サピエンス全史(下) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 [Kindle]

  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • 面白かった〜。ずっと読みたかったけれども手が出なかった本書をようやく読み終えた。

    本作では帝国と宗教と科学の交わりと資本主義への影響、そして人類(著者は『サピエンス』と呼ぶが)の果てなき欲望がもたらす今後の展望が述べられている。
    もっとも著者自身が「ネアンデルタール人にハムレットを見せるようなもの」と言う通り、この先のサピエンスの命運について予想することは困難で、意味がないとさえ言える(何せ果たしてサピエンスがサピエンスであり続けるかどうかわからないのだから)
    実際、この本が出版された2016年以降の7年間に、色々と世界は変わった。
    パンデミックのワクチンあっという間にできて(非死が垣間見えた)、戦争が起き(著者が『起こりにくい』と表現したタイプのものだ)、また一方でAIの進歩は著者が最終盤で述べたシンギュラリティを近づけたようにも見える。

    特に何かに役立つわけではない。
    だが凄まじく面白い。
    人類に広く影響を与えた帝国・宗教・科学・資本主義など幅広い分野への知的好奇心を刺激する一冊であった。
    例えばなぜヨーロッパ人が遠い世界をそれほど知りたがったのか、などについてはあとがきに名前の出たジャレド・ダイアモンドの名著『銃・病原菌・鉄』も読むと理解が深まりそうなので今度トライしたい。

  • 農耕、都市化、書記、貨幣、帝国、科学、産業、あと宗教も出てきてたかな。事実というか、史実を並べるのではなく、人間、いやサピエンスの行動様式を並べることによって、進化を含めた全史を語る。刺激的な本だった。とても内容が濃ゆいので、読み返すごとに新たな発見がありそうだ。ホモ・デウスの方は最近買っておいてあるけれど、コロナ禍を経て、大幅に物事の見方はかわっただろうから、ハラリの著作の焦点は本書じゃないかな、なんて言い方は生意気か。

     サピエンスは狩猟採集の生活を経て農業革命が起こり、環境に働きかける力を手に入れた。たぶんそれによって、集団としての力は増えたのだろう。個体数も増えたわけだから。ただ、一方で個人としての生活、運命はより過酷なものになったと考えられる。農耕なんて、たいへんだし、社会が複雑化すれば貧富や身分とか生まれるわけだからね。

     集団と個人のコントラストを考えたとき、ふと大日本帝国が頭に浮かんだ。特攻なんて愚かな作戦は、天皇という頭さえ残っていればよいのだ、という考え方から建てられたと聞く。平成、令和ときた日本人は、特攻を愚かという人の方が多いと思う。そうじゃない人もいるかもしれないけど、自分で行きたいとは思わない人の方が多いだろうなぁ。それは集団から個人に、重みが変わったということじゃないだろうか。たかが数十年のレベルで変わる程度の話かもしれないけど、個体から集団に重きを置かれたサピエンスの行動様式は、飢えることがなくなった現代にあって、再び個体に比重が移っている、なんて話は考えられないかなぁ。

    あるいは、ちょっとした変化で、また特攻を正統な作戦と考える社会が現れたりするんだろうか。

  • 上巻に引き続き、歴史上の重要な転換点について、その背景や影響を丁寧に取り上げてくれる。下巻は宗教、産業革命、市場経済、国家等がメインテーマ。歴史的出来事や思想、概念の結びつきが見えて面白い。例えば、大航海時代の中で信用取引が発展し、旧態依然とした帝国国家に代わり、市場経済の保護を期待できる国家が台頭した話や、無知を知り未来に期待を向けることで近代経済が発展してきた話。学校で何となく学んだつもりになったことが、こういった変遷の中でどう位置づけられるかを実感するために、再度勉強したいと思った。

    それにしても本書と真摯に向き合うと、自分の拠り所とする思想や信条を無批判に肯定することに躊躇いを持ち始める。今の当たり前は、これまでの人類の試行錯誤の積み重ねであり、それは良い結果を生み出した面もあり、同時に地球と人類を含む地球上の生物に対して多くの悪影響を及ぼした面もある。それら含めて、結局何が正解か分からない中でも、世界は前に進んでいく。せめて、少しでも多くの正解を得るために、多くのことを学び、考え、行動を決め、その結果に責任を負えるようになりたい。そんな自分の行動原理に刺激を与える本でもあった。

