舞台は今度はオランダへ。
あいかわらず「ドラッグ恐ろしい」って思う話だし、さらには犯罪ミステリみたいになってきて、ああもう絶対に最悪の結末になると絶望的な気持ちで読み進んでいたんだけれども、ふっと救いがやってきた。ほんとに、もう絶対だめだ、と思ったとき、「ふっ」と希望がさして浮かび上がったような感じがした。
ラストは、主人公の独白みたいな感じで、ちょっと観念的というか抽象的というか、難しくて、期待したようなカタルシスというか、盛り上がりというか、いわゆる大団円的なものがなくて、ちょっと肩すかしくらったかな、と思わなくもない。主人公のその後がもっと知りたい。
それでも、ラストを何度か読み直したくらい、感動した。難しくてすべてを理解したとは思えないけれども、なにかとても共感するものがあって。
「つまり人生は災難なのだ」
「運命は残酷だが、でたらめではないかもしれない」「自然」(つまり「死」)は常に勝つが、それはぼくたちがそれにひれ伏さなくてはならないという意味ではない」「たとえここにいて大きな喜びを感じるときばかりではないにしても、とにかく懸命に打ち込むのがぼくたちの務めだ」
ずっと読んできて、本当に胸が痛むことばかりで、悲しいことばかりで、主人公がドラッグに耽溺しても、生きることを放棄しても、それはしかたないと思えるくらいで、このあとも彼は楽しい人生は送れないのかもしれないけれど、それでも、こういうことを読者に訴えかけられるというのがすばらしいというか。
生きていくしかないのだな、と思わせられる。
絵画や芸術品など、長い長い年月を経て不滅の「美しいもの」のことを思った。
急に現実的な話になるけれど、ならばそういう「古きよきもの」をもっと顧みるべきなのかな、と思ったりした。