ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書) [Kindle]

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  • グローバル化と技術革新が同時に進む世界で先進国に生きる、アメリカのミドルクラスの物語。

  • 初めてなぜトランプが人気があるのかがわかったように思う。かつてのミドルクラスが親の代より貧しくなっていてミドルクラスから転落する不安をかかえている。その人たちからの熱狂的な支持を受けているらしい。サンダースの支持者とも重なるが、あくまでも「怠け者まで政府が助ける」社会主義を嫌う人たちがトランプ支持者だ。著者も驚いていたが、転落するといいつつ、私からみればずいぶん豊かな生活をしている人も多いかんじ。昔のアメリカンドリームのころのアメリカが良すぎたのではないかという気もする。アメリカ人は意外に他の国のことを知らないというから、世界的にみて自分たちがどういうレベルにあるかをわかってない人が多いのではないかと思った。ともあれそういう不安と怒りを感じている人たちにはまったのがトランプで、暴言も不遜な態度も全部許されてしまうらしい。自分は金持ちだと堂々と言うのは、金持ちだから献金を受ける必要がなくて、献金者の言いなりにはならないという意味だというのは初めて知った。アメリカでは金持ちが誉め言葉になるというのも文化の違いを感じる。いずれにしても、日本に入ってくるニュースはやはりNYやらLAやらの都市部のことばかりで、1年かけて150人ものインタビューを行ってラストベルトの実態を細かく描写したこのような本は貴重だ。

  • トランプがなぜ2016年の大統領選挙にかつことができたのか、どのようにラストベルトに入り込み、有権者の熱狂的な支持を勝ち得たのかを、東海岸を中心として丹念なインタビューを積み重ねてとき浅層としたルポ。
    強烈なエスタブリッシュメントへの反発、特定の企業献金に頼らない(自腹)不偏の政策といった、白人エスタブリッシュメントでありながら共和党や労働者階層に支持を広げていった思考回路がよく理解できる。疑問なのは、アメリカの社会構造が分断化されていて、何をつけば特定の部門がどう動くのかを、エスタブリッシュメントでありながら知り得てつくことができた名参謀をトランプ氏はどのようにして獲得したかということであろう。

  • ふむ

  • 2016年の米大統領選でのトランプ当選までの間のルポ。ラストベルトを中心に平均的な市井のアメリカ人から取材したもの。ネットで本書の存在を知ったが、面白い。6年前の出来事だが、むしろトランプ政権が終わった後に読むことで得られる気づきもある。トランプ政権誕生の背景は何か。職業政治家でなく成功したビジネスマンが改革するのだというイメージ、クリントンだとオバマ3期目と同じ、オバマケアとて保険料が高く社会保障制度に大きな不安、民主党の中でも都市部中心で地方切り捨て、トランプの選挙資金は自己資金が中心で企業寄りでない(だから特定の企業の声だけを聞くということがない)、Veteranでさえ満足な生活ができない中流からの脱落という底知れぬ不安。非常にビビッドに響く。そして、これらの考え方、取り巻く環境は何も変わっていないことに気づく。本年秋の中間選挙、そして2年後の大統領選挙に向け、米国の動向から目が離せないと改めて感じた。

  • 2022年の今ではすでにドナルド・トランプの危うさは現実のものとなって議事堂襲撃のように先鋭化すらしてしまった。それでもなお共和党の大統領候補になる意欲を強く持っているのは驚くべきことだ。
    この本に書かれた取材が行われた2016年の大統領選挙でトランプに投票した人たち、ここに描かれるようにミドルクラスの終焉を我が身の事として体験しつつある人々は2020年の選挙ではどのように投票したのだろうか。
    とはいえ、産業の移り変わりによるミドルクラス的な職業の消失に対して政治のできる部分がどこまであるのかはアメリカや日本といった場所に限らず疑問を持たざるを得ない。この本の最後の方でアメリカで製造業を経営する人の言葉にあるように、雇用がないのではなく、今の時代に価値を生む職業に対応する人がいないというのも問題の一つだろう。
    高校を卒業して地元の製造業で職を得て訓練を受けて定年まで働き、ミドルクラス的な生活を送って子供には自分よりも高い教育を受けさせる、ということはある特定の時代と地域でさまざまな偶然が重なって起きた「奇跡」でしかなかったのではないか、といった趣旨の筆者のことばが逆説的に印象に残った。