  • 神やイデオロギー、国家といったあらゆる概念は『フィクション(虚構)』に過ぎないと喝破する意欲作。

    ハラリ氏はこれらのフィクションについて、支配層が大衆をまとめるために(時に搾取するために)生み出したプロパガンダで騙されないように、と警笛を鳴らしているわけではない。

    これらのフィクションが人々の協力を促して秩序を維持し、集団の生存戦略にも寄与していることにこそ、注目したい。シキタリ、ルールなどのフィクションを盲信するのではなく、誰が、いつ、何のためにこのフィクションを生み出したのか?をこの本で辿ることで、それが機能する面と不必要な面を見極めようとするキッカケとなり、その境界線を考える視座にしたい。

  • 大著の上巻に続いて、下巻をkindleで読了。
    現人類であるホモ・サピエンスとはいったい何者なのか。これが本書の主題だ。そして、その解読を試みる著者はまるで遠く地球の外にいて、そこから地球上のホモ・サピエンスの進化と行動をつぶさに観察しているかのようだ。ネアンデルタール人などヒト属は他にもいくつか存在したが、なぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのか。それは、多数の見知らぬ者同士が協力して、物事に対処することを覚えたためで、そして、この能力の取得を可能にしたのは、他の生き物が決して持つことがなかった「想像力」を身につけたからだと解く。これによって、人類は「共同主観」を持つに至る。この考えを軸に俯瞰すると、人類が過去から現在まで共有しているあらゆるものの誕生と変遷が説明できてしまう。伝説や神話から、貨幣、帝国、宗教、科学まで。
    この視点で歴史の教科書の1ページ目が書かれたなら、より多くの若者が歴史に興味を覚えるだろう。著者は『歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を広げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ』と言う。そして、最終の第20章では、その可能性についてしっかり言及する。AIという言葉こそ使っていないが、それがもう現実のものになっていることをふまえた著者の指摘は、第19章まで読んだ読者なら唸らざるを得ないだろう。

  • 科学革命の功罪が、具体的事例と共に語られる。
    神の世界から、人類が神となる世界へ。全能とまでは行かないが、それに近づいているのかも。

  • 下巻はさらに興味深い。
    想像ができ、答え合わせができる世界観が展開されている。
    この著作の時代から5年以上経過した今。
    想像していた世界が実現しようとしている。
    さらに想像を超える世界の兆しが広がっている。

    科学革命によって、サピエンスが空前の力を獲得し始めた。
    科学は政治と経済の相互支援依存によって、新しい力を得る強化ループを形作った。
    しかし世界は「幸せ」になったのか?
    「幸せ」とはなんだ?
    私たちは科学の進歩の方向性に影響を与えるために、「何を望みたいのか?」を考えなくてはいけない。

    「何を望みたいのか?」を考えないと、サピエンスの時代が終わり、新しいアイデンティティー体が支配する時代が到来しているかもしれない。
    その時代では、恐竜時代を語るように、サピエンス時代が語れているかもしれない。

    LLMがその入口に踏み込んでいる。

  • これから、ホモサピエンスはどこへ向かうのか。考えずにはいられません。

  • 圧倒的な全体感で語られる、人類史。
    なぜ人類は地球の覇者となれたのか、そこには認知革命というパラダイムシフトがあったことから、現代までひいてはこれからの未来を紐解く。
    人類史の制度の変遷の部分が特に面白い。
    「神話」が大きなコミュニティにおいて全体に波及させる重要なカギとなった。
    ここでいう神話は、宗教も含むが、資本主義や共産主義などの比較的新しい経済の仕組みも含む。

    ・物理的変革
    ・化学的変革
    ・生物学的変革

  • もう一度読み返したいと思います。
    理解した気になって終わってしまっては、もったいない。ハラリの別の著書もチャレンジしたくなりました。
    未来の予測、ホモサピエンスは何を望んでいるのでしょう。
    仏教もかじってみたくなりました。

著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ユヴァル・ノア・ハラリの作品

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