風の歌を聴け (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • この作品を読むのは2回目である。

    前回読んだ時期は2年前のちょうど大学に入学した頃だったと思う。中学校の時はよく本を(主にラノベが多かったかもしれない)読んでいたのだが、高校でぷつりと読むのをやめてしまい、大学に受かって入学するまでの期間に何かのきっかけでまた読書熱が再燃した。風の歌を聴けを読んだのはちょうどその辺りになる。

    その頃の感想としてはこれが村上春樹か、正直よくわからなかったなというのが素直な所である。全体を通し平易な文で書かれているので、とても読みやすいのだが、軽い気持ちで読んでいると何も思うことも無く読み終えてしまうのだ。悲しい村上春樹とのファーストコンタクトになってしまったことが悔やまれる。

    今回村上春樹の長編を出版順に全部読もうと、ふと志しある程度色々な文学作品に触れたりしながら2年の時を経て、再読してみると前回読んだ時とは全く違った印象を受けた。どハマりしたのである。
    正直ここまですごい作品なのだとは思っていなかった。

    村上作品の特徴として巧みで新鮮な隠喩がある。一文だけに注目してもこの隠喩を楽しめると思うのだが、他の文の隠喩とも関わりあってまた違う作者の意図を伝えるようになっているのである!これに気づいた時、こんな芸当を出来る人間がいるのかと一気に鳥肌が立った。そして細かく注意して見返してみると至る所にそういった驚くべき表現の仕掛けが施されているのだ。個人的に言わせるともうハマるしかない。

    少し話が脱線するが、自分はエヴァンゲリオンが大好きだ。雰囲気だけでも楽しめるのだが、細かい所を見ていくと作り手の意図を上手く目立たないように隠してあったりして、それを見つけるほどに深く作品にのめり込んで楽しめるところが大好きなのだ。自分は村上春樹にエヴァに似た楽しみを感じた。村上春樹作品は自分が作品に深く向き合えば向き合うほど、より深い楽しみを提示してくれる作品だと思う。

    もし他の作品全てに風の歌を聴けに通ずるものがあるのだとしたら村上春樹を一生追いかけたいと思った。この先の期待も込めて評価は星5にした。

  • 主人公「僕」と友人「鼠」
    2人の若者のひと夏の出来事を描いた物語

    本作で2作目の村上春樹作品
    前回読んだ「ノルウェーの森」が
    いまいちピンとこず…消化不良みたいな感じで
    終わった感が否めず…悔しいと思い( ’ᾥ’ )ヴゥ゙ゥ゙
    今度は村上春樹さんのデビュー作に挑戦!!( •̀ᴗ•́ )و

    ではネタバレしつつ感想をしていきます!!

    気の合う仲のいい2人、僕と鼠なんだけど
    かなり正反対の感じに思えました。
    僕は冷静沈着、鼠は破天荒気味
    僕は大学生、鼠は大学退学
    僕はいい感じな女子と出会う、鼠は彼女と破局
    等まだ他にも色々あり、これはまるで
    一緒なんだけど…全く別物…そう!それは
    コインの表と裏の様な関係性……ですな!!
    が正直なところ…彼からが何を言いたいことが
    あまり理解が出来ませんでした。www

    それと合間合間でラジオ番組が挟むのですが、
    これは……なんなんだと終始、疑問気味…笑

    あと印象に残ったのがノルウェーの森ように主人公は暗い過去を持っていた(どの村上春樹作品でも主人公は暗い過去を持っているのかな?笑)
    今回の場合も「僕」の3番目の彼女の死に対して
    悩む描写が書かれていましたが、
    結局、何故に自殺したのか?彼女の自殺に対する
    主人公「僕」の心の折り合い的なヤツが
    分からずじまい……
    こういうもんなのかな?と納得させたけど……
    やっぱり疑問気味…笑

    ラストは急な時間の速度アップ、10年を通りこして
    「僕」は30歳……まてまて、唐突すぎる!www

    僕の教養の無さなのか…ただ単に好みの問題なのか、やっぱり今回も消化不良気味…
    と思っていた矢先に!!
    なんとこれ!鼠三部作のシリーズものではないか!!
    あの終わり方されても謎しか残らない!
    シリーズ物ならオッケー!オッケー!
    また時間を見つけて鼠シリーズを読もうと思う!

