合本 64(ロクヨン)【文春e-Books】 [Kindle]

著者 :
  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 暗く、地味で、濃厚で、重くて。
    横山秀夫の最高傑作だと私は思ってる。普通の小説ならクライマックスのシーンが何度もある。彼の作品で感情移入できる点として、主人公の思い通りにならない事ばかりって所ではないだろうか。登場人物がそれぞれの事情を抱え、それぞれの立場から主人公の意志を妨げる。社会・会社では当たり前の事を小説にすると華がなくなりそうだが、そこが彼の作品の魅力にもなってるのではないだろうか。
     読み返すの三回目だが、何度読んても面白い。

  • 面白すぎました。Audibleで聞きましたが、没入感が半端ないです。警察だけでなく会社組織ではありがちなセクト主義を脱皮していく心の葛藤はサラリーマンの苦悩をよく表しています。
    ストーリーもさることながら、こういった内面が深く描かれているので、読みごたえがあります。
    あと、読後は、必ず妻に優しくなれますね。

  • 犯罪事件を解決するよくある刑事モノかと思いきや、地方警察の広報が中心のあまり見かけない設定。全く予想できないストーリー展開に引き込まれ、一気に読了。
    基本となっているのは誘拐事件だが、それ以外の謎を追いかけていくうちに誘拐事件の謎にたどり着く。無言電話の真実を知った時は鳥肌がたった。
    間違いなくおすすめの一冊。

  • 二度目の誘拐事件が発生し、東京から乗り込んできた有名記者たちに記者会見の舵取りを奪われ小さくなっている地元の記者たちを、それまでの敵対していた関係にも関わらず「ウチの記者たち」と呼ぶ。「ウチ」という言葉の意味を考えさせられる。

  • 警察内部のゴタゴタばかりで
    つまらない、眠くなる
    途中でリタイア

  • 9月から横山秀夫氏作品を6冊(連作短編集4冊、長編二冊)続けて読んでます。内連作短編集1冊と長編2冊は再読、この作品は10年振りの再読でした。
    読み応えたっぷり、ちょうどわたし自身仕事にむしゃくしゃしている時期でしたので、主人公三上義信に成り切って読んでいました。読み終えたあと、この作品から再び力をいただきました。再読してよかったです。
    ただ、初めて読んだ時と同様に、“あゆみさん“のいまが気になって仕方がありません。

  • タバコくゆらすガラの悪い中年刑事たちの署内の派閥やパワーバランス云々を描くハードボイルドものは好きではないということが分かった。

  • 再読。そして初D県警シリーズ。何となくオチは知っていたけど、忘れていた部分もあり「こんな場面あったっけなぁ」「あ、これがあのシーンか」とぼんやりしながら読み進めた。そうしたら、やっぱりとんでもない名作だった。星5じゃ足りない。
    全ての場面が途轍もなく重いのに、ページを捲る手が止まらないんだ。刑事部vs警務部という内部の単純構造だけでなく、「窓」の開放を求める記者クラブとの共存や民間人との関係構築について、広報官の目を通してずっとずっと考え込んでしまった。記者室に飛び交う怒号や指揮車での追跡シーンなんて、現場の緊張感を読んでいるこちらでさえびりびり肌で感じるほど。殆ど強引にあの世界に引き摺り込まれてしまう。別に物凄くいい男じゃないのに、刑事としても広報官としても中途半端なのに、醜形恐怖症の娘への対応なんか最悪中の最悪なのに、どうしようもなく三上に入れ込んでしまう。
    三上の必死の呼びかけを、娘を殺した犯人を捕まえるどころかPR要請までしてきた警察が「父」になった瞬間を、その声を、顔を、涙を、雨宮は受け止めた。だから彼を外道にしたのが三上であったとか、彼の言葉や言動が雨宮と幸田を復讐に走らせたとか、そういう後ろ暗い解釈はしてほしくない…かも。三上夫妻が心穏やかに過ごせる日は来るのだろうか。あゆみの「不在」を受け入れられる日は来るだろうか。来て欲しいような、来て欲しくないような…勿論あゆみには戻ってきて欲しいけど、でも戻ってこないことが彼女の何よりの幸せであり、帰るべき場所が家庭でないというのが真実ならば…。

    無言電話の真相は凄まじい。衝撃も、それを読者や三上の前に露わにする叙述も。これを超えるミステリのオチを未だに読んだことがない。

    男世界の中、数少ない女性キャラの魅力も際立つ。三上はもう少し「女」の力を信じてみてもいいのでは…?

  • 64(ロクヨン)

    著者 横山秀夫
    文藝春秋
    2012年10月25日発行

    FUTANさんが日記に書かれていたので読みました。
    文庫版が人気で予約がいっぱい、単行本を借りました。
    文庫だと上下2冊ですが、単行本は1冊。650ページもある。この長さ、いかにも本屋大賞候補作らしい。注意深く読めとのFUTANさんによるアドバイス、注意深く読んでいたら時間がかかりました(^_^;)

    「半落ち」や「震度0」などを書いた横山秀夫のミステリー。架空の地方中堅都市、D県D市にあるD県警。この小説によると、刑事部と警務部は対立関係にあり、刑事部がエリート、警務は直接の捜査はしない。主人公の三上は、刑事畑だが、現在は配置転換で2度目の警務部広報官。広報官として、記者クラブのマスコミ各社と対立、刑事部からは見下されている。本人も刑事部に戻りたい。そんなシチュエーションでの展開。

    ミステリーはあまり読まないので詳しくはないが、こういう刑事、探偵ものって、いろいろ登場人物がいて、終盤にその中から意外な登場人物が意外なところに姿を見せ、点と点がつながる、というパターンが多いと思う。しかも、その意外な人物は、インパクトが弱いことが多く、それだけに結びついた時に意外性がより強くなる。ところが、このミステリーにはそういうのがほとんどない。もちろん、大きな点と点は結びつくが、それは最初からメインの点と、終盤で出てくる中ぐらいの点が結びつく程度であまり意外性がない。

    この小説、主人公はタフだが内面は繊細という描き方が、ハードボイルド的でもあるが、エンターテイメントというより純文学的な要素が結構ある。また、主人公の推測→それが謎解きの正解、が会話で明かされていくのではなく、思考で明かされていく。・・・だろうか、・・・・だろうか、と思考描写が非常に多く、それが少し違う形で決着(正解)する。

    久しぶりのミステリー、たっぷりいただきました。

    おまけ:日本語で気になるところが少々あり
    「記者対策のコツをご教授願いたい」・・・「ご教示」では?
    「山の稜線」・・・これはダブル表現では?稜線、または、山稜、とすべき?
    「一四年間継続捜査している捜査の、ほんのさわりの部分しか三上は知らない」・・・さわりって、核心部分のことを言うから、「ほんの入り口」とか「浅い部分」とか「表面」とかにすべきでは?
    その他、「姑息」や「確信犯」の使い方も、ややグレーでした。

  • 警務部と刑事部。キャリア組。広報官。鬼瓦…もう少しいい男を想像していたが
    松岡 かっこいい。
    登場人物が少なくないので、ある程度一気に読まないと。
    少しづつ読む私は「誰だっけ?」ということになってしまいました。
    もう一度読みたいと思う本でした。ありがとうございました。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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