富国と強兵―地政経済学序説 [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 経済にとって切っても切れない存在、お金。そのお金=貨幣はどのようにして生まれ、どのように利用されているのか?を中心に、共同体としての国民と国家の起源。国家とは何なのか?そしてその国家を形成しうる為に必須となる貨幣とインフラの存在。その国家と経済の起源を世界中の地政学の観点で歴史を紐解く超大作。
    国家があるから戦争が起こるのではなく、戦争(国際ルール)によって国家が形成されるというのは、印象的でした。なにかというと、領土を守るためには徴兵が必用であり、そのためには国民の共同体意識をもってもらう為のインフラや社会保障が必用であり、それを経済として循環させる為には貨幣が必用であり、その貨幣を必要として国家が回るというものである。
    そしてその貨幣を守る(形成)するには領土(国家)が必用であると。
    昨今では当たり前のように語られるマクロ経済政策や中央銀行が最後の貸し手となる金融政策も、起源は戦争であって、それを民政化した。
    例えば日本の場合、社会保障制度や健康保険、労使関係や経営手法、メインバンク制や行政指導いった慣行や制度も、戦時中の統制経済体制にその起源がある。
    現代の身を犠牲にして働く風習とか、まさにそう感じますね。
    そしてこの傾向は日本に限った話ではなく、欧米諸国もおなじであるということです。

    本書は地政経済学という分野を構築・検討の書であるので、既存の経済学の歴史や思想的な違いなど、実態との検証含めた学術的な話が多分に入っています。
    よって、地政学の本として読もうとすると、とても冗長的に且つ、難しく感じるでしょう。

    第16章以降の後半部分としては1970年以降のブレストンウッズ体制の崩壊からワシントンコンセンサスへの流れ、新自由主義の展開から失敗への理由も、単一の観点・学問だけでは辿り着けない解だと感じた。
    その中でも冒頭で述べた貨幣観と国家観を理解しておかなければ、経済と政治の横の繋がりが理解できないと思われます。
    地政学とは、単一国家だけでは語れないなど、多くを学ばせていただいた1冊です。

  • 今日の資本主義経済の発展は20世紀の戦争/紛争により実現された。
    今日の新自由主義イデオロギー、グローバリズム、経済システムは変更しがたい経路依存性を持っており、金融危機を引き起こしてもなお生き残っている。
    しかしこの巨大な経路依存性を修正するような大戦争の圧力は、今日では期待できない。
    21世紀の地政学的紛争(新しい戦争)は増えるだろうが、新自由主義を修正し、より望ましい経済システムをもたらす圧力となる保証はない。

    これに対し、次のように締める。
    「ミネルヴァの梟は迫りくる夕闇とともに飛び始める」ならば、
    上述の「戦争なしには経済発展も社会的公正も実現できない」という現実は、すでに過去のものになりつつあるということである。
    つまり希望は残っている。

    学びとしても読み物としても、非常に満足でした。
    (真ん中200ページくらいはしんどかったけども。。。)

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著者プロフィール

中野剛志(なかの・たけし)
一九七一年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。九六年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。二〇〇〇年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。〇一年に同大学院にて優等修士号、〇五年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)など多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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