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- / ISBN・EAN: 4988013163591
感想・レビュー・書評
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まさしくトルコ版ヴァージン スーサイズのような、透明感のある美しい5人姉妹の物語でしたが、ヴァージン スーサイズの憂鬱感、退廃的なイメージとは異なり、こちらの5人の少女は閉塞感の中にも強い反逆心と生命力に満ちていました。
窓からこぼれる眩しい光と、風になびく透き通るような柔らかい髪の毛、5人姉妹が重なり合うように寝転んだり、結婚式の日に5人で丸く頭を囲むアングルなど、始終彼女たちの美しさを印象付ける、いかにも女性監督らしい映像視点はとても透明感があってみごこちはいい。
瑞々しくてキラキラと輝くありのままの美しさに満ちた少女たちの海辺での映像が印象的なオープニングと、生きる力強さに満ちたエンディングに挟まれた中盤のショッキングな現実が日本に住む私にはとても信じられなくて、理不尽さに胸がキリキリしていた。
当たり前のように青春を満喫していた5人姉妹は、トルコの田舎の古い倫理観のせいで突然、叔父と祖母によって檻の中のように鬱屈とした家に閉じ込められ、まるで子供を産む道具として見ない知らない男の家庭に次々とお見合いさせられる。
時代錯誤の慣習に抑圧されながらも若すぎる少女たちの燃えるような心までは縛ることはできなくて、その5人は各々のカタチで反抗する。
ヨーロッパとアジアとイスラムの文化も交差するトルコはとても美しいエキゾチックな国だけれども、首都イスタンブールから遠く離れた田舎町ではこんな保守的な慣習が残り、女性たちが自由を得られないという閉鎖的な側面を持っている。
昨年、トルコのエルドアン大統領が「女性は子供を3人産むべき」「子供を産まない女性は欠陥品」と発言したことが世界で話題なったけれど、国を代表するこんな立場の人間が、女性は子供を産むための存在という考えや、嫁は若ければ若い方が良いという考えを増長させかねない発言を今の時代にすることで、女性たちの尊厳を奪い、生き方の自由を奪ってしまっているという恐ろしい現実を私たちも忘れてはいけない。
残酷な現実が続く中、古い慣習の罠にかかった姉たちを見つめながら、末っ子のラーレの、「私は大人たちの言いなりにはならない!」と誓ったようなまさしく野生馬のように逞しく、生命力に満ちた瞳に微かな希望が託される。
そういった意味では単なる切ないガールズムービーというくくりでは終わらない、監督の強いメッセージ性を感じる作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示