- Amazon.co.jp ・電子書籍 (179ページ)
感想・レビュー・書評
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ライターの鈴木大介による新書。脳梗塞とその後遺症の高次脳機能障害、そこからのリハビリなどの経過を、当事者として描き、その「脳が壊れた」感覚を平易な文章で説明している。特に、鈴木自身がライターとして発達障害当事者を多く取材してきたり、自身の妻がADHDだったりする中で、高次脳機能障害の感覚を言語化していくにつれて、これまで自分が取材してきた発達障害当事者の行為や苦しみを理解できるようになっていくという話も本書の重点を占めており、単なるリハビリものではなく、脳機能障害がどういうメカニズムでおき、それが当事者にとってどう感じられるのか、ということの一端を知ることができる(彼の意見に過ぎないのだが、ある程度一般化しても差し支えないのではないかと思わされた)。
特に、共同生活を送る中で、ADHDのお妻様(妻)の苦しみを理解できていなかった、と気づいていく著者の変化は面白かった。著者もなかなかこだわりが強い人なんだろうが、自分もADHDの気のある読者として、著者の理解が深まっていく様子や、それに対するお妻様の反応には共感することばかりだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
荻上 チキ/ヨシタケシンスケ 著の『みらいめがね それでは息がつまるので』で紹介されていたのをきっかけに知り、ずっと気になっていた本。
その後YouTubeの「障害とパートナーシップ会議」を見て、なぜそんなにも大介さんが「加害」とか「モラハラ」というのかと疑問だった。だって、大介さんがいたからこそ、お妻様は生き延びてこれたんだと思ったから。キングオブ「理解のある彼くん」であり「庇護欲くん(本人談)」だと感じた。
でも本書を読んで、大介さんのちょっと異常なほどのこだわりを持つところ(背負い込み体質、妥協下手、マイルール狂、ワーカホリック、吝嗇(ケチ)、善意の押し付け」)が、モラハラと言われても仕方ないかもしれない、という意味がやっとわかった。
病前のお二人は、お互いがお互いの欠点を引き出してしまっている関係。というか、本来強みである部分も、使い過ぎたり全く発揮できないと短所になるという良くない例にも感じられた。
病気になるほどのストレスや、無理の積み重ね。
大介さんとお妻様の場合、そのおかけでお互い分かり合えたけれど、どちらかもしくは両者とも死んでてもおかしくなかったわけで。
そんなドラマチックな展開なくとも、日々のたゆまぬチューニングで、良好な関係を作っていけないものか…と自身のパートナーシップを深く考えさせられる本だった。考えるだけじゃなくて行動しないと、
私はお妻様に似た発達障害の当事者で、日頃から夫に家庭のあらゆることを背負わせ過ぎてる気がする。私も自分の役割をどんどん手離してここまできて、無力感に苛まれることがよくある。夫に病気になってほしくないし、私も自罰感情とさよならしたい。どうしたら良いんだろう。
『されど愛しきお妻様』を読んだらわかるのだろうか…?
それにしても、脳梗塞を患って高次脳機能障害を負ったことを一度ならず「僥倖」と表せるのはすごいと思った。私ならそんな風には絶対に考えられない。 -
『最貧困女子』の次に読んだのが本著。
もうノリが全然違う。
もちろん幾多の苦しみがあったのだろうけれど、全体から何かを「超えた」感じが伝わって来る。
本当はつらい内容なのに、しみじみ「良かったな」と読み終えられる良著。
自分も脳が壊れている。双極性障害という。
家族や友人を巻き込み、自分で自分の人生を傷付けて来た。
だからこそ、読後に「良かったな」と思えるのかも知れない。
壊れた脳を抱えて、もう少し生きてみようと思う。 -
高次脳機能障害をもった当事者の、自分観察レポートとして秀逸。
コントロール不能の状態に身もだえしながら、病気を得たことで、ようやく目を向けることができた、それまでの自分への気づきの数々。
半側空間無視って、こんな感じなんだ、
生活習慣というのは、考え方とこんなにも同一化しているものなんだ。 -
脳の病気や障害のことだけではない。深い。
自分が知らない世界の一端を垣間見ることができた。
人の資産を作ろうとおもった。。 -
いやいや、身につまされる。