言ってはいけない―残酷すぎる真実―(新潮新書) [Kindle]

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  • 「言ってはいけない 残酷すぎる真実」橘怜

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    この社会にはきれいごとがあふれている。人間は平等で、努力は報われ、見た目は大した問題ではない―だが、それらは絵空事だ。進化論、遺伝学、脳科学の最新知見から、人気作家が明かす「残酷すぎる真実」。読者諸氏、口に出せない、この不愉快な現実を直視せよ。
    「BOOK」データベースより
    ---------------------------

    冒頭から「この本は読むと不愉快になるよ」と記載されてまして、『えー、そんなことあるー?』と思いながら読みました。

    うん。
    うむ。

    とても興味深くて面白いし、知識として「へぇぇそうだったのかー」と思ったところもすごく多かったんだけど、読み終わった今、心がとてもザワザワ、フワフワしている。。。
    確かに、爽やかな読後感ではないな。

    心がザワザワしてる理由は、
    なんていうか、今がいいとは思えないけど、かといって、この言っちゃいけない事柄を大っぴらに社会のまな板に載せたとしても、現状の「タブーはタブーとして伏せとく」以上の最適解を、私は考えられなかったからです。

    この本では統計や確率的な話をベースに、
    ・頭の良し悪しは遺伝する
    ・犯罪者の子は犯罪者になる
    ・精神的な部分も遺伝する
    など、現実ではぼやかしてきてることに切り込んでいます。
    こういう事実は、差別やいじめの原因になりやすいし、努力を無意味化するものでもあるから、安易に社会の常識化はできないわけですよね。

    この、ぼやかしてる部分をつまびらかにしたとして、こういう繊細なデータを正しく偏りなく理解し、キレイな形で使いこなせるほど私たち人類は賢くもないし清らかな精神も持ち合わせてないだろうなぁ、残念ながら。

    統計とか確率とか難しくて、私も読んでてよくわからない箇所があったし、あくまで全体の統計とかパーセンテージとかなので、個人がどういう子を産むかの確率とは別モノなはずだけど、なんか読んでるとそういう点もゴッチャになっちゃって。。。
    数値を正しく読むって私にはむずかしいわ〜〜(´・_・`)

    みんながみんな、分析を数値上の統計だときちんと理解できて、自分の近くの人に対してこの数値を安易に当てはめたり、数値を悪用したりしないならいいけど、現実はそうじゃない。
    育ちや外見で人を見下したり、差別意識みたいなのは誰でももってしまう。
    私だって、腹がたつヤツとか、会話にならない人とかを相手にしてると「この愚か者め!」って心の中で罵ったりすること、ありますしね。そういう悪意に、このデータは簡単にのっかるなー、と。
    だから、人の心に悪意っちゅうもんがある限り、この統計を上手に使うことはできないんじゃないかな、と思いました。


    心がなんだかフワフワする理由は、この本を読んでると自分という存在も結局遺伝子レベルで操作されているんだな、という所在無さを感じたんですよね。
    自分の思考や行動など自分で決めてると思ってるけど、全然違うんだな、と思い知ったというか。。。

    この本では、家庭での教育や親のしつけなどの生育環境は子の成長に大して意味がない、と言っちゃってまして。。
    マジかよ、ってな感じです。

    まぁ色々なデータで説明しとるんですが、たとえば、まったく別々の生育環境で育った一卵性双生児でも、結局同じような人生を歩んだりすることがすごく多いそうなんです。(感想なのでざっくり書いてますが、本の中ではもう少しちゃんとデータで示してます。)
    どんなに素敵な里親で育っていても、遺伝的に犯罪を犯しやすい傾向があれば、双子は同じタイミングで非行に走ったりするし、喫煙するタバコの銘柄まで一緒だったりするし、娘の名前が一緒だったり。。
    なんか、そういうのいっぱい説明されると、私という存在も私の思考も、結局遺伝子レベルで決定されてることをなぞってるだけなのか、と思い知らされたり、
    現状リアルタイムでやってる子育ても、遺伝子で決まってるなら、もう親がどうこうじゃなく、なるようにしかならないんじゃないの、という残念感を感じてしまうというか。。

