永い言い訳 (文春文庫) [Kindle]

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著者 : 西川美和
  • 文藝春秋 (2016年8月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (200ページ)

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永い言い訳 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • バス事故で、妻を失った人気小説家。「自己愛の度合いは激しいのに 、健全な範囲での自信に欠けていて 、厭世観が強」い人物であり、事故の発生時は別の女性とセックスをし、葬式のときも全く泣けなかった。そして事故現場で発見された妻の携帯には夫宛ての未送信のメッセージが…
    一方、妻の友人も一緒に事故に巻き込まれる。長距離トラック運転手の夫は妻のいなくなった家庭の再構築に必死になるが、空回りしか出来ない。

    通読して受けた印象は、この小説のテーマは「再生」。ただ、妻が死んでも泣けなかった男が何に対して「再生」するのか?いや、再生が必要なのか?最後の1行に至るまで、小説家とトラック運転手の長男、長女との交流、2人の男の対比を中心に様々なプロットを提供し、謎解きをしてくれる。その意味で「永い言い訳」という題名はお見事。気づいたら、殆ど一気読みだった。

    作者の西川美和さんは映画作家。この人の本は初めてだが、描写が映像的で心地よい。死を扱ったテーマだが、くすぐりも多く、暗い本ではない。

    例えば、開成に行った先輩を羨む長男への小説家の言葉
    「何かを選べば 、何かを失うんだ 。開成に女がいるか ?君は女子の胸がデカくなって行く過程を観察するチャンスを生涯失う 。昨日まで真っ平らだったワイシャツの背中に 、ある日突然一筋のブラジャ ーの線が出現する 、その日の感動を知らずに大人になる」。
    なるほどと素直に思った。

    死は絶対にやって来る。妻を失ったとき、自分はどうなるのだろう、どうするんだろう。考えさせられる本。読んで良かったの★★★★。

  • 久しぶりに読んでて止まらなくなってしまった。ずっと余韻が残ります。

  • うじうじ言い訳じみててどうなることかと思ったけれど、案外ちゃんとしてた。人生は他者なんだ、確かに。あと偶然クリスマスに読み終えたので、★1つプラス。

  • 主観がコロコロと変わり、登場人物達の内心をお互いが考察していく場面が、まるで綺麗な不協和音を聞いているかのように人間的で矛盾的で面白かったのを覚えています。結婚したくなくなるけど結婚したくなる。そんな一冊でした。

  • 著者の作品で映画化されたのを何作か見てきて、もう既に何作も読んできた気になっていたが、読むのは初めての作家だと気づく。妻を事故で亡くした作家が同じ事故で母を亡くした家族との共生が面白い。家庭を初めて知った作家がすでに冷え切っていた妻との関係を自己の中で修復しようする姿が哀れであったが、妻に先立たれた男はほんとうに情けない。登場人物が自分の視点で語りだす作風も面白く、他の作品も読みたくなった確かストックとしては持っていたはずだが映画を見てしまうと後回しにしてしまうパターンだ。映画の方も楽しみだ。

  • パールバックの大地を読んでると中に、偶然手に入ったので、本当は大地を読み続けたいと思いながら、読み始めた。偶然にどちらの話も妻のことを愛さなくなって、妻を看取った後からなき妻の気持ちをおもんばかる展開が重なり、旧くて新しいテーマなのかなと感じた。永い言い訳の解説にあるように、すでに取り返し用もなく関係の損なわれている夫婦と、幸せな四人家族、その二組からそれぞれ妻=母が失われるところから物語は始まっている。主人公の幸夫の心うちが示されるため、多かれ少なかれ、同様の心根があれば、身につまされる話となる。逆に純真な陽一のような人が読むと、主人公のような人間がいるのかと驚くようなそんなお話し。読後感は良いが、これから自分がどんな人生を送るかは読者次第であり、突きつけられたものは重たい。

