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- / ISBN・EAN: 4589921403801
感想・レビュー・書評
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これは今年劇場で観賞しました。
2015年ドイツ映画。監督・脚本はデヴィット・ヴェント。原作はティムール・ヴェルメシュの同名小説です。
主演はアドルフ・ヒトラー役のオリヴァー・マスッチ。それに彼を売り出すことになるフリーライター・ザヴァツキ役のファビアン・ブッシュ。その他としてはテレビ局の副局長役にクリストフ・マリア・ヘルプスト、局長役にカッチャ・リーマンなど。
ある晴れた日のベルリン。かつて総統地下壕があった場所にアドルフ・ヒトラーがタイムワープしてきた。あまりにも似ている役者と勘違いしたフリーライターのザヴァツキは、彼をドイツ中へ連れ回し彼の姿をフィルムに収めるのであった。Youtubeでその映像が爆発的アクセス回数になっていることを知ったテレビ局は彼をさらに売り出すべく様々な番組へ出演させるのだが・・・。
ヒトラーやナチスネタはタブーであると聞いていたドイツで製作された、ヒトラーをネタにしたコメディー映画です。コメディというかパロディなのですが、ホロコーストをネタに使用したり、ヒトラーをギャグとして扱ったりと一見何でもありの映画のようにも思えるのには驚きました。
しかし、映画の真のテーマとしては、徹底的にヒトラーの存在を笑い飛ばすのと同時に、ヒトラーの言説は知らず知らずの内に人々の心に浸透するものであり、あなたもそのような大衆と同じなのだということを皮肉っていたのだと思います。たびたび挿入されるドキュメント風に撮られた「ヒトラー」と大衆の交わりの場面や、現代ドイツの政治状況や難民受け入れ問題の描写などはそうした方向に向かう可能性を指摘したものであるといえます。
アドルフ・ヒトラー役のオリヴァー・マスッチは、あの服装と姿をしていればまあ似ているようで似ていない気もするしといった感じなのですが(笑)、話し方や仕草などはよく似せた感じで演じていたと思います。特に演説の場面については迫力ある演技で魅せてくれました。
映画そのものについては、ヒトラー映画の集大成を自負しているのか、チャップリンの『独裁者』やブルーノ・ガンツ主演の『ヒトラー 最期の12日間』を始めさまざまなヒトラー映画のワンカットが挿入されていましたが、ヒトラーのパロディの面白さもさることながら、特に『ヒトラー 最期の12日間』の一場面のパロディがあったりしてなかなか楽しませてくれました。
ただ、あまりにもパロディやギャグを意識し過ぎたせいか中だるみ感があったようにも思い、もっと全体の時間を絞って濃縮した方がよりテーマをわかりやすくできたのではないかと思います。個人的にはヒトラーの演説場面をもっと観たかったかな。
この映画や原作小説はドイツに受け入れられたようですが、忘却や風化の故ではなく、批判的な面白さとして受け入れられたと思っています。日本もですけど。
この映画の皮肉が本当に皮肉にならないよう心に留めて欲しいものですね。
それにしてもこのような映画が作られるとは、あきらかに時代は進んでいるのですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こちらも「Bookmark 」からの思い出し記録。
ちょうどトランプが出てきて、Brexitが決まって、世界に右傾化の波が押し寄せてきた、というのを肌で感じるタイミングで観た。
すっごい面白かったんだけど、同じくらい背筋が寒くなった記憶がある。
数あるヒトラー映画のパロディが豊富と聞き、わざわざ「ヒトラー 最期の12日間」を予習して映画館に臨んだ。 -
自殺する直前のヒトラーが突然現代に舞い降りた。彼はヒトラーを演じる芸人として人気を得ていくが。。。
大人気小説を映画化。
かなり小難しい小説なのでどう映画化するのだろうと思ったが、原作をちゃんとなぞりつつ大胆な+αを加えている。
その+αとはドキュメンタリー要素。 オリヴァー・マスッチ演じるヒトラーが実際に街に出て色々な市民と話すシーンをそのまま映画に入れているのだ。ヒトラーを受け入れる人、嫌悪する人、反応はそれぞれだが、この生の反応は面白い。
映画化にあたってちょっと残念だったのは原作よりヒトラーを分かりやすく危険に書いているところ。原作のヒトラーはネオナチよりリベラルに共鳴し、ヒトラーとリベラルが紙一重であったことをうかがわせる。ちなみに原作のラストは、ヒトラーが今までユダヤ人を敵だと思ってたが、実はそれはユダヤ人ではなくグローバル企業だっと悟るところで終わる。