    部分を切り取っての感想なんで、これだけ読んでも正しく理解できないと思います。正しいデータとか気になる人は読んでみてくださいな。
    そして、感想を聞きたい。


    あと、数値やデータについて思うこともいくつかありました。この本、統計の話がメインなので。
    数値って数値自体には意味がなくて、そこに解釈や味付けを施すのは、そのデータを扱う人間です。
    だから、アンケート結果や、テレビの街頭インタビューも、編集者の切り取り方や思いで、容易に恣意的に情報を操作できる。
    データ切り取るっていう作業だけとっても、その切り口に恣意性がどうしても入ってしまう。

    仮説たてて仮説を元に調査して、調査結果を分析するってのも、なんかロジカルで賢い感じはするけど、調査する人の思考バイアスありきなのか、と思っちゃって、じゃあ分析ってどこまで信用できるもんなんだろな、と思ってしまったりもしたんですよね。。
    こないだ仕事でアンケート分析したんですけど、全過程で私の思考バイアスありきじゃん、と改めて気付いて、考察とか私ごときがするのは違うんじゃないかな、と思っちゃって。
    生データを各自見て感想を言い合う方がまだまっとうなのかな、と。
    (まぁそれが時間的にも難しいから、現実は第三者の恣意性ありきで、まとめるってことになるんだろうけども。)
    もしくは、多角的に分析できるツールも今はあるから、生データを放り込んで、ツールで各自が好きな角度で切り取るとかね。

    もちろん、その恣意性をできるだけ省くってのは前提だろうし、統計上手?!な人はそこらへんとうまくやれるんだろうけど、なんか難しいなーと思って。
    数値は無味無臭だけど、そこにニオイや味付けをするのは、データを扱う人の思考ありきなんだな〜〜って体感した次第です。



    なんていうふうに、書ききれないけどいろんな意味で心を揺さぶる内容でした。
    いい悪いは置いといて、心揺さぶられた感は今年の書籍ベスト3に入りますね。
    是非、読んでみてください。

  • センシティブな内容でかつ面白い本。この本を読んで、遺伝がすべてを説明するとは考えないことが大切だと思った。佐藤優さんが『悪の進化論』の中で本書について、優生学的思想を放っていると書いていたのが印象に残った。
    あとがきの、分離脳の話が大好き。橘玲さんのブログであとがきは読めるので、ぜひみなさん読んでみてください。
    印象に残ったところメモ。
    - 知識は遺伝する上に、知識社会では知識がある人間が上位に立つ
    - アジア系はSS型がおおくうつになりやすい遺伝子もち、不安感と引き換えに高い知能を手に入れた。このことと東アジアの国々で封建的な社会制度の発達や儒教の浸透が関連している可能性。
    - 嫉妬という強い感情は、他人の子供をそうと知らず育てることによる損失からきている。
    - オルガズムにより子宮が収縮しスポイトのように精子を吸い上げる。レイプ時にはこれがない。
    - 話しているときに相手の目を見る人は知的な印象を与えるばかりか、実際に知能が高い。
    - 子供の人格や能力・才能の形成に子育てはほとんど関与できない。親の役割は子供の持っている才能の芽を摘まないような環境を与えることが重要。

  • 何だったかの本で佐藤優の書評を読んで、そこに紹介されていた「6歳で数ヶ国語をあやつり、11歳で Harvard 大学に入学した神童」のエピソードが衝撃的だったので、買ってみた(佐藤優と違って、ネタバレはしないでおく)。しかし、面白かったのはそのエピソードくらいで、あとはちょっと物珍しい社会学の言質を雑多に取り集めただけという印象。

    前半こそ、行動遺伝学とやらの知見をきちんと統計的に正しく処理された(著者も「擬似相関を排した」と明確に書いている)データに基づいて説明していたものの、後半に行くにしたがって非科学的になり、擬似相関どころか、統計的に有意かどうかも判らない相関に基づいて議論を展開している箇所が目立つ。あとがきに至っては、無茶苦茶だ。ちょっと幅を広げ過ぎたんじゃないかなぁ。

