中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • Kindleで購入。戦略研究家という肩書はかなり珍しい。
    語り口は「戦争にチャンスを与えよ」と同様に平易であるが、本書あとがきを読む限り、翻訳者がきわめて優秀だからという気もする。
    「大国は小国に勝てない」「中国に対しては自ら何もしかけないのがよい」など指摘はするどく、根拠の説明も明快である。
    六本木でロシア人をナンパしているエピソードがはいるなど、随所に女好きな側面が現れており、一緒に飲んだら楽しそう。

  •  訳者あとがきによると、著者のルトワック氏はルーマニア生まれのユダヤ人でイタリアで育ってイギリスで軍属して修士を修めてアメリカで博士号を取り、さらに英軍に従軍したりイスラエルやアメリカでも軍属アドバイザーとして活動し、現在はシンクタンクの戦略国際問題研究所の上級顧問、…とまあ凄い経歴の持ち主だ。本書は2015年10月に来日した彼に訳者の奥山氏がインタビューした内容を編集したものとのこと(対談形式ではない)。

     著者曰く、中国は2000年代に入ってからの15年間で3回も外交政策の基本方針を変更しているとのことで、その背景や政府(もしくは習近平個人)の判断について論説している。そして最後にはもし中国が尖閣諸島に上陸占拠するような事態になったら日本がどうすべきか、そのためにどんな準備をしておくべきか提言を行っている。

     本書で著者は中国は戦略を誤っていると明言しているが、決して反中というわけでもない。著者は中国が犯している誤りを中国特有のものとは考えず、ある条件を満たした国がしばしば陥るいわば普通の誤りであるとみなしている。その歴史的な前例として日本やアメリカも挙げられている。ロシア、イギリス、フランス、ドイツなどの歴史とも比較して分析を試みている。

     そのため本書の解説は中国だけに限った議論ではなく、もう少し普遍的な戦略論として語られている。そのポイントは終章で訳者によってまとめられているが、「逆説的論理(パラドキシカル・ロジック)」「大国は小国に勝てない」「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」「戦略文化というパラメータ」などのキーワードが挙げられる。

     著者が論じる「戦略」は、物理的な戦争の話よりむしろ戦争に至る前の外交での話がメインで、軍艦や戦闘機といった軍事力やそれを買う経済力とは別次元の「国力」が存在することを指摘する。中国は軍事力や経済力を身につけたが国力はまだ未熟で、しかし本人はそれを理解できていないというものだ。斬新であるが違和感のない、説得力が感じられる中国論である。

     さて、中国がなぜああいう行動に出るのか分析できたところで、ではどう付き合えばいいのかという話になるわけだが、残念ながらその点はさほど目新しいものはないようだ。いざとなったら対抗できる軍事力を自前で(日米安保に頼らず)用意しておくべきという程度のことしか言っておらず、そりゃまあそうだろうけどそれも難しいんだよね、と感じた。

  • 隣国にして大国の、中華人民共和国。
    経済発展によって国力が大幅にアップしたことと並行して、尖閣問題や反日運動など、日本にとって好ましくない国際運動が起こっているなと、感じています。

    この本は、長年に渡りアメリカ他複数の国で、安全保障を主としたコンサルティングを行ってきたという、「戦略論」の権威による一冊。

    中国は21世紀に入ってからの短期間で、国家として3つの異なる対外的な戦略を採用しているとし、その戦略を時系列で「1.0」、「2.0」、「3.0」と名付けています。

    各戦略を中国という国の特徴を踏まえて解説し、「1.0」は有効だったがそれ以降の戦略は失敗だったと、断じています。
    その上で、来るべき「4.0」への転換をにらみ、日本国としてどのような対応をとるべきか、提言しています。

    周辺国、特に東南アジア諸国へ圧力をかける中国に対し反中国包囲網が形成され、その結果中国が国家戦略を変えざるを得なくなったという部分については、ニュース等の情報から感じていたことを、すっきり説明してもらえたなと感じました。

    逆に意外だなあと感じたのは、組織として国を運営している共産党の体制は危ういものであると、著者が評価している点。
    そして現在のリーダーが進める反腐敗運動が、その体制の崩壊を推し進める方向に、働いているという点。

    外部からの分析のため、視点として足らない部分はあるのかもしれません。
    しかし今後、日中関係がどのような方向に進むのか、改めて考えさせられる内容でした。

    「ところで、日本という国の”国家戦略”ってどうなっているのだろう?」と考えさせてもらえたことも含めて、大きな示唆を得られた、一冊でした。

    『要点解説 90分でわかる! ビジネスマンのための「世界の宗教」超入門』井上順孝
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4492223320
     
     .

  • 近代中国が自身の立ち位置を確保するために如何なる戦略を立てて、どう振舞ってきたのかを優しく解説してくれる良書ですね。非常に面白く読ませてもらいました。

    頭は悪く無い筈なのに大きく思い違いをしていて、空気を読むことが出来ない駄々っ子のごとき中国とどう相対していけばいいのか、いいヒントを頂きました。

    尖閣に進行してきた場合の対処法なんて、すごくいいですね。回りの連中と連携して取り囲んで、網を絞る…対中国包囲網みたいな冷静な方法ですね。
    安倍総理のアジア外交って、そういう事なんじゃないかなぁ~って何かキラリと光りました。

    とても優しい文章ですし、読みやすいのでお勧めします。

  • 【地政学・戦略論の大家による最新の中国分析!】中国は今後どうなるのか? 暴発する中国という問題にどう向き合うべきなのか? 切れ味抜群の中国分析。日本オリジナル版。

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著者プロフィール

ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級アドバイザー。戦略家であり、歴史家、経済学者、国防アドバイザーとしての顔も持つ。国防省の官僚や軍のアドバイザー、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを務めた経歴もあり。米国だけでなく、日本を含む世界各国の政府や高級士官学校でレクチャーやブリーフィングを行う。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。著書は約20ヵ国語に翻訳されている。邦訳には『クーデター入門』(徳間書店)、『ペンタゴン』(光文社)、『アメリカンドリームの終焉』(飛鳥新社)、『ターボ資本主義』(TBSブリタニカ)、『エドワード・ルトワックの戦略論』(毎日新聞社)、『自滅する中国』(芙蓉書房出版)、『中国4.0』(文春新書)、『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書)がある。

「2018年 『ルトワックの”クーデター入門"』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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