沈黙の春(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 農薬の過剰な使用にいち早く警鐘を鳴らした古典的名著。池上彰の「世界を変えた10冊の本」で紹介されていて読むことにした。
    化学薬品を過剰に使うことがなぜよくないのか、どんな結果をもたらすか、について良くわかった。
    また著者は絶対に農薬を使うな、と言っている訳ではない。安易に使わずよく理解した上で最低限使うべきだ、と言っているのだ。

    生物多様性を守るためにも、この本は心に響いた。

  • この本は、化学薬品の恐さを説くだけに留まらず、刊行から50年以上が経った今でも「あなたはこれからどのように生きるのか?」と、世界中のほとんどの人に向けて基本的な価値観を揺さぶっている。そういうテキストの原典なのだと思う。

    ある程度の年月が過ぎた古典は、一段普遍的な視点で読むことができ、重要だと思う解釈が巻末の解説に書かれているので引用すると、

    > 要するに、人間に対して破格の恩恵をあたえたものが、その目的をいちおう達成するや、ぎゃくに人間を害する方向へ転じてゆく。ここに文明というものの矛盾があるのだ。

     本書で取り上げられている農薬等の化学薬品はその代表例となったけど、同じ問題を引き起こすものは他にも多くあり、インターネットやAIにもそういう側面はあるだろう。何であれ、自分が日常生活で便利に利用しているテクノロジーが世界のどこかでどのような害をもたらしているかについて深くは知らず、みんな使ってるから良しとしているなら、本書を読んで感じたような「信じがたい愚行」に既に加担しているかもしれない。しかも、それに気づいてもなお、その文明の矛盾から逃れることはできない。というのも、p310に書かれているように

    >皮肉なことに、みんながもっとよい、らくな生活を求めるため

    というところに根本原因があるから。自分自身はともかく、家族(愛する人達)のためにそれを求めるのは倫理的に全くもって善いことで、多くの人の生きがいになるほど普遍的な価値観だと言える。この皮肉な状況は、なんと50年以上前に認識されてベストセラーの書物にも書かれていたのに、意識できないまま生きていたのか..
     本書から10年後ぐらいに経済学者シューマッハは『スモール イズ ビューティフル』で仏教経済学なる大胆な考えを述べているけど、全く大袈裟ではなくて、まるで人間という生き物の呪いのような根深い問題だと思える。

  •  てっきり小説かと思っていたが、豊富なデータをもとに作られた科学書だった。人間の生活に便益をもたらした化学薬品が、自然均衡の破壊因子として作用する点を、動物たちが死にゆく悲惨な現実とあわせて指摘している。1964年に書かれた本であるが、本書で提起されている問題は、今もなお解決しているとは思えない。

  •  わたしの手元にあるのはKindle本ではなく,文庫本でもなく,1987年発行の単行本である。だから,最後の解説文がKindle本と同じ文章なのかは分からない。
     解説の最初には,レイチェル・カーソンの紹介がしてある。

    この本の著者はアメリカの女性で,本名レイチェル・ルイーズ・カーソン。遠くアイリッシュとユダヤの血をひいて,しかし殆ど生粋のアメリカ人として,米国南部ペンシルヴェニア州の小さな都市に生まれた。1907年5月のことだった。

     最も早い環境汚染問題提起本として,出版以来(ということは半世紀以上),環境・生物多様性などを考える時のバイブルにもなっている本書を,わたしはずいぶん前に手に入れて,これまでも何度が読んだことがある。今回,久しぶりに最初から最後までじっくり読んでみて,やっぱり,すごい本だと思う。
     SDGsという言葉は新しいが,やっていることは,昔と何も変わんないよな。
     ただ,本書の後半に「害虫対策のために他の地域から天敵を導入する」ということが良い事のように読み取れる部分がある。農薬よりはいいという書き方だ。しかし,現在は,もともとの生態系を乱す,このような新たな種の導入は決していい方法とは考えられていない。

  • 環境保護の契機となった名著であることは疑いようがない。けれども、これが名著とされる背景には、60年代に(極めて少なかった)女性科学者が出した本であること、そしてその女性科学者が10歳で小説を出版したほど文学的才能を持っていたこと、の2点があることは留めておきたい。

  • 化学薬品が自然に対してどのような悪影響を及ぼすのかを述べた本

    基本的には昨今で指摘されている問題について、豊富な実例ともに紹介している

    また、化学薬品による病気発症のメカニズム等も医学文献をもとに述べられている

    気をつけなければいけないのは、この本が出版されたのは50年も前のことであるため、ここで紹介されている医学情報をそのまま鵜呑みにしてはいけない。なぜならば、医学とは日進月歩が目覚ましいものだからだ。

    とはいえ、読み物としては非常に興味深い。実例が豊富すぎてやや冗長な感じもするが、要所要所を拾い読みすればなかなかに読み応えのあるものである。

  • 1962年の出版。60年後の現在、同じ本が書かれるとすれば内容はどうなっていただろうと考えながら読む。当時、この本のインパクトは大きかったに違いない。一般消費者はもちろん、農業関係者や農薬会社など利害関係者が多いだけに、賛否両論が沸騰しただろう。無農薬・有機栽培がブランド化しているように、本書の影響は現在に至っても大きい。
    農薬は今も使われているけれど、ターゲットとなる害虫以外への毒性や、残留農薬の危険性、環境負荷はどう評価されているのだろう。まさか60年前と同じじゃないよな。そういう本を読みたい。

  • 11章から


  • リーディングの教科書に出てきたので呼んでみました。

  • これがフィクションじゃないっていうことを考えると、恐ろしくて震え上がる。

    化学物質によって汚染された、景色や生物の死の描写が生々しくありありと描かれていて強い危機感を感じざるを得なかった。

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著者プロフィール

レイチェル・カーソン:1907-64。アメリカの生物学者。研究の傍ら、大ベストセラー作家に。1962年公害問題を『沈黙の春』で厳しく告発、環境問題の嚆矢となる。『センス・オブ・ワンダー』は1956年に雑誌発表、未完のままに死後単行本化された。ほか著書に『潮風の下で』『われらをめぐる海』『海辺』などがある。

「2024年 『センス・オブ・ワンダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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