    もっとも朝日新聞が『ひとが嫌がるようなことをする表現の自由はない』と書いたことに反発して、とにかく常識に反するような学説を片っぱしから集めて書いてみた、というレベルの本らしいので、まあ、どっちもどっちだ。

  • 口にし難い残酷な真実を、世界中の論文を引用して示す。人種による知能の違い、遺伝の影響の大きさ、容姿のタブーなど。
    皆薄々気づいてはいるが、ポリコレやハラスメントなどを考慮して言いづらいことを、データをもとにズバッと述べるのが痛快。

  • 努力すれば誰しも報われる…と言うような聞こえは良いが本当にそうなのか?という問題などに実験データや統計などを示しながらどんどん切り込む。遺伝のタブー、美貌格差のタブー、教育のタブーなど、どれも平等平等!と叫ぶ人から叩かれそうな内容ばっかりで面白かったわ。データをどこまで信じていいかはわからんけど、聞こえの良い欺瞞に溺れるよりはこういう知識がある方が自分のためになるかなーと思った。ちなみに友達は小説系を読まないので僕が貸してお互い補完。

  • 子育てや親の教育が子供にほぼ影響を与えないと言うのは非常に興味深い事実。それよりも大事なのは環境。子供が好きなことをとことん追求できる環境を整えてあげること、そしてそれを邪魔せず尊重することが何より大事なのだと感じさせられる。

  • 色々なタブーに切り込む話でしたが、やはり一番に注目される所は、知能や性格に関わる遺伝の影響と、後天的な教育や子育てとの関係だと思います。知能や性格の結構な割合が遺伝で決まる、知能に生まれつき差があるということは、格差を嫌う現代社会では差別を防ぐためにこのような話がタブーなのは理解できます。しかし現実が不平等であれば、それを綺麗な平等論で覆い隠すことは一見美しいかもしれませんが、真の解決からは程遠いでしょう。
    不利な立場に置かれている者としても、どうにもならない部分を知るほうが、受け入れた上で進み様もあるのではないかとも思います。しかしだからといって全人類が差別の心配なくそれを享受できるかと言えば、今の知能主義が全盛の社会ではほぼ不可能であることは想像に難くありません。ただそれらを踏まえた上でも個人的には知ることができて良かったと思えました。

  • 冒頭に「これは不愉快な本だ」と前書きされているが
    たしかに読んでいる最中は、かなり引き気味に読んでいた
    語られる大項目は以下の3個
    「努力は遺伝に勝てないのか」
    「あまりに残酷な美貌格差」
    「子育てや教育は子供の成長に関係ない」
    大項目からしてなかなか刺激的な内容です・・・が語られる論拠が
    どこかの誰かの論文に◯◯とある
    この実験で◯◯という結果がある
    といったエビデンス(証拠)が出ているから◯◯の考え方に行き着きます。
     話の流れが上記のように展開していくので、どうしても胡散臭さが付きまといました

    作中にもあるが、耳聞こえがいいものを聞いて、嫌なもの不快なものからは
    「無意識」に否定したり、聞こえないふりをしていたのかもしれない
    「真実」かどうかは賛否両論あると思う
    特に本書に書かれているような「遺伝」によりある程度人生が決まるのは
    どうしようもないことなので受け入れられない部分もあるだろう
    ただ、これは善悪の問題ではなくヒトが持つココロの持ちようだと思える
    「足るを知る」という考え方が腹落ちしている方なら遺伝どうこう、容姿は
    取るに足らないどうでもいいことだ

    「子育てや教育は子供の成長に関係ない」
    子供が親のいうことをきかないのくだりは興味深かったし
    同じ環境で育った兄弟でも性格や考え方が違う理由には納得いった


    --------------------------
    作中気になったフレーズ
    --------------------------

    ひとは幸福になるために生きているけれど
    幸福になるようにデザインされているわけではない

    集団にとって不愉快なことを言う者はうとんじられ、排斥されていく。
    見たいものだけを見て、気分のいいことだけを聞きたいのだから、
    知識人(賢い人達)が知らないフリをするのは、正しい大人の態度なのだろう

