごい!私もいつかホームズや明智みたいな名探偵を生み出してみたいなぁ。

  • 他の話でもそうだけど、語り部が意外と読者に話し掛けて来るよね。

  • まず私がこの「D坂の殺人事件」という作品を選んだ理由は、少し怪奇的な題名に惹かれたからです。江戸川乱歩は推理作家で、三重県名張市に生まれました。本名は平井太郎といい、早稲田大学政経学部の出身です。ペンネームの江戸川乱歩はアメリカの作家エドガー・アラン・ポーからとったと言われています。江戸川乱歩という作家のことはもともと知っていて、今までに「人間椅子」を読んだことがありました。D坂の殺人事件も人間椅子と同じミステリーのような雰囲気があるように感じました。『D坂の殺人事件』は乱歩自身も代表作として自負していて、1925年に『新青年』に掲載されました。この作品の舞台となったのは東京都文京区千駄木の団子坂だそうです。登場人物は私(主人公)、明智小五郎、古本屋の妻、古本屋の主人、そば屋の妻、そば屋の主人、アイスクリーム屋の主人、菓子屋の主人、工業学校の生徒たち、小林刑事です。本書は、主人公がカフェでコーヒーをすすっている場面から始まります。しばらくすると、主人公と明智小五郎が合流します。二人が楽しく談笑していると、カフェの前の古本屋のふすまが閉まり、誰も店番をしなくなりました。異様な雰囲気を感じた二人は、古本屋に駆け付けます。しかし、駆け付けるのが一歩遅かったのか、そこには、古本屋の奥さんの遺体がありました。その後、犯人の目撃者は、事情聴取で犯人の特徴を話します。主人公はその証言を聞いて少し引っかかる点がありました。それは明智小五郎の着物と犯人の特徴が似ているところです。しかし、様々な操作を進めると犯人は明智小五郎ではないことが分かりました。何と犯人はそば屋の主人だったのです。私は、この終わり方に非常に衝撃を受けました。人間椅子の結末は個人的にモヤモヤが残される感じであまり好みではなかったので、D坂の殺人事件の結末は王道なミステリーの結末という感じがしました。展開も非常にテンポよく進んでいき、読みやすかったと思います。私はこの作品で印象に残ったセリフがあります。それは物語内で明智が放った「物質的な証拠はあてにならない」というセリフです。私は、今までに証拠がないと訴えられないという話や、逮捕状が出せないという話を耳にしたことがありました。そのくらい物質的証拠は事件解決において絶対的なものだと考えていました。しかし明智はその論を覆す発言をしていました。個人的に、この作品で作者が伝えたいことは「論より証拠」ならぬ「証拠より論」という事なのだと考えました。

  • これが明智探偵のデビューかあ。

  • <明智小五郎>が初めて登場した大正14年の作品です。東京D坂(団子坂)で殺人事件のあった当時、煙草屋の二階に下宿していた貧乏青年の明智君が、お馴染みの<アラン・ポ->や<コナン・ドイル>の作品を引き合いに出し、事件解決の糸口を示唆するところは、江戸川乱歩の分身としての登場が窺えて愉快でした。不可能犯罪の様相を見せ始めたこの事件は、<マルキ・ド・サド>の歪んだ世界に迷い込んだような、悪徳に満ちた結末へと向かうのでした。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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