- Amazon.co.jp ・電子書籍 (29ページ)
感想・レビュー・書評
-
短編。働かなくてもお金があり、日がなデパートで買い物を続ける女性の話。
私も昔はデパート派でした。ですので、雰囲気とか買い物とか店員さんとの会話とか読んでると楽しくなってきます。「店員さんがすすめるルックまるごと買ってそのまま着てる」これ、やってました(笑)自分のセンスの偏りがわかったり、店員さんの似合うもの見つける力がすごいなーとかいろいろ思い出して読んでました。
ところが主人公はそうじゃない。お金はあるけど満たされてないし、どこか自分の人生に後悔してる。人生が空虚になっている。だから、ひねくれた行動をするし、泣出したりもする。その末一人空を眺めたりしている。
モノならなんでも揃っているデパートと心満たされぬ主人公とのコントラスト。
ものやお金だけじゃない、大切なもの・なくてはならないものについて気づかさせてくれる作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「私」は毎日デパートで買い物をする。ある日のデパートでの出来事。徹頭徹尾、退廃的な雰囲気が漂っていて、ともすると飲み込まれそうになる。
-
掃いて捨てるほどお金があって、デパートでなんとなく浪費する「私」。以前は通帳の65万円に重みを感じていたのに、ある日、過去のちょっとしたバイトの関係で大金を得ることになった。以来、「私」は900万円が通帳から引き落とされることにさえ何も感じない。そのくらいの大金。
母子家庭でお金に苦労して、母はいつだって安物を身に着けていて、その安物さえくたびれていて、そんな母がお金のトラブルを抱えていて、そして死んだ。これから自分は、ずっと何もしないでも、大金を稼ぎ続ける。「慎ましい家族なら三百年は余裕で生きていけるぐらいの金」持ちの老婆は、昼間からデパートでブランド物を買いあさる。タクシーの運転手の女の子は、週休二日で1日20時間運転する(当然低賃金)。
母と老婆、「私」・母とタクシー運転手の女の子・その母の対比で、作品全体に漂っていた虚無感になんとなく輪郭が出てくる。
「私」と母親との関係は明確には書かれていないし、なんなら疎遠だったらしいけれど、きっと「私」は母親が大事だった。死ぬまでは大して考えもしなかったし現に15年近く会いもしなかったけれど大事な人だった。
「私」の手元にはずっとこうして大金が入り続けるのに、あの老婆はブランド物をお上品に買いあさるのに、なぜ母は、破れた安物を身に着け、死んでなおお金の問題を抱えなければならなかったのか。この大金に一体何の意味があるんだろう。そう呆然としながら、「私」はシャンデリアに突き刺し突き刺されることを想像してデパートに足を運んでいるのだろう。
それでも、タクシー運転手の女の子との会話で、「私」は前に進むことができたのかもしれない、と思う。
毎日毎日「誰にも迷惑かけずにぽっと死にたい」なんて虚無感に包まれながら勉強をしていた頃を思い出した。ああ、あのときに抱いてた虚無感に似た空気が作品全体にあるなあ、と思って。 -
初の川上未映子さん作品読了。
想像より読後のインパクトが大きい作品だった。 -
初めて読んだ著者です。 なんとなく“最果タヒ”さんっぽさや、“辻村深月”さんっぽさを感じたりしました。 ※両者、好きな作家さんなのでもちろんいい意味で 川上未映子さん、また機会があれば読んでみたいです。
-
なんだなんだ?虚しいだけ?それだけ?
-
KindleUnlimitedにて読了。
あーこのくらいのお金、欲しいなぁ -
どうしても好きになれないな。読後感がとても悪い。
-
「わたし」は毎日のようにデパートに出かけ、気まぐれに買い物をして、ほぼ一日を過ごす暮らしを送っている。朝十時きっかり、開店と同時に、あふれんばかりの従業員の笑みに迎えられる。いつもデパートはつるつるして光っている。高い吹き抜けの天井にはシャンデリアが燦然と輝いている。一階のコスメ売り場から四階のハイジュエリー売り場へ。レストランフロアでお腹を満たすと、また降りて、高級ブランドショップをはしごする。店員たちは皆、顔なじみだ。語り手の買い物には計画もなければ、予算もない。
結婚もせず、ワンルームに一人暮らしの「わたし」に、思いもよらない大金が口座に振り込まれ、デパート通いが始まった。
その日「わたし」はあるブティックで、見るからに裕福そうな老婆に出会う……。
孤独な女性の、心の闇が描かれている。
誰のために生きているのか、お金があれば幸せなのか…
裕福な老婆を褒めちぎって、プレゼントを買ってもらい、最後に別れるときの一言。その後、タクシーの若い女性運転手の前で泣いてしまったこと。彼女の心の不安定さを物語っている。 -
デパート依存症な主人公。一見普通風な金持ちを演じているその言動に、読んでいて「普通じゃないなぁ」と思いながら、一番傷ついていたのは主人公自身。人の薄黒い頭の中の感情の洪水を表現する天才だと思います。