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感想・レビュー・書評
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本書は第I部「価格理論」、第Ⅱ部「ゲーム理論と情報の経済学」の2部構成になっている。
> 理論を説明する際には、「それを使うとどんな料理ができるか」ということを、理論とよく合致することが十分納得できるような現実の事例を提示することによって明らかにする(はじめに p.v)
と書かれているが、納得できるかどうかは人による。大学教育で数式に多少触れた経験があり、一方でミクロ経済学には触れたことのない私のような読者にとってはこの分野に触れるきっかけとしてはいいかもしれないが、より形式的なテキストで学ぶ必要性を感じた。
第I部「価格理論」では、予算を制約条件とした無差別曲線の最大値問題からはじまり、生産計画や企業間の均衡といった話題が解説される。
凸である2変数関数のグラフの概念図とともに説明が進む中で、この分野の慣例なのかもしれないが、どうしても絵が適当に見えてしまう。現実の問題を例として具体的な数値をパラメータとして選択した場合のグラフのプロットは記載して欲しい。
また、とくに生産計画では労働力と生産性についてなどでは、かなり簡単な関係性を仮定している。仮定が簡単なのはいいが、それによってうまく扱うことのできる問題とそうでない問題の境界が曖昧にでも把握できないと適用は難しい。そういう意味で「現実の事例」からは離れているように感じた。
第Ⅱ部「ゲーム理論と情報の経済学」は、第I部よりも数式が少なく、感覚的な展開も比較的多い。第Ⅱ部については、より他のテキストをあたる必要性を感じた。
終章のイデオロギーの話は好みによるが、蛇足であり、さまざまな理論の適用範囲と妥当性を考えることが真摯な態度であって、早すぎる結論は理解の妨げになる可能性があるのでほどほどにしておくべきだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示