  • 最近まわりで話題になっていたので
    気になって読み返す。

    どうしてもデビュー作は話題になるのでどの作品よりも定期的に読み返しているきがする。
    また今回は単行本を購入したので、
    このサイズ感、余白部分を楽しみながら読みました。

    鼠の人生のやるせなさ、
    読む時によっては鼻につくんだけど
    今回はここのセリフ、自分にとって良い小説を描き始めたという鼠の

    「…そしてこう思う。蝉や蛙や蜘蛛や、そして夏草や風のために何かが書けたらどんなに素敵だろうってね。」

    鼠のことが心配だよ。。
    で、次が読みたくなるのだったww
    瑞々しく、
    春樹さんの小説が生まれた記念碑のように輝く作品です✨

  • 村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』。数多くの人が読んでいる小説かと思います。私が食わず嫌いしてる作家、特にいませんがいるとすれば村上春樹。正確に言うと食わず嫌いではなく「食った結果気持ち悪くなってやめた」という感じ。
    昔、友達に『ノルウェイの森』を薦められて読んでみたところ文体が気持ち悪くて挫折。読書そのものが嫌いになるトラウマになりました。

    だいぶのちになって、日本や海外の他の作家の作品を読んでようやく「読書ってこんなに面白いんだ!」と思わされました。そして村上春樹本人は別にして、彼が好きな英米文学はどれもこれも面白い。その頃から考えが変わってきて、『ノルウェイの森』より前の村上春樹は面白いのではないだろうか、と思うようになりました。
    今回ようやく読む気になったきっかけは、大森一樹監督の映画版『風の歌を聴け』の予習として。(のちの作品からして、映画版にはあまり期待していませんが)

    小説の感想としては「内容は特に面白くないけど、名言(アフォリズム)が多い」なという感じ。短いし文字も詰まってないのですぐ読めました。以下気づいたこと。

    ・数字で章がついているけど、章立てというよりは「映画のシーンナンバー」。文学作品というよりは映画。村上春樹は脚本家を目指してたそうで、映画マニアでもある。
    原作の時点で映画な小説だから、これを映画化しても…と。

    ・冒頭からカートヴォネガットのオマージュ…というよりはヴォネガットのパロディ小説かとも感じる。そういうものだ。

    ・村上春樹を音楽で例えるとわかりやすいと思う。連想するミュージシャンは大瀧詠一、桑田佳祐(サザン)、佐野元春など。
    大瀧さんが1948年生まれ、村上春樹は1949年と同世代。彼らはアメリカの音楽をラジオで聴いて育った世代。
    桑田佳祐は1956年生まれとだいぶ年下だけどデビュー年が近く、サザンが1978年、村上春樹が1979年。サザンの音楽はメロディーに英語の歌い方で日本語を乗せるように作られた革新的なもので、彼らから歌謡曲(やフォーク・ニューミュージック)ではない「今の日本のポップス」が始まっている。
    因みに私は大瀧さんは好きだけどサザンは好きではない。好きなのは井上陽水(やもちろん清志郎)で、特にポリドール時代が好きです。のちにミスチルが桑田佳祐と、奥田民生が井上陽水と共作した点からもわかりやすい。ミスチルも好きじゃないし、民生もそんなに…だけど。

    ・ついでに村上春樹は太宰治や三島由紀夫が好きではなく影響されてないそうだ。私は太宰や三島は好きなので、この点からも村上春樹を受容できなさそうなことがわかる。

    ・村上春樹がポストモダン文学かよくわからないけど、様々な音楽や映画、食べ物や車種が提示されて組み立てられている。雑誌POPEYEが創刊されたのは1976年と少し前で、カタログ文化。村上春樹は文学作品というよりは文化、カルチャーだと思う。

    ・大瀧さんがノベルティソングでしていたように、だいぶ後には渋谷系や庵野秀明、タランティーノが出てくる。『風の歌を聴け』にはアメリカ文学を紹介するもの、という点以外の魅力をそんなに感じなかった。
    村上春樹は私の父親と同年同月生まれ。春樹直撃世代は私より15〜20歳ぐらい上かなと思う。その人たちが好きなのは理解できるけど、私より年下で好きな人がいるのはなぜなのか、興味がある。もう少し後の作品まで読まないとわからない。

