日経サイエンス2016年12月号

  • 30人登録
  • 3.57評価
    • (2)
    • (1)
    • (3)
    • (1)
    • (0)
  • 5レビュー
  • 日本経済新聞出版社 (2016年10月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910071151265

日経サイエンス2016年12月号の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 借りたもの。
    『シン・ゴジラ』関連記事目当て。
    『シン・ゴジラ』を怪獣映画というよりは先端科学を問い入れたSF作品と解釈し、作中のキーワード「進化」「新元素」「極限環境微生物」について解説。
    核分裂ではなく核融合システム(まるで原始宇宙)を内在しているのではないか、細胞膜での物質合成(元素変換)はバイオ原子力電池という構想があるなど、虚構(ゴジラ)に現実を照らし合わせる。
    日経さんは『シン・ゴジラ』を真面目に考えている。

  • 今年もノーベル各賞の発表が10月上旬にあり、生理学・医学賞は日本の大隅良典博士が「オートファジー」解明で、単独受賞した。今号の冒頭はその特集。
    「オートファジー」については、以前少し書いた(『日経サイエンス2015年11月号』)が、ひと言で言えば、細胞内のリサイクルシステムである。オートは「自己」、ファジー(phagy:曖昧さを意味するファジー(fuzzy)とは別物であることに注意)は「食べること」である。
    オートファジーは、細胞が自分の中の不要物を消化吸収し、分解産物を再度、生命活動のために使用する仕組みである。そういってしまうと単純なことのようだが、細胞(さらには生物全体)にとって非常に重要な機構と見られている。
    細胞は、エネルギーを利用して、DNAからタンパク質を作り、それぞれの機能を果たす。そうする過程でどうしても老廃物が溜まるし、劣化した細胞内小器官も出てくる。それらを回収して分解し、再度利用できる部品にする必要が出てくるのだ。これを行うのが「オートファゴソーム」と呼ばれる袋状の小器官である。オートファゴソームは細胞内に常に存在し、消化すべきものを取り込んでは分解している。日々のお掃除である。
    飢餓状態や酸素不足になると、オートファジーが活発化・巨大化することが知られている。オートファジーによってリサイクルされる資源が増え、なおかつ「自食」により細胞が「スリム化」することで、必要な栄養素やエネルギー量が減る、一石二鳥の仕組みと考えられる。
    オートファジーはウイルスや細菌などの侵入者と戦う際にも一役買っているようである。直接取り込んで分解するのはもちろんだが、それだけではない。侵入者を分解し、その特徴的な部分を免疫系が認識しやすい形で示してやる役割も果たす。手配書の注意書きのようなもので、たとえて言えば「鼻の横にほくろあり」とか「目の色は青」といったような部分の情報が免疫系に伝わり、同じ特徴を持つものを効率的に排除することが可能になる。
    オートファジーがうまくいかなくなると、想像以上のダメージがあるようだ。現在、関わりが推測されているのはアルツハイマー病である。アルツハイマー病ではアミロイドベータと呼ばれるタンパク質の沈着が見られる。これはオートファジーの作用が不完全となる場合に生じるようであり、アルツハイマー病の発症にオートファジーが関与する可能性が考えられる。オートファジーの活性化によって症状の改善が見込まれるかもしれない。
    オートファジーとは別に、細胞自体の自死として、アポトーシスと呼ばれる機構が知られており、多細胞生物の形態形成や、ガンなどの病的な異常増殖に対抗する手段と考えられている。アポトーシスとオートファジーの関わりも興味深く、今後の研究が期待されるところである。
    大隅博士は酵母を使用してオートファジーの研究を進めてきている。酵母は単細胞だが真核生物であり、生命活動に関わる重要な酵素やタンパク質はヒトと共通している。観察しやすく、モデル系として優れた酵母を使用したことが1つのポイントだ。また、人気が高く、人が飛びつきやすい流行分野ではないテーマに、じっくり取り組んだことが大きな成果につながった形だ。
    今号の解説記事は、過去のものの再録であり、最新の研究も盛り込んだものが近く紹介されることを期待したい。
    なお、物理学賞は「トポロジカル相転移と物質のトポロジカル相の理論的発見」、化学賞は「分子機械の設計および合成」。いずれも1頁ほどの解説記事である。こちらも、そのうち関連分野の記事があることを期待したい。

