「その日暮らし」の人類学~もう一つの資本主義経済~ (光文社新書) [Kindle]

著者 :
  • 光文社
3.71
  • (5)
  • (22)
  • (18)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 218
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (207ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自分が認識している資本主義経済の世界とは違う、「その日暮らし」が中心の世界を知ることができる。
    "Living for Today"と聞くといかにも計画性・将来性の無さを感じてしまうが、そうではない「インフォーマル経済」がもたらす経済・社会・文化的な効果や信頼性、コピー商品、贈与と借りの話に繋がっていくところも興味深かった。

  • とても興味深い事例に溢れていて学びが深いと思いました。特にインフォーマルな経済、借りの形がエムペサによりどのような影響を受けたのか、コピー文化、中国との関連などについてはとても良い気づきが生まれそうな気配をそこはかとなく感じました。
    全体を通した柱がその日暮らしで良いのかは個人的にはしっくりこなかった気もしました。
    思考を削ってその日暮らし的なマインドをしている人を少なからず見る機会ある身としては、どの国も程度はあれど同じように見えます。
    収入を安定させるために収入を多元化するのは比較的良い戦略と思うのですが、日本ではそこまでしなくても生きて行けたのでそうはなっていないのかなと。なのでジェネラリストとして生きるのは適応なのだと思うのですが、現在志向になる背景には本当に稼ごうとすると障壁が多くなる要素がありるのではないかなと想像しました。話を聞いた人たちはそれなりの人を紹介してもらってるのではないかなと思うので、インタビューした人の選択バイアスもありそうな気もします。
    元々ある貸し借りの習慣がエムペサに影響を受けているのは本当に興味深く感じました。緩やかな時間の中であれば関係性であったはずが、貸す側がむしろ義務のように追い詰められているように見えて面白かったです。

  • 我が国を含む先進国の経済理論を根本的に問い直すLiveing for today理論。先進国経済理論に取り込まれず、その渦中でトリックスター的に生きる。返すことを必ずしも前提としない「借り」を多数作って、そこに友情や信頼、名誉、関係性を重要視する。そこには生きる糧を得る営みと同時に「関係性の喜びの中で生きる」という経済問題を超越した「生きるとは何か」が哲学的に内包されている。というルポルタージュ

    「インフォーマル経済」-グローバル企業が動かす西側経済とは逆に、新興国で起こっている経済。超多数の零細企業や個人が小さな輸入などのビジネスを行う。近年、西側経済にとって無視できない経済規模になっている25

    インフォーマル経済の主力商品は、偽ブランド。これはグローバル企業の知的財産権を犯しているが、この製造・販売・購入によって、途上国の人たちへ、今まで出会えなかった先進国の技術や文化を与え、製造することによって今まで出来なかったクリエイティブな仕事を与えた。これは考え方によっては、先進国経済が起こした社会の不公平や不正を解決していると言えるし、しかもその不公平の被害者自らが自力で解決したとも言える27

    アマゾンのピダハン族には貧困が無い。それどころか貯蓄・財産・曽祖父母・いとこ・色の概念が無い。過去・未来の概念も極めて限定的32

    タンザニアのトングウェ人は、出来るたけ少ない努力で暮らしを成り立たせようとしている38

  • 「チョンキンマンションのボスは知っている」で有名な著者の長期間のフィールドワークを通じて語られる知見は、いつもはっとされられます。生き方を考える必読書。

  • 全く知識のない分野、アフリカの「その日暮らし」の話がとても魅惑的である。「不確実性が不安でしかなく、チャンスとは捉えようがない社会は病的である」との認識はこれから起こる大変動に向けての構えとなることだろう

  • その日暮らしという生き方をしている世界が、この地球上にあり、それはじつは私たちの当たり前に考えている世界よりも主流であるということは衝撃を受けました。本書では、そんなliving for todayという生き方を、アフリカと中国の事例を主に紹介されており、その良さといいますか、強味について書かれています。その日暮らしという言い方は消極的に見えますが、登場人物の方々はそれを積極的に行っており、そしてそれにはそれなりの努力をされています(人間関係の強さが想像以上に必要と思います)。このような生き方があるということ、今の私たちの生きている環境のもう隣にあるということ、今後はそれと付き合っていくために、私たちが変わっていく必要も感じる内容でした。
    内容は新書ではあまり無いと思う難解な表現もあり、読むのに骨が折れましたが、書いてある内容が私たちの常識を覆すものですので、読む価値はあったと思いました。

  • タンザニアや、アフリカの「Living for today」な生き方を考察した本。アフリカの、農作物が収穫できない年でも、他部族におすそ分けする文化。しかも、そうして自らの分が足りなくなることを楽しんでいるようにも見えるらしい。タンザニアの携帯口座による金の貸借りの文化。これも、決して催促しない。全体の幸福を考える、ということなのだろうか。中国、アフリカで主流となる、インフォマーシャル経済。ブランドのコピー商品を売買する経済は、今や主流。この話も逞しいと思った。ちょっと難しく理解できないところも多々あったので、もう一度読んでみたい。

著者プロフィール

小川さやか(おがわ・さやか) 立命館大学先端総合学術研究科教授。専門は文化人類学。研究テーマは、タンザニアの商人たちのユニークな商慣行や商売の実践。主な著書に『都市を生きぬくための狡知――タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(世界思想社、2011年)、『チョンキンマンションのボスは知っている―アングラ経済の人類学』(春秋社、2019年)など。

「2022年 『自由に生きるための知性とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川さやかの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リンダ グラット...
國分 功一郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×