    ・話を作品に戻して、村上春樹の文体はなぜこうなのか。「英米文学の訳文」の影響もあるけど、彼は京都生まれ兵庫育ちだから関西弁のはずで、なのに標準語で書いていることも関係しているかもしれない。
    実家のある港町が舞台だけど、これは横浜かと思っていたら夜行バスで東京に帰る描写があるので、神戸か。日本なのに英米文学、関西なのに関西弁ではない小説。無国籍感、無ローカル感。

    ・時代設定は現在が1978年頃で、回想として1970年の8月が語られる。1970年というと、70年安保の直後で学生運動が収束してきて翌年の1971年には「内ゲバもの」の作品がよく作られる、そんな頃。
    書かれたのはだいぶ後で、しらけ世代に切り替わる直前の空白期間。それが学生のモラトリアムと重なる。つまりこれまた「何者でもなく、どこにも所属していない」という話。
    冷蔵庫がメタファーとしてよく出るけど、『ときめきに死す』や、だいぶ後の吉本ばなな『キッチン』を連想する。

    ・そう考えると、村上春樹が多くの人に受容された理由として
    アメリカ文化の影響を受けていて当時はオシャレだった
    ポップで読みやすく、サザンと同じく文体が革新的だった
    どこでもなく何者でもないので、自分を当てはめやすかった
    などが考えられる。こうして深読みしていくと非常に面白いのだけど、小説そのものはそうでもないので、サラッと読む場合は「好きか嫌いか論」だけになってしまうと思う。


    ・一応、作品のテーマになっているのは「喪失」。死が頻繁に出てくるのと、彼女の左手の小指など。元が『スローターハウス5』だからか。そういうものだ。
    村上春樹は大戦中のヨーロッパ戦線史がかなり好きだそうで、そこともつながる。そして動物の名前がたくさん出る。鼠、牛、虎…。インドの虎のくだりからは植民地と戦争を連想させられる。

    ・リチャードバートンの戦車映画は『砂漠の鼠(デザートラット)』で、鼠とかけている。ミッキーマウスマーチも。主人公の僕も友人の鼠も、村上春樹の分身。

    ・作中でサムペキンパーについて語られるけど、主人公は『ガルシアの首』が好きで、嫁は『コンボイ』だと。ガルシアはまだわかるけど、コンボイが最高傑作という人はまずいないと思う。あまり趣味が良くないという比喩か?たぶん、1978年公開なので現在という時代設定を入れるためのものだと思う。
    コンボイは、ヒップホップがメインストリームに出てくる前年にラップの曲が入っているという点で重要で、佐野元春がNYに行ってラップを取り入れたことと、私の中ではなんかカブる笑。

    ・ブクログにあえて電子書籍で登録したのは、文庫版などで登録すると、佐々木マキさんの素晴らしい表紙絵が帯で隠れてしまって残念なため。だから、村上春樹の好きなものは良いんだよな。

  • 村上春樹のデビュー作。数年ぶりに読み返したので感想を。
    21歳の大学生「僕」と、その人生を29歳になって振り返る。
    中国生まれのバーテンダー・ジェイが営む「ジェイズ・バー」で出会う、鼠と呼ばれる金持ちを嫌う金持ち。泥酔した姿であった、4本指のレコード屋勤めの女。愛を語る犬の漫才師のようなラジオDJ。デレク・ハートフィールドという小説家。
    劇的なストーリーや謎はない。大学生のひと夏の、哀愁が漂う。

    読み返してみると意外と短くてすぐ読める。2023年の今から見ると新しさはないけど、それはもうとっくに「村上春樹」がいるからなんでしょうね。しいていうならSFっぽいかも。
    しかし今から見るとこの「僕」は普通の男子大学生に見えながら、現代ではそれなりに破綻した倫理観を持つように思えて、そういえば初期の村上作品のそういうところが嫌いだったなと思い出して面白かったです(飲酒運転をしたり、年下の高校生相手とセックスしたり、未成年に酒やタバコを躊躇なく進めたり。)