    不吉なことが起こると、人々は無意識のうちに因果関係を探し、
    その原因を排除しようとする。異常な犯罪がなんの理由もなく行われる、
    という不安にひとは耐えられないから、未成年者が免責されていれば
    親が生贄になるのだ。

    よくある誤解は、遺伝率を個々の確率と取り違えることだ。
    このことは、遺伝の影響を料理における砂糖のようなものだと分かり易い
    遺伝率が高いほど環境の影響は後景に退き、遺伝の影響が強く現れてくる

    私たちは、運動能力や音楽的才能に人種間のちがいがあることを
    ごく普通に受け入れている。
    「黒人の並外れた身体能力」「天性のリズム感」--------------------------

    男と女は別々のものを見ている
    男性は空間把握や数学的推論の能力が発達し、女性は言語の流暢性を高めた
    男性の脳の特徴は「システム化」で、女性は「共感」に秀でている
    プログラマの多くが男性で、看護師に女性が多いのは
    脳の生理的な仕組みによって「好きなこと」が違うからだ。

    私達の社会に必要とされているのは、男女の性差をイデオロギーで
    否定するのではなく、両者の違いを認めた上で、男も女も幸福な
    人生を送れるような制度を目指すことだろう

    親子の遺伝的関係
    遺伝が半分、育ちが半分
    子どもたちは自然に男女に分かれて年齢のちかいグループを作り、
    年上のこどもが年下の子供の面倒をみることで親の肩代わりをする。
    思春期を迎えるまでは、この「友達の世界」が子供にとってのすべてだ。
     「子供が親に似ているのは遺伝によるもので、子育てによって
    子供に影響をおよぼすことはできない」
    この考え方は賛否両論
    ひとは社会的な生き物で、群れから排除されてしまえば生きていく術がない。
    どんな社会でも「村八分」は死罪や流刑に次ぐ重罰とされた
    これは子供も同じで「友達の世界」から追放されることを極端に恐れる
     勉強、遊び、etc子供集団のルールが家庭でのしつけと衝突した場合、
    子供が親のいうことをきくことは絶対にない
    子供が親に反抗するのは、そうしなければ仲間外れにされ
    「死んで」しまうからなのだ。

    「親は無力だ」というのは間違いだ。
    なぜなら、親が与えることができる環境(友達関係)が子供の
    人生に決定的な影響を及ぼすのだから。

    最も効果的に相手を騙す方法
    自分もそのウソを信じることだ。カルト宗教の教祖が信者を惹きつけるのは
    自らが真っ先に「洗脳」されているからだ。
    社会的な動物であるヒトは上手にウソをつくために知性を極端に発達させ、
    ついには高度な自己欺瞞の能力を身に着けた。
    これが正しい考え方だとしたら、暴力や戦争をなくすために理性や啓蒙に
    頼ったところでなんの意味もない。
    自己欺瞞は無意識の働きだから意識によって矯正することはできず、
    他人が欺瞞を指摘すればするほど頑なになっていく。

  • エビデンスに基づいた内容で語られていたのでとても面白かった。世間の風潮やポリコレ的に言いにくいことをストレートに表現されていて、「たしかに!」と納得だった。
    今は人類皆平等だったりSDHなど何かが悪い原因は環境であり、個人の持って生まれたものは関係ないと言った風潮があるけれど、改めて遺伝による個人差も大きいのだと感じた。
    とはいえ、それだけでレッテルを貼って差別することは確かに良くないことだし、環境を整えることが全く無駄というわけでもないので、抗いたいとも思った。

  • 社会科学を取り扱う本で多い気がするのですが、難しい気もするのですが論文においては条件と適応して良い範囲が重要だと思われるので質的な話なしにとりあえず論文を並べるというものになりがちなのは感じました。サイコパスの本を書いた人もそうですが、こういうジャンルの本がどの辺から情報を持ってきているのか知るのには最適と思います。
    とはいえ集団社会化論の文献はとても興味深く、読みたいと思いました。また、性について取り扱った部分で、全体の理論を個人の思考レベルにまで落としたアプローチはとても良いなと感じました。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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