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- / ISBN・EAN: 4543273000316
感想・レビュー・書評
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あのピロウズがついに帰ってきた!!
そんなイメージを私に抱かせてくれた、2017年発売のアルバムタイトルには、『脳みその端っこ』の意味があり、これはジャケットの絵からも感じさせるように、人間の脳みその使われていない部分に潜まれているという、無限の可能性の素晴らしさを教えてくれる、前作同様にポジティブなアルバムとなっており、そこには、ヴォーカル兼ソングライターの、山中さわおさん、リードギターのPちゃん、ドラムのシンちゃんの、バンドとしての充実した心境を感じさせられるようで、とても嬉しかった。
そして今作は、第四期ピロウズはロックンロールをやることにしたと言っていた中での、オルタナロックであるが、もうそんなことはどうでもいいと思わせるくらいの、曲のクオリティの素晴らしさであり、しかもそれは、ただ激しいだけの混沌さだけではない、これまで様々な辛苦を味わってきたからこそ、より円熟味を増した感のあるもので、たとえ同じオルタナだとしても、それは「ハッピー・ビバーク」の頃から一廻りした後の、見事に成長してみせたピロウズの音楽なのである。
早速、聴いてみると、オープニングの英詞曲「Envy」から、その歪んだ音の美しさを感じられる中、やや気怠げに歌うさわおさんのヴォーカルと、同じメロディやリフを繰り返す、ピロウズのオルタナ感溢れたサウンドとリズムが癖になり、心地好い。
そして、今作は特に、その繰り返す感の際立った印象がある事に加えて、「pulse」を除いた全ての曲が三分台で終わる点には、まるで、グッドメロディを高圧縮させたような小気味良さを感じさせられて、まさに、シンプル・イズ・ベストである。
二曲目の「王様になれ」は、後に、結成30周年記念で映画化されたタイトルと同名であり、そこには、30年かけてやっと手に入れた、さわおさんの生きる思いが詰まっているようで、胸に迫るものがあるし、渋いリフの繰り返しから、一気に花開くような突き抜けたサビも印象的。
知識の角度変える思考回路の旅
そこから始まるぜ
揺るぎない情熱は
未開地を進んで
昨日まで知らなかった
花に見惚れる
夢うつつ手懐けて
自由自在 気分次第
脳細胞の支配下で世界を創れ
王様になれ
三曲目の「Hang a vulture!」は、さわおさんには珍しい、現代社会へ皮肉を込めた歌詞が印象的だが、緊迫感のあるメロディも好き。
法の森の番人 梟の詰問の前で
のらりくらり厚顔無恥なスピーチ
通用しないぜ
百舌鳥は怒り心頭
蝙蝠さえ鼻で笑った
埃まみれの誇りなんて捨てちまえ
覚えた蜜の味 執着心は異常
化けの皮さえない終着点は無常
四曲目の「パーフェクト・アイディア」は、今作で最も好きな曲で、イントロからひたすら繰り返すギターリフのカッコよさと、サビの切なさも漂うメロディの中で歌われる、さわおさん流の頼もしい励ましには、心動かされるものがある。
大気圏のアパートから
紙ひこうき飛ばしてみたんだ
七つの海を越えろ
地球のトレンドから
落ちぶれた宝石達
気にしないで輝いてよ
眠れる森のキミを連れ出したい
魔法使いも科学者も丸め込んで
暴れてみようぜ
猫だと思っていたら
日に日に虎に育った
柄を洗い落とさなくちゃ
想像と違う未来でも楽しむだけ
猛獣使いと哲学者になりきって
キミと挑むショータイム
沈む夕日も昇る朝日も
アイデンティティーはキミ次第
終わりなのかい? 始まるのかい?
眠れる森のキミを連れ出したい
魔法使いも科学者も丸め込んで
暴れてみようぜ
五曲目の「Coooming sooon」は、ピロウズ流のオルタナ・ダンスナンバーで、歌詞の言葉遊びも、ここではあまり意味の無い感じの方が、楽しくて良いし、ピロウズの曲では珍しくフェイドアウトで終了するアレンジも面白い。
夜を染めるネイビー
焦れったいグルービー
キミを連れ出したいレリビー
本能に従順なベイビー
大胆なバンビ
秘密の宴 break-in! break-in!
let’s carry out!