  •  大統領選の結果が出たときは、本当にショックだった。何がショックだったのかそのときはよくわからなかったのだけど、後から考えてみれば、一つは、「理想」というものの力が弱くなってしまったのではないかと感じたから。アメリカという国は、ある意味「きれいごと」ではあるんだけど、理想を掲げて発展してきたと思っていた。でも、この本を読めば、「アメリカン・ドリーム」はもはや過去のものであり、理想は人々を動かす力を失っていることがよくわかる。二番目は、僕がアメリカという国をぜんぜん理解していなかったことがよくわかったから。留学中(もう25年も前だ)は、南部に行ったり、ドライカウンティを旅行したり、それなりにあちこち回ったつもりだったけど、あくまで観光客として通り過ぎただけ。
     著者は、新聞記者らしくよく取材している。「トラック運転手、喫茶店員、電気技師、元製鉄所作業員、道路作業員、溶接工、食肉 加工場作業員、ホテル客室清掃員、元国境警備兵、トレーラーハウス管理人、看護師、 建設作業員、元家電製造ラインの従業員、郵便配達人」。僕が、留学中も、仕事でも、ほとんど話をする機会のないような人たちだ。ここに書いてあることは、これもアメリカの一部でしかないのだろうけど、少なくとも僕の知らなかった(知らないふりをしていた)現実でもある。

  • トランプが大統領に選出されたあの大統領選の最中。背景で何が起こっていたのか。そこにはアメリカの負の部分、かつてのミドルクラスの街の衰退がありました。筆者は選挙戦の期間、その地域を取材し、地元の人々の話を聞いて回りました。そこで何が起こっているのか。その空気といったものを、肌身で感じられる文章で書かれています。取材対象者へのインタビューからは、彼らが何に悩み、なに故にトランプに賭けてみようと思い立ったのかが見えてきます。冷静に考えると、ただのわがままにも聞こえる彼らの不満。しかしそれが世の中を動かしてしまっている民主主義という仕組みの問題点。
    人は、周囲と比べて良い悪いということよりも、過去や現在と比べて将来の状況が悪くなるということに危機を感じ動くということが、今回のポピュリズムを動かした要因であることを理解することができます。

  • 自分に見えているアメリカと、そうでないアメリカの違いを実感した。また、トランプ支持者の言い分に深く納得する自分もいた。それが、裏付けのないことであっても、希望を託してしまう気持ちが強く伝わってくる。

  • トランプ大統領の思考、トランプを大統領に選んだ米国民の思考が全くわからないので勉強のために購入。
    米国民もトランプを手放しに支持しているのではない、しかし対抗馬(ヒラリー)との比較においては素晴らしく映るというのが、床屋のおじさんたちとの話など生活レベルから浮かび上がる。トランプの台頭を大統領選の早い段階から予想していた記者だからこそかける記事である。

  • トランプを支持した人たちへの取材。アメリカ中部のアパラチア山脈付近を取材。NYとかロサンゼルスでは見えてこないアメリカのミドルクラスの政治に対する不満・将来に対する不安が描かれている。

  • 「いまさら何をいっても失言にならないという究極のリスク管理があったと思う。」

    トランプがなぜあれほどの支持を得たのか。
    未来への期待が持てないからだろう。

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著者プロフィール

金成 隆一(カナリ リュウイチ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞経済部記者。慶應義塾大学法学部卒。2000 年、朝日新聞社入社。社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員などを経て2014 年から2019 年3 月までニューヨーク特派員。2018 年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)、『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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