- Amazon.co.jp ・電子書籍 (202ページ)
感想・レビュー・書評
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長い間積ん読してたけど、もっと早く読んどけばよかった。
遺伝の話から始まって、教育そして生き方にまで触れる内容は一読の価値ありだと思う。
子供を持つ親にもぜひ読んでみてもらいたい。 -
この本は、教育に関する誤解を解く本だと思います。
教育に関する最大の誤解は、
「頑張れば、良い成績を取れて、良い仕事に恵まれ、良い人生を送れる」という誤解です。
このロジックを否定するのは並大抵のことではありません。
今の教育体系というか社会は、言語運用能力や数学的思考能力に長けている人に有利な社会です。
それは、知能指数という指標がそれらの能力を測ることを前提に作られているからです。
行動遺伝学の知見では、生まれつきに、それらの能力に差異が見られることを統計的に証明しています。
言い換えるならば、どんなに努力しても、優劣がはっきりつくということです。
よって「頑張れば、良い成績を取れて、良い仕事に恵まれ、良い人生を送れる」というロジックは、
知能指数が先天的に高い人に圧倒的に有利ということです。
それは、100メートルを早く走れる人とそうではない人と同じ理屈です。
後者には、何の疑問も持たないのに、なぜ前者にも、疑問を持たないのでしょうか。
単純にいうと、そう思ってもらった方が、社会システムが運営しやすいからです。
運営側の都合ということになります。
自分や他人を測るモノサシが複数あった方が、幸福に生きられる。
今の教育に必要なことは、そのモノサシを増やすことにある。
これが行動遺伝学が導き出した教育に関する提言です。
しかし、学校教育を長期間受けると、そのモノサシが固定され、少なくなります。
狭い価値観で自分を測り、他人を測るようになります。
学校で頻発するイジメや最悪の形での生徒の自殺は、生物的特性の他に、
やはり、「そういう価値観」が社会に蔓延しているからだと思います。
狭い価値観と、息苦しい人間関係で、
生きる意味を見いだせない若い子はたくさんいます。
「自分が好きなこと」、「得意なことで生きていくこと」は、
日本では、まずその価値観を否定されます。
それを言っていいのは、強者だけです。
「人生そんなに甘くないよ!」、「文句を言わず、働け!」と言われます。
しかし、良い教育とは、そういう価値観を認められる人間になることでもあります。
職業人生は、ますます長くなっています。
今高校、大学生の方だったら卒業してから、
50年近く働くことになるでしょう。
その場合、自分があまり好きでないこと、得意でないこと、
好きでもない場所で長期間働くことは、自分の人生にとって、
何らプラスではなくなるでしょう。
著者は、この本で、いろいろな教育提言を行っています。
それは、著者が教育者であって、長年、学生を見てきて、現状の教育に絶望したんだとおもいます。
しかし、自身が学ぶ学問で何とかしたいという思いから、この本を記したのだと思います。
よほどの問題意識がないと、こういった、分野の研究はできません。
行動遺伝学の論理は非常に強力で、ある見方では残酷に思えます。
「やっぱり、生まれつき、人生って決まっているんだ!」という価値観が日本で、
蔓延しています。そういった誤解を解くのに、
この本は、非常に有益だと思います。 -
本書の冒頭にも書いているとおり、もはや遺伝学では常識となりつつある話。
ただ、多くの日本人は知らない事実なのだろう。
知能における環境と遺伝の影響、またその割合。
本書ではおよそ50%ずつと言うが、他の著書や自分の感覚では成長に従って以下のように遺伝の影響が顕著になるように思う。
幼少期:環境50%、遺伝50%
青年期: 40%、 60%
以降 : 30%、 70%
だからと言って、環境や自身の努力が無駄では無いということは十分に留意すべきだ。
また幼少期に環境の影響が大きいと言うことは、青年期以降にもそのような環境に自身を置くことで、より成長出来る可能性がある事を示唆しているとも言える。
教育に関しても議論している。
当初(それが明治なのか、江戸時代の寺子屋・藩校なのか、もしくはそれ以前なのかはさておき)に導入した教育の目的は、全体的なレベルの向上(底上げ)にあったのであろう。
しかし現代ではその目的はほぼ達成され、今や個人の適性を発見するという事に移行していると認識すべきである。
如何に効率的に個人の適性を発見して、社会に貢献できる人材に育成出来るか。
これが遺伝学から見た現代教育の課題であるかもしれない。 -
一卵性双生児と二卵性双生児を比較することで、ある事象に遺伝がどの程度影響を与えているのかを調査したという内容。歳をとるほど遺伝の与える影響が大きくなるのか、小さくなるのか、については、少し意外な気もした。この手の議論は曲解されるととんでもない方向の主張を力を与えることになってしまう(ナチスの優生論など)が、その辺りについてはかなり気を使って書いているのだろうと感じた。
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ちょっと方向性は違うけど
マイケルサンデルさんの「能力主義は正義か」を読んでいると
更に興味深い。 -
統計的に遺伝の影響を分析する行動遺伝学の紹介と、それに立脚した社会と教育システムに係る論考。本書で用いられている行動遺伝学の分析手法は、一卵性双生児と二卵性双生児の異同を、遺伝・共有環境・非共有環境の三軸で抽出することで、遺伝の究極的な影響を洗い出すというもので、リーズナブルに思える。遺伝も環境も結局ランダムであることは科学的に明らかな以上、それらの影響を分析するには、統計的なアプローチが、遠回りなようで、実は唯一の実効的な手段ということか。教育システムへの提言や、Gritが否定されている点も興味深かった。
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★人間のあらゆる能力は半分程度が遺伝によって規定されている
衝撃の事実!