闇と化して dance! pure dance!
変なポーズで break-in! break-in!
let’s carry out!
一つになる dance! pure dance!
六曲目の「She looks like new-born baby」は、さわおさん得意の、やさぐれた感も漂うカントリー調でありながらも、ポジティブな歌詞は変わらない。少々、不穏ではあるが。
七曲目の「pulse」は、シンプルなメロディに乗せられた燃えるような思いが胸を打つ、ミディアムナンバー。
透明な本能で
走り出した獣達の群れ
一切の迷いもなく
突き進む強さを見たんだ
身を焦がして燃え盛る
松明を放せない
幻想が生む理想郷
狂いそうなら住みつこうか
目を瞑って機をうかがおう
体温を取り戻すまで
身を焦がして燃え盛る
松明を放せない
身を焦がして燃え盛る
魂と話したい
八曲目の「ジェラニエ」は、今作で唯一の爽やかなポップナンバーで、オルタナナンバーがひしめく中では、より際立つ感もあり、どこか明るい雰囲気の、さわおさんのヴォーカルにも、何かグッとくるものを感じさせられて、切ない。
キミのため何か出来るかな
わからないけど見つけたいんだ
夜を待って星を見に行こう
邪魔になった明かりは消して
夜を待って星を見に行こう
重くなった心は置いて
眠らないで星を見に行こう
溢れだした涙のせいで
ぼやけたって星を見に行こう
ただ黙って輝いてるだろう
見に行こうよ そして
輝きをフリーズ
九曲目の「BE WILD」は、リオ五輪の金メダリスト、登坂絵莉選手を応援するために、今作発売前に書き下ろされた曲で、彼女が試合前に勝負曲として、いつもピロウズの「Funny Bunny」を聴いていたエピソードは、自分事のように嬉しかった。
汗をかいてない外野席の
冷やかす落書き 気にしない
ずっと濁らない気持ちのままで
深呼吸
心臓の音は裏切らない
生きてる証は今も
時に抗うように脈を打って
応えてるんだ
息を止めてどこまでも潜った
ギリギリの駆け引きに
視界はスローモーション
越えたい相手は1秒後の自分
タメ息と負けん気が蠢いて
その向こうに夢を見た
逃げ出したくなる孤独な夜は
こぼれた涙がキミに問いかける
太陽に手を伸ばしてみたいだろ?
手のひらが焦げるほど近づいて
心のままに
Be wild!
Be wild!
ラスト曲「Where do I go?」は、ライブで盛り上がるであろう、静と動が激しく繰り返される爆音ロックで、まさに飛び跳ねたくなるようなテンションは、締めに相応しいナンバーで、この年にして、このカッコよさは若手バンドには真似できないだろうな。
これはペットの餌
食べたりしないよ
彼女はキミの恋人
だから干渉しないんだ
オレはだらしないけど
ダーティじゃないぜ
ここは自分の部屋じゃない
散らかしたりしないよ
蜜蜂が騒いでいる
でも殺したりしないさ
オレはだらしないけど
ダーティじゃないぜ
ところでオレ
どこに行くんだっけ?
どこに行くんだっけ?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017年発表作。山中さわおの十八番であるオルタナティヴなロックが聴ける。
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Envy
王様になれ
Hang a vulture!
パーフェクト・アイディア
Coooming sooon
She looks like new-born baby
パルス
ジェラニエ
BE WILD
Where do I go? -
ディスク:1
1. Envy
2. 王様になれ
3. Hang a vulture!
4. パーフェクト・アイディア
5. Coooming sooon
6. She looks like new-born baby
7. パルス
8. ジェラニエ
9. BE WILD
10. Where do I go?
ディスク:2
1. 王様になれ[Music Video]
2. Envy[Music Video]
3. Hang a vulture! [Music Video]