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感想・レビュー・書評
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Kindle Unlimitedで読了
十二代目市川團十郎丈の奥様、堀越希実子さんのご本。成田屋さんご一家が、どんなお食事を愛し、どんな家庭を営んで来られたのかがよく分かる、上品な料理と随想の一冊です。どのお料理も、他の方もレビューにお書きですけど美味しそう。奥様が手塩にお掛けになったお料理のほうが、私は、豪華なお料理よりも滋味がありそうで、作りたくなりました。そう、驚いたことに、私でも真似して作ってみたいお献立、いっぱいでした。柔らかな声が聞こえてきそうな、作り方の記述は、きっと、亡きお嫁さん、小林麻央さんにお料理をお教えになる口ぶりのよう。とてもわかり易かったです。
もともと、歌舞伎のファンでもある私。三枡のあしらわれた器の写真や、鎌輪ぬ柄の浴衣のお話だけできゅうんとなってしまうのですが、歌舞伎のおうちの生活を知ることが出来るのもうれしいところ。ゴシップとか推測に一番遠い、堅実で穏やかな筆致に好感を持ちました。いろいろなことがありましたが、成田屋さんのお宅は、本来温かい、良いご家庭なのだと思います。
まだお元気だった小林麻央さんに対する、こまやかで深い労りと愛情が、行間から瑞々しい雫のようにこぼれてきて、こんな素敵な嫁姑の関係があったのね、と本当に羨ましくて。十一代目市川海老蔵丈のことも、やっぱり応援して差し上げたくなってしまいます。芸道へのご精進、本当に目覚ましいですものね。きっとご家族のお気持ちは、全員あたたかく深く、今も繋がっておられるのでしょう。
ところで、二十歳なってすぐ位で歌舞伎を好きになり、他にも好きな役者さんはいるのですが、一番『歌舞伎役者らしい歌舞伎役者は?』って訊かれたら、十二代目團十郎さんを挙げると思います。初めてお顔見て、お名前覚えた時、「写楽の役者絵が、もっともっと男前になって抜け出てきたみたい。これはもう、姿から目元から声から、歌舞伎の役者さんだ!ひと目で解っちゃう!」って驚きました。
その團十郎さんの好物が、まぐろ、そして、はまぐりとお豆腐の小鍋仕立てとは。なんて嬉しい、泣かせるお好みでしょう。江戸っ子は鮪の新鮮な赤身が大好物。小鍋仕立ての方は、時代小説の名手、池波正太郎さんの作品からの実作だというじゃありませんか。
「團十郎さんも『剣客商売』読んでらしたのかなあ。私とおんなじだわ。うふふ。それにしても美味しそう。」
なんて、独りで悦に浸る、このちいさなファン心。おかしくも、素直な本音です。
早くに逝かれた團十郎さんを忘れないでいること。奥様のご本を楽しんで読むこと。そして、どんな状況でも歌舞伎を好きでいることが、このご本への、成田屋さんへの、私なりの心づくしだと、そんなふうに思うのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
飾らない著者の人柄が透けて見え
おもしろかった。
料理も美味しそう! -
市川団十郎の妻、希実子さんによる料理の数々。
名字は堀越さんだそう。そうか、市川じゃないんですね。
歌舞伎にさほど詳しくない身には、ややこしい話です。
名門の成田屋に輿入れするとなれば、奥様も梨園関係の家柄の方かと思いましたが、学習院大学仏文科卒の関係者ではない方でした。
結婚した時には、すでに団十郎には両親がおらず、番頭さんなどに家のしきたりを教えてもらったそうです。
季節の旬を取り入れた美味しそうな写真が紹介されています。
どれも香り立つようで、食欲をそそるものばかり。
それと同時に、団十郎の闘病生活も記されています。
歌舞伎役者のプライベートはよく知りませんでしたが、団十郎は白血病にかかり、長い闘病生活を送ったそう。
お医者さんが病名を告げる時に「アンディ・フグと同じ病気」と表現したことに、(亡くなった人を引き合いに出すなんて)と不快に思ったという彼女。
確かに、あまりに配慮が足りませんね。
骨髄移植の様子は、とてもきつそうでした。
また、息子家族の話にも言及しています。
団十郎、海老蔵の親子とも、一男一女の父なんだそう。
また、海老蔵ファンは海老を食べないのだそう。
反面、本人は好きで、よく食べているそうです。
もともと嫁の麻央さんに向けて書かれたというこの本。
夫と娘という大切な家族を失うのはつらいことですが、これからも美味しい料理を作り続けて、成田屋の人々を元気にしていってほしいものです。 -
麻央さんはもう発症していたのだろうか
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歌舞伎役者の女将さん業を垣間見られて興味深かった。ご自身が手がけている着物の写真をもっと載せてほしかったなと思いました
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料理本なんだけど、家族にたいする気持ちが伝わってくる。