まぁそれでも映画化の難しい小説をうまく映画にしたと思う。
興味を持った人はぜひ小説も読んでほしい。 -
こりゃすごいわ。
小説のあらすじ見てぶっ飛んだけど、映画になるとこうなるんだ。すごいわ。
卑怯なテレビマンの親父が「ヒトラー最後の14日間」をきれいになぞるの大爆笑だった。
ヒトラーめっちゃ頭いいし、賢いし、人たらしだ。そこに現代のカメラマンたちの思惑が重なってうまいことストーリーが膨らむ。ヒトラーを潰したい人間、ヒトラーで稼ぎたい人間、先導される人間、危険視する人間。
ドイツでこれやるってマジですごいよね。
ヒトラーの野心やばい。
ヒトラーは現れ、世間を動かし、去り、そしてまた現れる。ヒトラーは帰ってくる。 -
ER IST WIEDER DA
2015年 ドイツ 116分
監督:デヴィッド・ヴェンド
原作:ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』
出演:オリヴァー・マスッチ/ファビアン・ブッシュ/クリストフ・マリア・ヘルプスト
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/
原作は未読。あのヒトラーが現代にタイムスリップしてきたら・・・?というブラックコメディ。序盤は、タイムスリップものの定番であるところの、昔の人が現代にやってきて文明の利器に驚く系のギャップで笑いを取り、周囲の人はコスプレかモノマネ芸人だと思ってとくに不審がりもせず、というお約束の展開。
テレビはもとより、観光客が一緒にスマホで自撮り、SNSで拡散、Youtubeで配信など、いかにも現代らしいツールを使って、ヒトラーが受け入れられていく過程は現代ならでは。ありえそう、と思わされる。この時点では映画の中の「国民」も、映画の外の観客も、ヒトラーのことを新しいゆるキャラ程度にしか認識していない。
大きな転換があるのは、認知症のお婆さんがヒトラーが本物であることを見抜き罵倒する場面から。怖いのは、ヒトラー本人が言うように、結局彼を指導者として選んだのはまぎれもなく「国民」自身であったということ。確かに彼の演説には説得力があり、ブレない指導者としてのカリスマ性があり、国民は後でそれが間違いだと気づくとしても、一度は彼を選び、彼を求め、彼の思想を良しとしたわけで。現代にタイムスリップしたことを彼は「神意だ」と言う。つまりまた彼のような人間を人々が潜在的に求める時代が来てしまっているということ。これは怖い。すごい皮肉だ。
後半、ヒトラー自身がこの体験を書いた「帰ってきたヒトラー」という本(ヒトラーにとってはノンフィクションだが、読者はもちろんフィクションだと思っている)がベストセラーになり映画化され、映画の中のストーリーと映画そのものが混在する構成は面白かった。
あとひとつ、犬好きの人にとっては大変不愉快な場面があるので要注意。個人的には映画館で、その場面で大声で笑う客が数人いたのが不愉快でした。確かにこの場面でのヒトラーの動作自体はコミカルだったけど、ぜんぜん笑うところじゃない。ここで笑うような人間が、きっとヒトラーのような人間を支持するのだろうなと思って気持ち悪くなった。 -
★★★liked it
『帰ってきたヒトラー』 デヴィット・ヴェント監督
Er ist wieder da
『おい、お前知ってるか。70年前、日本とアメリカが戦争したんだって』
『えー、うっそー』 『バカ、マジだよ』 『えー、マジか。で、どっちが勝ったの』
こういう時代ですから
ドイツではアドルフ・ヒトラーがタイムスリップして帰ってきました。
ヒトラーがそんなに悪くないような雰囲気の描かれ方
もっとタブー扱いなのかな?と思ってたら、そうでもないんですね
時代がズレたギャップネタはおかしい
ヒトラーが各地をめぐり、一般の人と対話をするのも面白い
ドイツの移民政策に対する不満が本音で語られたリ、お芝居じゃないよね、アレ。
後半はヒトラーが思った通りに進んでる感じで、ちょっと笑えないけど
なかなか面白いストーリーでした。
終盤のシーンで
本物が現れたら、歴史は繰り返すと?
『戦後70年間、歴史教育をしてきて、子供たちも飽きてきてるわ、もっと信頼しなきゃ』
原作が出版され、こういう映画が公開されることもだけど
戦後にドイツが歩んできた道、国民が積み重ねてきたものに対しての自信を感じます。 -
非常に怖かった。すごいホラーだ。
ヒットラーが怖いのは、恐怖政治を牽くからではなくて、皆の中にある潜在意識を引き出して言語化することに長けているからだ。中途半端な寛容や忍耐は面倒だし疲れるそこを見抜いて打ち砕いてゆくのだ。それをしなくてもいいんだよ、といわれることをどれだけの人が望み、今の世界に繋がっているのか。戦争に踏み出すまでも無く紙一枚の所にその世界はあるのだ。