    さて、ノーベル賞と並ぶ特集が何と、「シン・ゴジラの科学」である。
    は映画「シン・ゴジラ」は7月末に公開されて、大ヒットし、いまだ上映が続く映画館もある。この「巨大不明生物ゴジラ」を「科学的」に検討してみようという記事である。
    「シン・ゴジラ」の映画製作には極限環境生物や放射生物学を専門とする科学者も協力しているのだそうで、怪獣映画というよりSF作品として見ることもできる。荒唐無稽であっても、それなりの理論的骨組みがある、というところか。
    映画は未見なのだが、記事はなかなかおもしろく読んだ。
    謎の巨大生物ゴジラは魚状の形態から両生類様、爬虫類様と形を変えつつ、東京湾、多摩川、品川、鎌倉と移動していく。どうやら生命維持には核エネルギーを利用しているようだ。
    形態の変化は「進化」を匂わせる。放射線の影響を受けているということだが、ゲノムはどう影響を受けたのか。
    莫大なエネルギーを作るシステムを内蔵していが、どうも核融合炉のようなものが体内にあるらしい。作中では「新元素」を作り出し、使っていることになっているが、その「正体」は? 新元素は、現実にはありえないほど半減期が長いようだが、理論的にはどうなのか?
    さらには、「核融合炉」のような高温・高エネルギーを生み出すものを、生物体が内包するなんてことは可能なのか? 普通に考えれば肉体が溶けてしまうのではないのか。
    ゴジラが東京へ向かうのは、もしかしてウナギのような回帰行動・・・?
    ・・・といった話題にかなり真面目に取り組んでいる。
    折り紙とゴジラを封じる解析表の関わりから、最先端の「折り紙学」に触れた記事もおもしろい。
    映画を楽しんだ人にはより一層楽しめる特集ではないかと思われる。
    「シン・ゴジラ」、結構おもしろそう・・・? 時間が取れたら見てみようかと思う。

    前の2つの話題は日本語版独自の特集だが、母体のScientific Americanからの翻訳記事は、「人新世を考える」。9つのテーマについて、今号と次号に分けて掲載される。
    「人新世」とは耳慣れない言葉だが、「~世」や「~代」とは、そもそも、地質学的に、地層から見て判断できるような、大きな環境変化によって区切られた時代区分を指す。人類が地球に及ぼしてきた大きな影響が、地層に恒久的な痕跡を残しているのではないかというのが、「人新世」を指示する学者達の意見だ。
    ここではもう少し広く、人類の進歩が変えようとしている世界について考えている。気候変動やグローバル経済、格差社会、遺伝子改変、老化、人類自体の存続など。
    どこまで予測可能なのか、社会問題は解決できるのか、さまざまな視点が興味深い。

  • 大隈良典氏がノーベル賞を獲得したオートファジーについて緊急特集が組まれている。私は科学者ではないので、記事を読む前は理解できるかどうか不安であった。しかし、完全に理解したとは言えないものの分かったつもりくらいにはなった。世の中でこのような将来役に立つ研究がなされていたことと、この研究が当初はそれほど注目されていなかったことに驚いた。今でもこのような重要だけど日が当たっていない研究が山のようにあるのだろうと思うと、科学雑誌がきちんと重要な研究を見極めて一般に公開する意義は大きいと思う。さて、もうひとつの特集である「シン・ゴジラの科学」は、科学者はゴジラが大好きなんだろうなという熱が伝わる記事だった。SF考証って、こんな感じでやってんだろうなと楽しさが伝わってくる。

  • たまたま興味のある話題が少ない号でした。

全5件中 1 - 5件を表示

日経サイエンス2016年12月号はこんな雑誌です

ツイートする