とっぴんぱらりの風太郎(下) (文春文庫) [Kindle]

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  • 前巻のどちらかと言えばほのぼのとした雰囲気の風太郎の物語から、戦が主になった下巻ではシリアス一辺倒、人もよく死ぬ、昨今の小説では見かけなくなった展開が繰り広げられます。それだけに真に迫り、泣けてしまう場面も、心にずっしりと響くものを感じます。戦争というものの残酷さをリアリティを持って感じることで、その悲劇を起こしてはならないと、全編を通じて訴えてくる、そういった趣旨も持っていたのではないかと思います。それほどに訴えてくるものは、当たり前で、それゆえ避けられがちなもの、だからもう一度目を向けて欲しいものだということを聞き取ることができたのではないか、読後の感想として感じています。
    風太郎と賑やかな仲間の物語は、ここでスッキリと終わることになりました。

  • 圧巻のクライマックスというのか、壮絶というのか、人間てこんなにしぶとく死なないのか、とにかく託された子は生きた。

  • 『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』など、西日本を舞台に、その土地の歴史にまつわる壮大で不思議な世界を提示してくれる小説家、万城目学。

    『プリンセス・トヨトミ』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4167788020
    『偉大なる、しゅららぼん』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4087451429

    僕もその’’万城目ワールド”に魅せられている、読者のひとりです。

    書店巡りをしていたら、文庫版上下巻でこの小説が平積みされていたので、電子版を探して、読んでみることにしました。

    物語のはじまりは伊賀。
    そして、主人公は忍者の風太郎。

    冒頭に描かれる騒動によって、伊賀を離れなければならなくなった風太郎。
    京の郊外でひっそりと身を潜めていた彼ですが、そこに忍者仲間、そして「ひょうたん」がやってきます。
    それをきっかけに、京の街に出るようになった彼ですが、やがて望まぬ形で、諍いや、さらに大きな争いに巻き込まれる羽目になって・・・という展開。

    時代的には、関ヶ原の戦いが終わった後から、大坂夏の陣で豊臣家が滅亡するまでの期間が舞台になっています。

    戦国時代という特殊な時代の中で必要とされ、進化してきた、忍者という存在。
    その末期に生を受け、忍者としての教育を受けるも、「落ちこぼれ」になってしまった風太郎。

    そんな主人公が、伊賀の忍者という境遇、そして時代の移り変わりというものに翻弄される姿が、数々のアクションシーンを交えて描かれています。

    伏線も多く張り巡らされていて、そのストーリーを追っていくだけでも楽しめる小説かと思います。
    そして読み進めていくうちに、権力が移るというのはどういうことなのか、今まで必要とされていた存在が不要とされるとはどのようなことなのか、読者に考えさせるような内容にもなっています。

    著者にしては全体的に暗いトーンに感じますが、細かい描写にはユーモアも交えられています。
    またキーアイテムとして「ひょうたん」が取り上げられていることにより、万城目学らしい不思議ワールドに、読者を誘い込むような形になっています。

    今回もその世界観に引き込まれました。
    作品が発表されるたびに、違う側面を見せてくれる作家さんですね。
    次作の発表を楽しみに待ちたいと思います。

    『とっぴんぱらりの風太郎(上)』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B01LW01SXS

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著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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