  • 今から考えると、おそらく良くも悪く(?)も、その後の人生観を変えてしまったような小説。

    たしか高校生の頃だったと思うけれど、この作品を読んでからと、それ以前では、やはり全く自分という人間の核というか、中心にある何かが違うと思える。そんな作品。

    随分久方ぶりに読み返してみたけれど、当時受けたショックというか、俺、とんでもないものに出会ってしまった、というあの日の衝撃は今でもリアルに覚えている。

    専業作家になる前の、千駄ヶ谷かどっかのジャズバーの店主が、仕事終わりにキッチンの小さなテーブルで書いたストーリー、というのが痺れるじゃないですか。
    少なくとも私は痺れた。

  • その昔、大学生の頃だったか、読んだ本ですが、改めて今読むと、どういう感じがするのか再読。まず感じるのが今読んでも全く古くささを感じない。オシャレであり、ノスタルジーを感じる。ポップな文体が哀愁を重くさせないが、どこかしら孤独で喪失感が付き纏う。そして鼠。このネーミングセンスにつきますね。結果、昔と今でも感じ方に大差はなかったが散りばめられた伏線などに当時は全く気付いてなかったことに今更ながら気付いた。次はピンボールですね。

  • ブックオフ・110円・大阪・新幹線

    中学生の時に村上春樹を避けて正解だった。大学生である内に読むべき作家。
    村上龍の「限りなく透明に近いブルー」がそうであるように、作家の処女作は最も純粋な作家の精神性の現れだと言われる。村上春樹は「風の歌を聴け」で大学生を描いた。中高生で読まれるべき「海辺のカフカ」、中年の男女の恋愛、不倫を描いた「国境の南、太陽の西」にも日本の大学生が共感する普遍的な物語構造、人間心理が描かれているのは、それが原因だと思う。

    「僕が三番目に寝た女の子は、僕のペニスのことを「あなたのレーゾン・デートゥル」と呼んだ。」

    作中の主人公の行動は、実際に村上春樹が大学生の時にレーゾン・デートゥルを求めた行動のように思える。これは勝手なイメージだけど、「レーゾン・デートゥル」という言葉はいかにも大学生的。
    どこかのインタビューで村上春樹が「ツインターボでやっていくしかないと思った」と言っていた。これは「海辺のカフカ」のように、二つの物語が並列して進んでいく構造のことを言っている。「風の歌を聴け」からはツインターボどころか、目的地に着くためならなんでも燃料にしてしまえと言った印象を受ける。けれどその燃料になったモノがいちいち印象的で純粋でクール(そこが鼻について腹が立つところ)

    気がついたけど村上春樹の作品は「家族の不在」が多い。セカイ系に似たところがある。だから若者に人気なのかな。

    日本語下手になりすぎてて辛い。
    一つ一つきちんと書かないと…。

  •  本屋でこの本を見つけた時、私はとても嬉しく感じた。この本は160Pという短さで、普段本を読まない自分にも読み切れるような気がしていた。

     村上春樹のデビュー作であるこの本は、主人公である「僕」が大学生時代の夏休み中に地元の街に帰省した18日間のことを書いた小説である。海沿いの街で、湿度と気温の高い情景が目に浮かぶようだった。1970年が舞台となっていて、自分自身が生まれる前の時代なので経験したことはないが、懐かしさを思い出させてくれる作品であった。
     地元の友達とタバコを吸いながらビールを飲み、海を眺める。この日常の一瞬一瞬に意味を見出して生きるべきであるということが、この本のタイトルに込められているように感じた。あっという間に過ぎ去ってしまう風の歌はその時には聞こえないかもしれないが、あとで聞こえたふりをするのもいいかもしれない。

     私が大学を卒業し、この手の懐かしさに触れたくなった時に、また読みたいと思う。

  • 理由を上手く説明できないけど雰囲気が好き。旅先で再読。小説は読む場所も大切だ。

    2018.3.30

    再読。全然内容を覚えていないことにびっくり。
    村上春樹の小説は音楽が深みを与えているとおもう。若い時代の軽さ、自由さ、不安定さ、夏のカラッとした明るさと、夏の終わりのちょっと物悲しい感じ。全てがうつろいすぎた後の回想みたいな、ほわっとした感じ。

    2022.3.17

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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