今まで努力してきたことはなんだったのか…とネガティブになってしまう内容です。
が!「遺伝だから仕方がない…」と悲観的になるのではなく無限の未来を夢見て色々な事にチャレンジしましょう!
自分では予想もしていなかった才能が自身の中で眠っているのですから…
■学力の70~90%は自身ではどうしようもないところで決定されてしまっている
結構ショッキングな話。
学校のお勉強とは一体なんだったのか…とネガティブになっちゃいます。
ですがムダな亊など何一つないのです。
数学・物理・古典などなど今は不要な勉学でもどこかで「あの時学校で学べてよかった♪」と思える日がきっとくるはずです。 -
行動遺伝学の研究者である著者がそこでの成果を元に各形質の生まれか育ちか問題などを解説。
若い頃より歳を重ねるほどに遺伝の寄与が大きくなる傾向になるという話はなるほどという感じ。
行動遺伝学ということで、この話はあくまで統計処理をした結果、ということは念頭において読むのが良さそう。 -
ワーママはるさん推薦
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自称、橘玲著「言ってはいけない 残酷すぎる真実」のネタ素として書かれた著作。自然科学(ここでは行動遺伝学)の知見は学説として常にアップデートされていくものなので「真実」ではありません。現段階の知見ですが、人間の諸能力における「生まれか育ちか」議論のうち「生まれ」の要素はどの程度あるのか、どのように発現していくのか?を紹介しており、この知見を活用した教育や人材育成などがもっと進むと人間社会も高絵率的に進歩するのではと思わせてくれます。
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自分の能力が低いのは、親(遺伝子)と偶然のせいであるという本。努力派の人には受け入れがたいだろうが、その努力すらそれを継続できるかどうかは、遺伝子と偶然に大きく作用されるのだから、それを飲み込むしかないだろう。が、サイエンスはこれを定量的に導き出すという点で、とても厳しい。
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読了。
橘玲なんかの著作でも同様の主張が為されているが、スポーツや芸術に関しては先天的才能差を万人が認めるものの、勉強に関しては努力のみがその成果を左右するとするのは、遺伝学的に矛盾するしフェアじゃない、というのは事実だろう。しかし、人生は自分に足りないものを埋める修行だと捉えている私みたいな人からすれば、それがどうした?というのが感想。才能はあくまで天からのGIFT。それを生かしつつ、自分に無いものを補うべく努力し続ける、そのプロセスこそが人生ではないだろうか? -
行動遺伝学の知見を解説した本。
遺伝の影響が強く出てくるのは45歳くらいでピークになるというのは意外であった。本書にも書かれてはいたが、大人になると教育などの要因で遺伝の影響が弱くなるのではないかと考えていたからだ。
自分は30代中盤だが、これから遺伝の影響が強くなってくるのであれば、苦手なことよりも自分が得意なことを伸ばすように意識した方が良いのではないかと考えた。
さらに言うと、人間の遺伝的な資質が環境により引き出されることもあるので、好奇心を持っていろいろなところに顔を出すのが良いのだろうと思う。また、引き出された遺伝的資質も、環境が変わるとなりを潜めると言うこともあるので、自分の長所となる資質がわかったらその環境を変えないことも必要なのであろう。
収入も遺伝に左右されるというのはややショッキングな内容ではあるが、であれば出世とか金を稼ぐということは考えずに自分が得意なことに励んでその道を極めるというのも1つの生き方ではないかと感じる。
なお、本書の後半は教育論の話がメインになってくる。
このあたりは自分の中ではあまり関心がなかったので流し読みした。 -
あとがきで著者が認めているが橘玲氏の「言ってはいけない 残酷すぎる真実」の便乗本。
橘氏の著書の方がよりストレートで簡潔に書かれていて読みやすい。 -
機会を平等にしてやるほど遺伝子の差が出てしまうので平等にならなくなるという事実。全く別の話になるが「職業に貴賎が無い」と言うと、「辛くて儲からない職の価値が下がる」というのを思い出した。
この本では優生学がありえるか、つまり優秀な人間同士をかけ合わせ続けたらより優秀な人間が生まれるか、ということについて、原理上不可能ではないが、平均への回帰があるため現実的ではないとしている。さらにマウスでの実験では形質に差が出るのは30世代かかったため、人間ならば1000年以上になるだろうと。
しかし『一万年の進化爆発 文明が進化を加速した』によればアシュケナージ系ユダヤ人の知能指数は平均で112~115程度であり、ヨーロッパの標準100よりも高い。このことについてその本では、アシュケナージ系ユダヤ人は他の人種との結婚が非常に少なかったということ、大多数が経営や金融関係といった頭の良さが求められる仕事についていたということ、そして成功者ほど子供を作ったためとしている。そして肝心の期間だが、西暦800年以降から1700年までがそうであったと書いている。およそ900年だ。
こうしてみると、今から優生学に基づいた運動をするのは倫理的にも現実的にも無理だが、成功例はすでにあると言っていいのかもしれない。その例がナチスの嫌うユダヤ人というのが皮肉的であるが。