ロブスター(字幕版)

監督 : ヨルゴス・ランティモス 
出演 : コリン・ファレル  レイチェル・ワイズ  ジェシカ・バーデン  オリビア・コールマン 
3.25
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  • THE LOBSTER
    2015年 ギリシャ+フランス+アイルランド+オランダ+イギリス 118分
    監督:ヨルゴス・ランティモス
    出演:コリン・ファレル/レイチェル・ワイズ/ベン・ウィショー/レア・セドゥ
    http://www.finefilms.co.jp/lobster/

    舞台設定は「カップル」でなければ迫害される不条理ディストピア。妻に別のパートナーが出来て離婚、「独身者」になってしまった男(コリン・ファレル)は、独身者だけが集められる施設(見た目は素敵なホテル)に赴く。どうやら強制で、そういう法律らしい。集められた独身者は相手に恵まれなくてシングルなだけの若くて可愛い子もいれば、主人公のように離婚したもの、死別したものもいて年代も様々。

    彼らに与えられる猶予は45日間、その45日の間に集められた独身者の中からパートナーをみつけなくてはならない。なんだか「ねるとん」や「あいのり」のノリでもあるし、要するに泊まり込みの婚活パーティですね。しかしカップルになるだけでは駄目で、その後さらに厳しい審査がホテル支配人によっておこなわれ、正式なカップルと認められればようやく町に戻って普通の暮らしを送れる仕組み。そして45日の間にカップルになれなければ、無益な独身者として、なんと「動物」に変身させられるという刑罰が待ち受けている(※動物は事前に好きなのを申請しておける)。猶予期間を延ばしたければ「狩り」の時間にホテル周辺の森に隠れている脱走独身者たちを見つけ出して捕獲、すると一人当たりにつき1日猶予がプラスされる。

    以上が「ルール」なので、なんで?どうして?どうやって?等の疑問は差し挟まないほうが楽しめます。バトルロワイヤルの類と同じで、そういうルールの社会で人はどうするか、のほうが主題。森での「狩り」のシーンとかほぼ「ハンガーゲーム」のパロディ状態(笑)日本でも昨今多少マシになったとはいえ、クリスマスやバレンタインに「ぼっち」などありえない、「カップルでなければ人に非ず」的な風潮は多少なりとも残っているし、そういうカップル至上主義文化、さらに結婚至上主義な婚活文化を皮肉っているようでもあり、しかし逆にこのまま少子化などの問題が拡大すれば、独身、子なしは犯罪、と見なされるディストピアな未来が本当に来ないとは限らない。独り者としては身につまされる(苦笑)

    それにしても動物に変身させられるとはこれまた奇抜な。日本人なら泉鏡花の『高野聖』を思い浮かべるところ。余談ですが映画公式の「ロブスター動物占い(http://lobster.doubutsu-uranai.com/)」を私も試してみたところ、「マニアックな犬」という結果が出ました(笑)「ひとりが好きで、自分の流儀をもっている。初対面ではとっつきにくい」そうで、まあ当たっているといえば当たっているような。まあどうしても動物にならなくてはいけないというなら、私はワニがいいのだけれど。ちなみにタイトルの「ロブスター」は、主人公が変身したい動物。甲殻類とは渋い。そして主人公は犬になった兄を連れている。

    まあそんなわけで、なんとかカップルになりたい相手をみつけたコリン・ファレルだけど、相手の女性がとんだサイコパスだったせいで酷い目に合わされ、なりゆきでホテルを脱走、森に隠れ住む独身者たちのコミュニティに助けられ、素敵な女性レイチェル・ワイズに出会いお互い一目惚れ、恋に落ちる。普通ならこれで二人は正しく恋愛し、社会復帰できてめでたしめでたしになるところなのだけど、そうは問屋が卸さないのがこの映画の嫌なところで深いところ。

    最初は社会と闘っているのかと思ったこの独身者コミューンのリーダー(レア・セドゥ)は、いったいどんなトラウマがあるものか謎ながら、カップル文化をいたく憎んでおり、本来なら仲良く協力しあってるうちに恋に落ちる二人がいてもよさそうなこのコミュニティの中で、厳重に恋愛禁止、禁を破ったものには恐ろしい罰則を設けて虎視眈々と、イチャつく二人を監視している。せっかくカップル地獄から逃げてきたと思ったら、今度は独身者地獄に来てしまい、おいおいどっちも地獄だよという逃げ場ないじゃんどうすんだよっていう(苦笑)なんかちょっと連合赤軍の浅間山荘事件を彷彿とさせられる。レア・セドゥが怖い。

    ラストは鏡花ならぬ谷崎の「春琴抄」展開で、これまた怖い。なんだかもう、そうまでして誰かと伴侶にならねばならないのなら、もういっそロブスターになってしまったほうが幸せだったんじゃないか?と思わされる。結婚しても地獄、しなくても地獄、恋愛自体も地獄。ならば本当の幸せって一体何かしら?みたいな。とりあえず私はもうワニになってしまいたいです。

    しかし、観たあと色々考えさせられる、という意味ではとても面白い作品だし、着想の奇抜さだけでも一目置きたい映画だけれど、演出?というか映画自体としては退屈な側面もあり、もっと面白くできたのでは?という不満も少々残りました。

  • むっちゃ期待して見たのだけど、今一つ。ヘンテコな雰囲気は買うけども、少しやり過ぎにも、また同時にどこか物足りないようにも見えた。監視社会を描いたSFという点はありがちな設定にも感じた。しかしロッテン・トマトの評価とはやっぱり合わないなぁ・・・。

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