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感想・レビュー・書評
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悪循環の出版界、そういうイメージだが、頑張る人には報われてほしい。誰もが足掻き苦しみながら生きていると自分に言い聞かせて踏ん張ってほしい。自分も、優しい結末の物語を今後も読んでいきたい。
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中学生で新人賞を受賞し、先行作家さんからも絶賛された、
今は高校生の千谷くんが主人公。
幸先の良い作家人生の出発だったものの、その後に出した著作は酷評ばかり。
当然売れもせず、長期のスランプ状態。
物語を綴る意味も目的も失ってしまった彼の元に、ある作家との共作の話が。
その作家とは同い年の人気作家、小余綾詩凪。
どんどん本が書けて、しかもそれが売れて、なおかつ外見も良く学業の成績も
良いという、非の打ち所の無い彼女。
冴えない男子と完璧な女子。
これは相沢さんのよくあるパターンで、あぁ、またこれかと。
うん、そう思ったんだけど、この本に関しては本当にこの設定でよかったな。
これまでで一番しっくりきた。
小説とは何か。小説を書くとはどういうことか。なんのために書くのか。
ひとはなぜ「泣ける」本を読みたがるのか。
そのあたりを軸にしつつ、書く側の苦悩・葛藤・苦しみを存分に描いている。
物語の大半の間、主人公はとてもネガティブで、他人にあたってしまったり
傷つけてしまったりする。
正直読んでいて辛くなることもあるし、こんな主人公には共感できないって
思う人もいるだろう。
でも、現実に身近に居るような人物なんだよな。
例えば自分とか。他人が知らない本当の自分とか。
読者も苦しい部分を一緒に味わって、しっかりと結末に向かっていくといい。
そうするだけの価値のある一冊だと感じた。