  • 映画化の帯が、文庫の9.9割くらいを覆っている、このインパクトと、西川美和さんだよというのと、解説が柴田元幸さんだよ、という三点盛りに、これだ。

    <妻が死んだ。
    これっぽっちも泣けなかった。
    そこから愛し始めた。>

    買わないわけがない。

    主人公の衣笠幸夫くんは、名の知れた作家なのだけれどそりゃもうダメ男で、奥さんの夏子さんに徹頭徹尾無関心、だから夏子さんがバスの事故で亡くなったと聞いたときも、妻の旅行先も確かじゃなくて、持ち物すらはっきりと本人のものだと確認できないようなていたらくだったわけだ。

    奥様が亡くなってまぁかわいそう、という世間の目に反して幸夫くんは全然泣けなくて、妻夏子と一緒に旅行に行って、同じように亡くなった大宮ゆき、の遺族の一家と知り合って、その触れ合いを通じて魂を癒していく。
    大宮家の二人の子供の時間の進み方の確かさが、自分が誰かの役に立っているという実感が、幸夫くんを支える。
    母を亡くして、父は長距離ドライバーという環境の大宮家にとっても幸夫くんの存在は渡りに船、まるで四人は家族のような絆を形成していく。
    夏子さんといたときは人を傷つけるのが特技だよ、みたいな男に見えていた幸夫くんが、この家族には妙に優しい。別人のように優しい。


    しかしここで終わらないのが西川作品だよということで、西川さんは傍から見たこの関係を「同じ環境で家族を亡くした者同士が、お互いの心に空いた穴を埋めように共存しながら再生し始めた、というおはなしか。ほんとかよ。」とシニカルな視点で刺してもいる。


    またまた無関係な他者は、ドキュメンタリーTVを観たあと、津村(幸夫)にこんな手紙をよこす。
    「芸のある我が悲劇というものを見せては頂けないでしょうか。」
    うーんぞっとするような無神経。
    でもだれか言っちゃいそう。


    とにかくそんな足場フラフラのところに、鏑木先生、という女の先生が出てきて、ぐんぐん家族に打ち解けて、四人の危うい絆はバシャッと崩れるというか、幸夫くんは居場所を失ってしまう。
    (というよりも、失った、と感じてしまう。)

    そうしてやっと、夏子さんのことを思う。
    失っても取り戻せない時間を思う。夏子さんが自分を愛していたのか、携帯電話に残っていたように<もう、愛してない>のか、どこでボタンを掛け違えたのか、自分の犯した数えきれない過ちについて、思う。
    けれどもう決して取り返すことはできない。
    時間が戻ることはない。

    そしてそのさみしさを抱えたまま、「書く」ことを選ぶ。
    たいていの物語はまず「喪失」があって、それから「再生」がある。
    けれどこの物語は違う。

    まず「再生」があって、それから「喪失」がある。
    「再生」があってはじめて「喪失」を受け止めることができる。
    だから読者も、たったひとりで宙に放り出されたような頼りなさと、でもそれでも大宮家という命綱はありますよ、というような、幸夫くんの気持ちを追体験することになる。
    よかったよかった、じゃなくて、これからだぞ!ずっとだぞ!みたいな、このほろ苦さ。


    ここで想像の翼をはばたかせて、なぜ彼が「衣笠幸夫」と「津村啓」いう二つの名前を持つ必要があったのか考えてみたい。
    「津村啓」は、洒落ていて、ウィットに富んでいて、見目もよくて、万人受けする、そういうキャラクターとして描かれている。
    「衣笠幸夫」は違う。妻との会話の糸口ひとつ見つけられないし、物ほしそうに4歳の子のお弁当見たり、あまつさえ不審者では?と勘ぐられたりする。全然かっこよくない。
    読んでいて思ったのは、幸夫くんは、夏子さんといるうちに、「津村啓」である自分を捨てられなくなったんじゃないかなあ、ということ。
    それはたぶん、夏子さんが... 続きを読む

  • 【妻が死んでも泣けない男のラブストーリー。映画化話題作】予期せず家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか――。人を愛することの「素晴らしさと歯がゆさ」を描ききった物語。

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