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感想・レビュー・書評
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面白い!哲学×サイエンス×エンジニアリングの螺旋で知能とは何かに向かっていく。
AI研究には、AIの応用に関する研究と、AIを通じて知性とは何かを探究する研究とがあり、この本は後者のスタンスである。
生物学や、哲学、心理学の知見を踏まえつつ、知性とは何か、身体性と環境の関係を説き、無意識も射程に入れた知性を生み出していこうとする取り組みが、ワクワクする。
『哲学とは問いようのないものに問いを立てる
サイエンスは真理を探究する
エンジニアリングは技術を用いて実現していく』
という説明に、知性や学問の特性と使い方が腑に落ちる。そして、哲学的なものの考え方や認知や適応ということが、環境や世界、そして自分や生き物をどう理解し行動するかの基盤になるという認識を得た。
無味乾燥だった哲学に関心が湧く。自分は機械仕掛けの要素還元というデカルト的世界観に支配されていることを知る。そして、殆どの現代社会がその世界観に取り込まれているのだ。17世紀の発明にしはいされているということに愕然とする。
そして、20世紀初めに、その限界から現象学という哲学が生じていることも初めて知る。
こうした哲学の発展と、社会規範としての展開にはタイムラグが生じるのかも知れない。
そんなことも考えられることから、哲学を知ることで、何かを掴む縁になるかも知れない。
哲学を勉強したいし、その哲学という知のあり方、問いの立て方と考え方の手法を学びたい。
元々は、曹洞宗の藤田一照老師に人間の深い理解に基づく制度設計という問いに取り組む上で、人間理解の一助として著者を紹介して頂いたところから読んでみた本。根源的なところへ降りていくハシゴを教えて頂いた気がしており、感謝。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
AIに関連する哲学の系譜・概要と、AIへの応用法を製作観点から述べており、網羅的かつ実用的でたいへん参考になる一冊だった。類書も併せて、このあたりの哲学議論の系譜はかなり可視化できて来たと思う。
業務もろもろ、すぐに使えるように整理されていたというか、モデルの図がかなりありがたい。きちんと再利用したいと思った。
いま読んでよかった一冊。
■目次
・第一夜「フッサールの現象学」 …現象学と人工知能の関係性
-エージェントアーキテクチャとサブサンプションアーキテクチャ
-超越論的哲学と現象学
-フッサールのエポケーと志向性
-現象学における「記述」
-人工知能への応用
・第二夜「ユクスキュルと環世界」…環世界(主観世界)
-生物の発生と環境
-機能環と環世界
-中枢神経網と対世界
-アフォーダンス(ギブソン)と知識表現
-運動の協応(ベルンシュタイン)、内的に生成される時間(ベルクソン)
・第三夜「デカルトと機械論」 …知能の成立の基盤
-論理主義の系譜(デカルト/ライプニッツ/フレーゲ)
-論理主義の否定(ゲーテ/ラッセル/ヒルベルト)
-論理学と人工知能技術
-意識とエージェントアーキテクチャ
-A-Cousciousnessの構成技術
・第四夜「デリダ・差延・感覚」 …予測と感覚について
-構造主義の概要
-デリダの差延
-構造からの脱却と知能
-ソニフィアン・ソニフィエ(ソシュール/ラカン)
・第五夜 「メルロ=ポンティと知覚論」 …身体が世界に息づくこと
-メルロ=ポンティの「知覚の現象学」
-遠心性情報と求心性情報
-環境と身体性 -
登録し忘れてた。