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- / ISBN・EAN: 4573273996418
感想・レビュー・書評
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紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し、戦国時代に終止符をうった。しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。
これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する"人望"とは何かをきわめつくした物語である。
項羽と劉邦…人柄としては対極にあるこの二人ですが、どちらもとても大好きなのですよ。
愚直なまでの「武」の人である項羽。
彼の生き方に不器用さを感じつつも、それでも配下の兵卒からの圧倒的な支持は見逃せません。
結果的に彼の命取りになった性格的な部分にさえも愛嬌を覚えてしまいます。
「ごろつき」であるが故に周囲がどうしても力を貸したくなる劉邦。
彼の魅力は人間的な器の大きさと、途方もない愛嬌でしょう。
旗揚げの頃からずっと、水面下で劉邦を支えてきた人々あっての劉邦であり、彼一人では何も成し遂げることは出来なかったはず…
その、人をひきつける力こそが劉邦の魅力。
結果として劉邦が項羽に勝ち、漢帝国が成立したわけではありますが、あの時代を牽引したこの二人に、多大な尊敬と愛着を覚えます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに読んだが楽しめた。
東洋のリーダー像について考えさせられたのは年をとったからか? -
中国で最初の統一王朝秦の時代から、始皇帝の死後秦を打倒し共に覇を争った楚の項羽と漢の劉邦との攻防の過程を描いた歴史小説。由緒正しい血統を持ち武勇に優れ軍神のように崇められた項羽が敗れ、農家に生まれながらゴロツキのような青年時代を送り、戦さの才に乏しい劉邦が最後に漢帝国の始祖となったのは何故なのか?天が味方をするような人望とはどのようなものなのか、というテーマを基礎にして、項羽と劉邦という対称的な人物とこれを取り巻く様々な人間模様が歴史絵巻のように描かれる。
劉邦勝利の要因は、血縁や出身に関係なく多彩(多才)な人材を登用したこと、食糧の確保を重視して兵や民を飢えさせなかったこと、そして何より、思わず忠を尽くしたくなる「可愛げ」を持っていたこと等々。